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生産性を高めて設計にかかる時間が減ったら、設計料は安くするべきか。 #1

今日のnoteは、主に将来独立を考えている若手デザイナーに向けて書いています。

タイトルから設計料の話が主題に見えると思いますが、焦点は生産性を高めて得られる利益と時間の使い方の話になります。
なので、若手以外でも興味がある人には参考になる部分もあるかもしれませんが、それは次回の記事で。

それでは進めます。

設計料は相対評価


まずは、タイトルへの回答から。
早く設計が完了したからといって設計料を安くする必要はないと
考えています。

設計実績や事業年数が同じ2社がいたとして、どちらの設計料も同じ金額で出来上がる空間のクオリティも同じだった場合を想像してください。

片方の事務所が設計にかけた時間が半分だったとしたら、報酬は半額にするべきと感じるでしょうか?大半の人はそうは思わないでしょう。

そもそも設計報酬が高いか安いかの感覚は、業務にかかった時間に対してではなく、完成した空間のクオリティと、完成に至るプロセスに対しての評価、プラスα設計者と施主の意気投合具合を総合して、世間一般の相場と比較して生まれる相対評価によると思います。

そうだとしたら、設計に費やす時間は短ければ短いほどいい。

利益が得られることは当然ながら、デザイナーにとっての最大のストレスの元になる「時間(締め切り)」に対して余裕が生まれるからです。

締め切りがストレスになるのは僕だけかもしれませんが。

しかし、そう簡単に業務時間を短くできないのが、実際のところなんだなぁ。

独立当初は締め切りに追われまくって、時間にもお金にも全く余裕がなかった


20代半ばで惰性で独立してからは、なんとか食べていこうと必死に仕事を取って、ほとんどの時間を仕事に費やしていました。

少しずつ大きな仕事をもらえるようになって、勤めていた時の給料 = 収入の感覚だった自分にはとても大きな金額をいただいたりしましたが、利益は全然増えない。

スタッフを増員したから少しは時間に余裕が出るだろうとたかをくくってみても、逆にどんどん忙しくなる。

あれ?おかしい。
お金も全然貯まらない。

そんなこんな、ギリギリで仕事を続ける中でリーマンショックが起こりました。
当時在籍してくれていたスタッフには本当に申し訳ないことをしました。(移籍先を探して紹介したり、補償の話が出たり、色々大変だった)

この出来事がきっかけで「経営」にとても興味をもつようになりました。

この時までもすでに「社長」だった人が経営に興味を持つ、なんて言うこと自体がズレているとは思います。

しかし、デザイナーが経営を勉強している、なんて話はアトリエ事務所在籍時には聞いたこともなかったし、どちらかと言えば「経営」なんて言ってるデザイナーはデザイン力で勝負していないんじゃない?なんて、今思うと非常に青臭い感覚を持っていたのだと思います。

販売価格の決め方を知らなかった。

商品の価格をどうやって決めているか知っていますか?
当時の僕は知りませんでした。

例えば車の販売価格は、必要な材料、作り手の人件費、工作機械の購入費用、工場の電気代、社員食堂のおばちゃんのお給料、社員旅行の費用など、会社の運営に必要なあらゆる費用を払っても余りが出るように計算して決定されています。

これは別に車によらず、あらゆる商品の価格決定の方法です。
出ていく費用より入ってくるお金が多くなければ経営は成り立たない。

言われてみれば当たり前のことなのですが、経営学を学んでいなかったという理由を盾に、少し考えればわかりそうなことを放棄していた過去の自分を擁護したいと思います。

しかし、それならば当時はどうやって設計料を決めていたのか。
古巣の事務所のやり方をそのまま流用していました。

それは業種ごとに坪単価を設定して、床面積に掛け算する方法でした。
業種ごとに坪単価を変えているのは、設計対象によって手間が全然違うからです。

例えばアパレルショップと飲食店を比較します。
飲食店には厨房があり、厨房があることによって設備機器の量も多くなります。また水やガスを使うことになるので、給排水やガスの配管の計画もある。トイレもある。
といった具合に、設計する空間の数も多くなるし、設備設計も重たい。
なので、両者では坪単価が違うことになるのです。

その坪単価がどういう根拠で設定されているのか、それももちろん意識したことはありませんでした。
なので、自分が提示する設計料には何の意図も理由も根拠も存在せず、ただ「こんなもんなんだな」としか思っていませんでした。

設計料の根拠を考え始めた

販売価格の決め方を知り、如何にこれまで適当な値決めをしていたのか、自分に怒りを感じたところで、有り余る時間も手伝って、設計料の根拠を探り始めました。

今日はここまで。
次回に続きます。


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