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夢のスタジオ

自宅の一室にプライベートスタジオをかまえて、日々そこで音楽を作っている。

メインルームは防音室で窓からは外の庭木が見え、その葉と葉の隙間から柔らかい光が差し込んでくる。その隣に納屋を改装した小さな録音ブースが一つある。ギターアンプで大きな音も出せるし、フルセットのドラム以外ならだいたいの楽器はここで録音出来る。ルームアコースティックのチューニングもある程度施しているので音質も商業スタジオと変わらない。愛着の湧く楽器や機材だけを少しずつ集めながら、自分にとって居心地の良い理想のスタジオを作っていっている。

恥ずかしい話だけれど、そんな感じで居心地の良い仕事環境が生活と密接しているので、朝起きてパジャマのままで作業をしてしまう事もある。自己管理が人一倍苦手なくせに、それが難しい環境を自ら率先して作ってしまった。着心地がいいんだよとか、70年代のブライアン・ウィルソンも寝間着のガウンのままスタジオに現れて音楽を作っていたんだよとか、単に自堕落なだけの自分に都合の良いのか悪いのか分からない言い訳をしながら、気がついたらその格好のまま日が暮れている事もある。そして1日が終わり、また眠りにつく。

眠りについたらついたで、その時にみる夢の中にも僕はプライベートスタジオを持っている。夢のスタジオ。特に制作に追い込まれて頭の中がその事でいっぱいになると、そこに行くことになる。要するに仕事の夢をみているわけだ。そこはいつも同じ部屋で、現実のスタジオと比べると少し広くて奥行きがあって、Apple Storeのような白とシルバーが基調のちょっと無機質な内装だ。奥が全面ガラス張りで、そこから見える景色は綺麗で見晴らしの良く、部屋に光がたくさん入って室内はすごく明るい。楽器や機材は現実世界より揃っている。特にシンセザイザーを沢山所有している。

そこで僕は眠っている間にも音楽を作る。何かしらメロディーを作って楽器を弾いてアレンジをして、目覚めた時にその断片のいくつかが微かに記憶の中に残っている。でも起きてしばらくすると他の夢と同じようにキレイさっぱり忘れてしまう。

夢の中でクラウドにアップロードして、現実世界でダウンロードできればいいのにと思う。

映画『インセプション』みたいに夢にアクセスできる、そんな未来はくるだろうか。それはさすがにないだろうな。だから微かに憶えている夢の中で作ったメロディーを忘れないうちに、起きたらすぐにスタジオのある部屋に行ってメモっておかないと。パジャマのままで良いから。

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