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#48 Iの悲劇

Iとは「Iターン」のIです。
ミステリーとしてはもちろん面白かったのですが
改めて現実的な問いも突きつけられたような小説でした。

【以降はネタバレを含みます】

内容と感想

この本は、ある村に移住を勧め、
そこに安心してもらうプロジェクトを推進している人たちの話です。

しかし、1世帯ずつその村から出て行きます。

一件一件は、致し方ないようなものばかり
しかしどれも、何か引っかかる。
各ケースがミステリーとして非常に面白い。
最後のどんでん返しも。

東京で働いている主人公の弟から途中こんなことを言われます。

自前じゃ錆びた水道管も直せないようなまちで何を言っているんだよ。足りない分は誰が払っていると思ってるんだ。俺だよ。俺たちが。中央が稼いで地方が使ってる。南はかま市みたいなのは存在するだけで経済的に不合理なんだよ。

Iの悲劇/米澤穂信

雪かきするだけの財源もない、インフラもなくもし子供達に何かあっても
十分な教育どころか、保護することすらできないかもしれない。
経済的に自立できていない街の復興に、
果たしてどれくらいのリソースをわたしたちは使うべきなんでしょうか。

これはぐさっときましたね。

受け取った問いと個人的な意見

受け取った問いは、上記の「経済合理性」です。

地方都市は経済的に自立していないケースがあります。
インフラは必須で、そこのメンテナンスだけでリソースが必要
そこを担保できない場合に、その都市を残すことに果たして、
0か100でないグラデーションなことは重々理解した上で、
じゃあ「どこまでは、何のために、どうするのか」
それをみんなで話すべきなんだろうなと思いました。

個人的には、完全な一極集中はなしだと思ってます。
経済合理性と多様性は、比例せずむしろ反比例に近いと思っており
地方は、人類の多様性を担保し、尊厳を守るセーフティネット
になりうると考えているからです。

また、今はテクノロジーが進化し一方で豊かになりすぎている中で
「経済的に自立」する時にも
より自立しやすくなっていきながら、暗黙の自立の定義も高くなっている
とも感じます。
豊かさの基準を下げ、テクノロジーを活用することで
経済的な自立は、過去より容易くなってきていると感じます。

とはいえ、
行政サービスを提供できる範囲は絶対出てくるので、何が何でも地域を守る
には反対です。

地方自治体数1700は維持するか、少し増えつつ、
もうすこし居住比率が分散するようなイメージですかね。

最後に

最終章でも、非常に考えることが多かったです。
現状の行政のあり方や、ひいては社会システム
何があるべき姿なのか、難しいですね。

個人的には、たまーに散歩して
季節の食べ物を食べて
子供が夢を諦めずにすんで
いろんな人種性別考え方の方が混ざって
それぞれの大切なものを大切にできる

そんな社会が好きですね。


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