鉢巻道路
5月24日
生まれ育って60年暮らした渋谷を引き払い,標高1150メートル,信州原村の村外れに引っ越した。もっともそれを計画して家を建てたのは28年前のこと,月に一度は山に来ていたので戸惑うこともなく数日で田舎暮らしに適応した。
ところがチャリダーとしては少々問題がある。村自体が八ヶ岳の西麓にあたり,坂だらけなのだ。老年夫婦サイクリストとしては家からの乗り出しは脚力的にハードルが高い。
そこで小淵沢まで鉢巻道路のサイクリングを計画した。鉢巻道路は清里から蓼科まで,最も標高が高いコースで南八ヶ岳をほぼ半周している。目指すは県境付近にあるコーヒーの焙煎屋。一週間後に訪ねるコーヒー好きの親友への手土産を買いに行こうという計画である。小淵沢の町まで下りるわけではないのにご覧の通り原村の出発点との標高差は200メートルほどもある。
まるやち湖の無料駐車場まで車で自転車を運び13時スタート。
標高の高い八ヶ岳美術館経由を避け,八ヶ岳ズームラインを使うためにしばらく南下する。しかしズームラインに出るまでが急な下り坂だったため,登りの距離は変わらない。
13時30分鉢巻道路に辿り着く。息が上がっている。
小淵沢に向けて下り坂,空は快晴,沿道にはレンゲツツジが満開である。
富士見のスキー場に向けての下り坂に少々帰りが不安になってくる。出発前に鉢巻道路を走ったサイクリストのブログなどをチェックしていたが,誰も高低差に触れている人がなかった。若いチャリダーにとって,この程度のアップダウンは問題にならないらしい。
富士見町であるから当然,富士山が美しい。道はますます下り,もはや帰りは覚悟するしかない。
14時,コーヒー店着。
知る人ぞ知る腕利きの店である。それでいて案外リーズナブル。
リュックにコーヒー豆を詰めて,14時20分,いざ復路!
ふぎゃぁー!!
足が大丈夫なのか心配になるほど消耗している。少ししか持ってこなかった水が底をついた。嵐山での教訓が生かされていない。
どんなときでも水は必ず十分に持って出ること。
今度こそ肝に銘じた。…遅いけど。ヨドバシカメラの保養所,ここなら販売機がありそうだ。
ドレミが下りて行って水をゲットしてくれた。
昔,ここはテニスコートだった。一般にも安い料金で貸してくれたので何度か利用したことがある。テニスと言ってもドレミがあきれるほど下手だったので,ボクらのテニスは羽子板ルール。ひたすらボクが拾って返し,何度ラリーが続くかを数えた。ドレミがどれくらい下手だったかと言うとまず,アンダーハンドのサーブを空振りする。フォアの何でもないリターンを隣のコートに打ち込む。それでもなんであんなに楽しかったのだろう。タローを飼うずっと以前の話である。
道は尚も上り坂が続く。行きに下ったのだから当然である。
最後の坂,ここを登ればあとは出発点まで下り坂である。
15時40分到着。ばてばて。
満開の藤を窓外に見ながらのボクが設計した我が家自慢の風呂。明日の筋肉痛は確実である。何はともあれ八ヶ岳に来て最初のチャリダッシュであった。
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