慟哭の巨人ゼガン04

慟哭の巨人ゼガン

「すまない……みんなっ……みんな……すまないっ……」

 アルガの瞳から涙が溢れ、光となって散っていった。胸をえぐるような悲しみ。もう二度とは会えない人々──その人々の体が淡い光に包まれていく。その誰もが温かく微笑み、優しくアルガのことを見つめていた。

「頑張れよ、アルガ」
「いよいよじゃ。わしらも一緒に戦えるんじゃ!」
「ファイトだぜ、アルガにいちゃん!」

 少女は祈るようにささやいた。

「さようなら……大好きなアルガ」
「ナナ……僕は……僕は……っ!」

 人々の体が光の粒子へと変わっていく。それは輝ける奔流となって、轟きとともにアルガの体を包みこんでいった。

『生体エネルギーAura、変換シーケンス完了。ゼガン顕現率77.6%。続いて、位相転換シーケンスを開始。未来世界予測。〈来訪神〉位相ポイント確定。直下への位相転換を実行』

 同刻、東アジア連邦日本州神無県。

 それは、絶望であった。

『直ちに避難。直ちに避難。直ちに建物の中、又は地下に避難して下さい。飛翔体が15時20分頃、神無県周辺に……』

 神無県の中核都市、川嵜。防災スピーカーが冷酷なる現実を告げている。

「ちょっ、どうすんの、どうする気なのぉ!?」
「どうもこうもない! ボクの彼氏ならもっとビシッとしていただきたい!」

 そう叫ぶ少女の足元で、小型ビークロイドがバイク形態へと変形していく。

「ナナ、お願い一緒にいてよっ……あれが来る……北米金鷲艦隊を皆殺しにしたあれが! 大西洋があんな事に……うぅ、死にたくない……」

 少女は──ナナは上空を見つめた。まだ実感はない。しかし暗雲垂れ込めたその向こうから、確かにあれは接近しつつあるのだ。

「関係ない。ボクは今やるべきことをやる」

 ナナはビークロイドに跨った。その視線の先。逃げ惑う群衆の向こう。泣き叫ぶ幼女の姿。

「行くよ!」

 アクセルは全開。フルスロットル。直後、ビークロイドは跳ね、それは滑るようにしてビルの壁面を疾走した。

【続く】

#逆噴射小説大賞2019

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