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子ども向けデザインを研究するために、科学館で親子を観察した話

最近、子ども向けの教育サービスを考えている中で、こんな本に出合いました。

この本によると、みんな色をカラフルにしたり、字を大きくしたりするだけで「子ども向けデザイン」とか言ってるけど、ナメるなよ、ちゃんと子どもの能力の発達を考えてデザインしないと、本当に子どもに喜ばれるサービスは作れないのであーる、と。
なるほど確かにそういう目線で世の中のサービスを見渡すと、本当の意味で子どものUXを考えられているサービスは少ない気がします。

そんな中で、僕も本読んだり親に話聞いたりするだけじゃなくて、実際に子どもが集まっている場所に行って、自分の目でリサーチしようと思い立ち、夏休みの定番の一つ、科学館に行ってみることにしたのです。

<科学技術館>
http://www.jsf.or.jp/

竹橋駅を降りた瞬間に、親子がたくさんいます。これは想像以上に流行っている。親子だけでなく、年配の女性2人組みたいなペアもたくさんいて、何だこれ最近の科学館は全世代に人気なのか?すごいな、と思いましたが、なぜか科学未来館の一階のホールでセールイベントやってるだけでした。

館内を走り回る子どもたち、それを観察するオジサン(僕)、係員からの視線。微妙に危険な調査活動でしたが、期待以上にいろんな学びを得られたのでここに書き留めておきます。

1.子どもが興味を持つ体験とは

まず最初に気づくことは、人気の展示と閑散としている展示の差が大きいことです。大人の僕にはどれも面白そうに見えますが、例えば車のエンジンがむき出しになってる展示は閑散としてて、その脇にあるドライブシミュレータには子どもが集まっています。
これらの展示を見比べて、子どもが興味を持つ展示には4つの特徴があると分かりました。

子どもが興味を持つ展示の特徴
・自分で触って動かせること
・何が起こるか予測できないこと
・動かした結果がすぐ見えること
・一度では成功しないこと

子どもが集まっている展示は、例えば以下のようなものです。
・公道の運転体験ができるドライブシミュレータ
・大きなシャボン玉を作れる、その中に入れる体験
・空気砲で的を射抜くマシーン
・カーリングで遊ぶみたいなやつ
・謎の檻に近づくと、中から謎の生物の叫び声がする(しないときもある)

一方で、ボタンを押したらビデオが流れるとか、画面でクイズに答えたりするとかには全然人が集まりません(逆に、親はこういう読んだら全部分かる系が好きみたい)。自分の体を使って動かせて、簡単そうに見えるけど意外と難しい、でも繰り返しチャレンジできるようなもの、、、こういうものが、子どもたちのハマる体験なんだなあと感じました。

2.親の抱える「不」

科学館には、みんな親子で来ています。科学館は、子どもが行きたい場所というよりは、親が連れていきたい場所、ということが分かります。家にいると一日中ゲームしてダラダラしてしまう子どもをどこかに連れて行かなければ。そんな需要に対して、電車で行けて、屋内で楽しめる、理科も勉強できる、という科学館はとても便利な場所ですよね。

しかし、実際に現地に行ってみると、親の色々な苦労、つまりこれは、リクルートのリボンモデルで言うところの「不」が見えてくるのです。

親の抱える「不」
・毎週、どこに連れて行こうか考えるのが大変
・科学館とはいえ、駅から歩くの暑い
・科学館とはいえ、子どもの元気についていけない

特に感じたのは3つ目。
 子「次3階行く!シュババ!!」
 親「えっ!さっき行ったじゃん!」
という会話を何度聞いたことか。元々は親主導で連れてきたはずが、子どもはハマってしまってからの元気が底なし。子どもたちは2階から5階まで走り回り、親は休憩スペースでぐったりする光景を目の当たりにしました。

3.子どもは本当に学んでいるのか?

僕が科学技術館に行ったのは10年ぶりくらいだったと思いますが、当時よりも展示がインタラクティブでかなり面白くなっていて、子どもたちもすごい楽しそうにしていました。

ただ、その一方で、インタラクティブな仕掛けが楽しい!というタイプの展示は、遊園地的に面白いだけで、家に帰って調べてみようとか、2学期から理科の授業が楽しみとか、そういう学びにはつながっていないように見えました。僕自身、全部の展示を見ましたが、何を覚えているかと言えば、ドライブシミュレータ楽しそうだなー、とか。
ただ子どもの興味を引くだけでなく、科学館に行く前と行った後で、勉強に対する気持ちが何か変わるような仕掛けが必要なんだよなーと感じます。

まとめ:子ども向けのデザインとは?

以上のことをまとめると、今の小学生と親には何を提供してあげるべきなのか?

・自分で動かせて、何が起こるかわからない、簡単にはゴールにたどり着けない体験ができる
・毎週親が頑張らなくても、子どもがダラダラせず意欲的に行動するようになる
・ただ体験するだけでなく、その後の学習行動が変わるような学びがある

これを具体的なサービスに落とし込むのが次のステップだなあ、と考えながら、竹橋駅までの日陰の無い道を歩きました。

ちなみに、隣の東京国立近代美術館でやっている高畑勲展に子どもはいなかった。




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