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仕事ができるとは何か?#6 問題解決は問題発見から始まる


問題解決とは何か?

いつの時代も問題解決ができる人材が重宝されます。AIが身近になったいまでもこれは変わりません。では、問題解決とは一体何でしょうか?

問題解決とは、問題を発見し、解決策を立案して、それを実行する一連の流れです。
ビジネスとは誰かしらの課題を解決することですから、ビジネスの営みそのものと言えます。

この問題解決力を分解すると大雑把に下図のように表せます。

まず、問題を特定するためには分析力が欠かせません。また、問題解決に当たっては発想力が求められます。解決策を立案した上で、一定の責任を持つ役職であれば、判断力も求められます。そして、最後にそれを実行に移す実行力が必要となります。(ロジカルシンキングが全ての基礎となりますが、それは前々回触れましたので今回は省略します)

今回は、一連のプロセスの初めに位置する、問題発見力を見ていきます。

問題発見がなぜ重要か

先ほど書いたように、会社の存在目的はそもそも社会の課題を解決することです。そのような会社の中にも日々たくさんの問題があります。新規販路の開拓、顧客クレームの対応など、問題が発生していない会社は見たことがありません。これらの問題を全て解決したいと思ってしまいますが、それは現実的ではありません。
なぜなら全ての問題を解決するには人も時間もお金も足りないからです。
また、目の前にある問題が解決すべき問題ではないということも多々あります。そのため、解決すべき問題を設定することが重要になります。
Peter DruckerもThe most serious mistakes are not being made as a result of wrong answers. The truly dangerous thing is asking the wrong questions. (最も重要な間違いは間違った答えを出すことではない。本当に危険なことは間違った問いに答えることだ)と言っています。

これを学生時代に例えて言うと、目の前にはたくさんの問題用紙が散らばっています。制限時間があるため全ての問題を解くことができません。しかも、問題用紙はそれぞれ10点満点から10,000点満点まであります。なおかつ、答案用紙には正解時の満点は書かれていない、といった状況と言えます。

この状況で最も点数を稼ぐには、どの答案用紙が最も得点が高いかを見極めることです。これが問題発見と言えます。

問題発見に成功した事例

問題発見に成功した事例として度々引き合いに出されるのが1990年代のニューヨークで凶悪犯罪を激減させた話です。当時のニューヨークでは1年に2,000件以上の殺人事件が起きていました。この状況を改善するために設定した問題の立て方です。
通常の思考であれば、凶悪犯罪を減らすためには凶悪犯罪を取り締まる必要がある。だから警察官を増員し、各地に配置しようとなります。
しかし、この時は別のアプローチを取りました。それは、凶悪犯罪がなぜ起きるか、それはモラルの低下である。モラルの低下はなぜ起きるか、軽犯罪の増加である。軽犯罪の増加はなぜ起きるか、それは街中で窓が割られていたり、落書きが放置されているからだ。
従って、割れた窓や落書きを放置せず、軽犯罪を徹底的に取り締まろうとしました。
その結果、5年後には殺人事件は64%も減少しました。

これは起きている問題の根本原因を見極めたことが勝因の一つです。凶悪犯罪の取締りは対処療法でしかなく、凶悪犯罪を取り締まろうとすれば、警察官も多く配置が必要ですし、リスクもあります。一方、落書きを消したり軽犯罪を取り締まったりすることは凶悪犯罪への対処よりも圧倒的にリソースが少なくてすみます。

問題解決のシンプルな公式

難しそうに聞こえたかもしれませんが、問題解決自体はとてもシンプルな公式で表せます。

あるべき姿(To-be)があり、現状(As-is)があります。この差がギャップで、見かけの問題です。このギャップの根本的な原因を捉えて、そこに解決策を提示し実行するのが問題解決の流れです。
先ほどのニューヨークの事例に当てはめると、凶悪犯罪がない状態をTo-beとして設定すると、凶悪犯罪が2,000件以上起きているAs-isとのギャップは凶悪犯罪件数2,000件となります。この原因をここでは落書きや軽犯罪の放置と捉え、その裏返しとして落書きを消し、軽犯罪を取り締まるという解決策を導き出したのです。

すごくシンプルな公式ですが、実際のビジネスできちんとできている人はそこまで多くはありません。
それは問題発見にはいくつかの落とし穴があるからです。

問題発見の落とし穴

問題発見の落とし穴には先ほどの公式で見た「あるべき姿」「現状」「原因」「解決策」の4つに分類することができます。
1. あるべき姿
あるべき姿がない、または曖昧なケースです。
極端な例を言えば、売上を向上させるぞ!と息巻いて新たな施策を始めたものの、肝心の売上目標がないといった例です。ここまでわかりやすい例はないかもしれませんが、新製品の開発の目的がなかったり、プロジェクトのゴールがなかったりと、あるべき姿が設定されていないケースは少なくありません。リーダーがビジョンを示さなかったり、ルーティーンで繰り返しているうちにあるべき姿を失ってしまうケースがあります。他にもあえてあるべき姿を掲げない責任回避のケースや言語化能力が不足しているケース、時代が移り変わったのにあるべき姿を変更していないケースがあります。

2. 現状
現状認識が不足しているケースです。どれだけあるべき姿を掲げようとも現状の認識が不足していれば、正しい解決策は導き出せません。
人間は不都合な真実には目をそむけたくなるものです。自分のキャリアを客観的に見る、資金繰りを客観的に見るとどうでしょうか?思わず目をそむけたくなることは多々あると思います。
売上はそこまであがっていないけど、きっと大丈夫!と高をくくっているうちに、正しい解決策を打てる時間が減ってきてしまいます。

3. 原因
ギャップから原因の深堀が不足しているケースです。
先ほどのニューヨークの事例で原因の深堀ができていなかったら、凶悪犯罪の取締りのための警察官の増員というコストのかかる上に、対処療法的な案になっていたかもしれません。よく「なぜを5回繰り返す」と言われますが、まさに原因の深堀ではなぜを繰り返すことで本当の原因にたどり着くことができます。
ギャップと原因がイコールになっている場合は、ほとんどのケースで原因の深堀不足です。

4. 解決策
解決策の立案は別の章で見ていきますが、ここでは解決策が問題発見に及ぼす影響を見てみます。これは解決策ありきで問題発見がないがしろになるケースです。
例えば、良いアイディアを思いついたから実行したけれど、あまり良い成果が出なかったというケースです。そもそもあるべき姿や現状認識ができていないのに、解決策ありきで走り出してしまうとリソースの無駄使いにしかなりません。アイディアを思いつくのは良いことですが、きちんと問題解決の公式に落とし込めるか立ち止まる必要があります。

問題発見力の磨き方

虫の目、鳥の目、魚の目という言葉があります。
虫の目のように物事に近づいて見る目、鳥の目のように空から全体を俯瞰してみる目、魚の目のように水の流れ、時間的な流れを捉える目の3つが大切です。
問題発見では、鳥の目、虫の目、魚の目を意識して仕事にあたることで、問題発見力を養うことができます。

また、与えられた仕事であっても、常に本当の問題や目的は何かを意識することで、問題発見の素養を涵養することができます。

ビジネスの場面だけではなく、ニュースを見聞きした際に、政府の政策や他企業の施策は何をTo-beにおき、何をAs-isとして認識しているのか、原因は本当にそこなのかと考えながら接することで鍛えていくことができます。

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