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【逆噴射小説大賞ピックアップ】今さら2022年編

今年も逆噴射小説大賞がはじまった!

しゅげんじゃ氏は早くも最大2作の応募枠を使い果たしてしまい……なので余裕をこいて自分が「よいな」と思った作品を紹介していくという通称ピックアップ行為(※)をやっていこう……などと思ったわけですが、それをやる前にしゅげんじゃ氏には心残りがあった……それは去年(つまり2022年)の逆噴射においてピックアップ行為をまったくしなかった……ということなのである……。

※ めんどくさいことを言うと pick up じゃなくて pick out の方が英語のニュアンス的には正しいと思われる

なので今年のピックアップをやる前に、去年分のピックアップを1年越しに実行し、心残りを消し去ろう……というのがこの記事の主旨です。

なお今回ピックアップするのは去年の作品中「よいな」と思ったものからさらに厳選し、かつ、最終選考で言及されていない作品に限定しています。最終選考に残ってる作品なんて言う間でもなく素晴らしい作品ですからね……。あと完全に僕の趣味というか、僕の主観でよいと思ったものをチョイスしているので、その点はあしからずご了承ください。

では、やっていきます!


石川ダイナマイト!

X(Twitter)や 某Discord などで何度か言及した気がするんですが、僕はまじでこれが大好きです。読むと元気がもらえる! 逆噴射小説大賞は年々レベルが上がってる感があり、きちんとした小説の佇まいを持った作品が増えてきていますが、そんな中にこういう作品が素面でスッと入ってきて蛮勇を振るうのを見ると思わずガッツポーズしてしまう。

「5人?おもしれぇな!高校生で5人殺してシャバにいるとか早く会いてぇよ」

このセリフとかすごすぎる。あのときのときさん、ほんと「天才かよ」って感じ。すばらしいセンス。めちゃくちゃ好き。最高。

グレート・アーキテクト・エスケープ

すごくイメージ喚起力があるというか、読みながら映像が浮かんでくる、しかもその映像にはワンダーがある、そういう作品。逆噴射的にはちょっと引きが弱いというか、逆噴射でありがちな「主人公の独白でなんとなく続く感」になってしまっているのが惜しい気がする。でもそういうことはどうでもよく、すごくよい映像が浮かんできて僕はとにかく好きでした。会話も含めて、全体のテンポもとてもよい!

任侠サイボーグ組

暴対法施行後、現実世界での弱体化に伴いフィクションの世界ではゴブリンやドワーフなどと同じカテゴリーと言うか、ファンタジー的存在になってしまった「ヤクザ」なわけですが、この作品は「ヤクザ=生産性のない存在」と位置づけ、高度なAIやアンドロイドが誕生してしまった世界において「人類すべてがヤクザ」という論理の飛躍があり、とても素晴らしい。『堅気衆には、あの美しい機械達には』とか、『奴等、堅気に『搭乗』してやがる!』とか、言い回しに作品特有の美学が漂っていて、すごく好きでした。

インタヴュー・ウィズ・ハイオーク・ミックス

異世界でのインタビューが軸となっていく物語なわけですが、とにかく描写がすごく美しいなと思った。最初読んだ時、この世界の空気感や色や匂い、そんなものが浮かんでくる感じがしてグッときたのを覚えている。取材対象であるハイオークのジョナサンの哲学というか、矜持のようなものがセリフの中に感じられて、それも含めて美しい作品だな……と思ったのでした。異世界交流譚としてこのまま続きを読みたいと感じさせるものがありました。

新地之三郎翁葬別ノ儀

とにかくよくわからないけど、よくわからない迫力が全編に漂っている! 逆噴射的には最後がオチているというか、このまま物語が続いていくのか半信半疑になるというか、そういうところが弱かったのかもしれない。物語の強度や粒度としては短編というか掌編ぐらいがちょうどよい気もする。ただ言葉のチョイスやセリフ回し、全体を貫く雰囲気に一貫性があり、ただならぬ迫力を生みだしていて、すごく印象に残りました。

子育てエルフ千年の戦い

これめちゃくちゃよくないですか!? 緊迫した状況下で、冷静に(冷徹に?)人間の子の面倒を見るエルフの戦士。筆力高い描写で、子育ての解像度が鮮明で、世界の質感も感じられる。逆噴射的には物語の方向性というか、どこに向かおうとしているのか見えづらかったのがもったいなかったのかもしれない。でも子育て+ファンタジー+エンタメな物語は可能性の塊だと感じさせられた。是非とも続きを読みたい……と思った。昨年の作品群の中でも個人的最推しのひとつです。

天煉の祓魔刀

これを読んだ時の感想は……「すごすぎる!」でした。クセの塊のような作品。込められた情報量が凄まじく、そのくせして戦闘の描写は凄まじいまでに研ぎ澄まされ、めちゃくちゃかっこいい。さらには「観測」という概念を軸にして、文字通り物語は鵺のように姿を変えていく! 量子論について半可通でもいいから知識がないとそもそも理解しがたい物語かもしれない(けど、最近のエンタメ作品だとごく当たり前のように登場する概念ではある)。あと二人称で展開されながら一人称で締めるという流れも、逆噴射的には厳しかったのかもしれない。人を選びすぎる……。ですが、個人的な気持ちを正直に書くと、歴代逆噴射作品中、最も印象に残り最も好きな作品です。めちゃくちゃ好き。

夜に質量・明日はパフェ

まず「質量を持った夜」というイメージがとても叙情的でいいなと思った。そしてその中でパルクールめいた球技を行う少女たち……という設定もビジュアルが最高によく、めちゃくちゃ素晴らしいなと思った! そういうよさに対して、逆噴射的には展開の焦点がちょっとボケ気味な感じがあるとは言えるのかもしれない。下手にサプライズ展開で引きをつくろうとせずに、しっかりと「よさ」を描写していけばよかっただけなのかもしれない。もったいない……などと考えさせるぐらい、とても素敵なイメージでとにかく印象に残りました。めちゃくちゃよいです。

以上です。

こんな感じでしゅげんじゃ氏の主観剥き出しのピックアップとなりますが(石は投げないでね)、2023年分についても随時やっていこうと思います!

【つづく?】

【おまけ】しゅげんじゃ氏の2023年応募作

きっと励みになります。