見出し画像

「ゆるくないっすよ!! ししまるさん」第3話

〇 ししがおか商店街
   警視庁主催の『暴力団追放キャンペーン』が行われている。
   ”ししまるくん”姿の真田と”ししこちゃん”姿の小山田の前に、萌香と
   玲子が現れる。
真田M「も、萌香ー」
小山田M「本当に二人が来たーっ!?」
玲子「萌香ちゃん、”ししまるくん”と握手してもらったら?」
萌香「うん」
   萌香、真田に近づいて、
萌香「”ししまるくん”、握手してー」
   手を差し出す、萌香。
真田M「これは夢か? 現実なのか?」握手
小山田M「アニキ、何をボケっとしているんです! 早く、萌香ちゃんと握
 手しなさいよ」
   真田、おそるおそる手を出し、萌香と握手する。
真田M「萌香と握手できたーっ!?」
小山田M「よかったですね。アニキ」
   真田、有頂天になる。
萌香「やったーっ!? ”ししまるくん”と握手したっー♪」
   その姿を微笑ましく眺めている玲子。
萌香「”ししまるくん”、これからも獅子が丘市のために頑張ってね」
真田「ありがとう。萌香ちゃん、困ったときはいつでも俺……じゃない、僕
 を呼んでよ。どんなことがあっても必ず駆けつけにいくから……」
萌香「うん。困ったら呼ぶよ」
真田「お母さんですか? とてもかわいい娘さんですね」
玲子「ええ……。私にはもったいないくらいいい子に育って……」
小山田「お母さんも美人で……」
玲子「やだあ……。ゆるキャラなのに口も上手なんですね」
萌香「ママも握手してもらいなよ」
玲子「いやあ……。私は遠慮しておきます」
真田「お母さんも困ったことがあったら何でも言ってくださいよ」
玲子「そうですね……。今、困っていることは変な男に付きまとわれて……」
真田M「えっ!? 玲子がストーカーに付きまとわれてる? 助けね
 ば‼」
真田「どんな男なんです? その男は? 俺がぶちのめします‼ 海に沈め
 てやりますよ」
小山田「アニキ! 海に沈めちゃダメですよ‼」
玲子「昔、若い頃にちょっとだけ付き合った男なんですけど、その人はヤ
 ク……じゃなかった、やんちゃな人で。悪いことをして長い間刑務所に入
 っていたんですけど、最近出所したらしく、突然私たちの前に現れ
 て……。はっきり言って本当に迷惑なんです‼ 私たちに付きまとわないで
 ほしい‼」
真田「……」
小山田M「アニキだ……。間違いなくアニキのことだ……」
   萌香、玲子の方を向き。
萌香「お母さん、苺プリン食べたい」
玲子「そうね、じゃあ、ママと一緒に買いに行こう」
萌香「”ししまるくん”、またねー」
真田「またねー」
   ブンブンと思いっきり手を振り続ける、真田。
小山田M「こんなに嬉しそうなアニキを初めて見たな。ゆるキャラをやり続
 けて本当によかった」   

〇道
萌香「あれっ?」
玲子「どうしたの? 萌香ちゃん。忘れ物?」
萌香「そう言えば、どうして萌香の名前を知っていたんだろう? ししまる
 くん」
玲子「私が萌香ちゃんの名前を言ったからでしょ?」
萌香「そうかあ」 

〇 ししがおか商店街
   オタクそうな男が真田に近づく、
オタク「”ししまるくん”、いつも、応援してるよ! 頑張って!」
真田「あん!? 何だ? てめえの方こそ頑張れや」
小山田M「そして、男には態度悪っ‼」

〇 獅子が丘市・中心市街地・目抜き通り
   お洒落な洋菓子店から出てくる萌香と玲子。
   萌香の手には、苺プリンの入ったビニール袋。
萌香「プリン♪ プリン♪」
   上機嫌にスキップする萌香。
   玲子、微笑んで、
玲子「本当に萌香は苺プリンが好きよねえ」
   萌香の視線の先には、高坂が組員を引き連れて、事務所から出てく
   る。
   ベンツに乗り込もうとする高坂達。
   突然、山県組のチンピラが出てくる。
チンピラ「高坂ぁ‼」
   高坂組組員も、銃を取りだし、チンピラを狙う。
   パン、パン、パンと何発もの銃声が轟く。
   玲子と萌香の悲鳴がひびく。 

〇 ししがおか商店街
   真田と小山田のビラ配りはまだ続いている。
真田「しかし、思っていたよりも悪くないかもな」
小山田「何がです?」
真田「市民の味方ってのも」
小山田「今まで、市民の敵でしたしね。俺たち」
   周囲がざわめきだす。
真田「どうした? 何かあったのか?」
市民A「えっ⁉ 暴力団の抗争だって?」
市民B「何でも、お母さんと小さな女の子が巻き込まれて撃たれたらしい
 よ……」
   真田、ビラを手から落とす。

〇 ローカルニュース 
   銃撃事件を報じている。
アナウンサー「暴力団の抗争に巻き込まれ、伊達萌香ちゃん7歳が意識不
 明の重体です」

〇 獅子が丘市民病院・表(夕)
   雨が降っている。
 
〇 同・集中治療室(夕)
   萌香の緊急オペが行われている。
   余談が許さない状況だ。
 
〇 同・廊下(夕)
   ベンチに座る、玲子。
   頬には大きな絆創膏。
玲子「(祈りながら)神様、仏様、誰でも構いません。お願いします……。
 私の命でよければいくらでもあげますので、萌香だけは、萌香だけは救っ
 てください……」
   ”ししまるくん”姿の真田が現れる。
真田「大丈夫か?」
玲子「今頃になって、何しにきたんですか?」
真田「……」
玲子「何で、暴力団を追放してくれないんですか? そのせいで萌香
 が……、萌香が……」
   怒りで拳を強く握る、真田。
玲子「だから、私、ヤクザが嫌いなんです。暴力ばかり振るって、周りの罪
 のない人達を勝手に巻き込んで、不幸にして、泣かせて……」
   玲子、声をあげて泣き出す。
   真田、玲子の肩に手を置く、
真田「潰しますよ……」
玲子「えっ!?」
   玲子、顔をあげる。
真田「萌香ちゃんが安心して暮らせるために、獅子が丘にいる暴力団は根絶
 やしにしてやります」
   真田、病院の外へと向かう。
 
〇 同・表(夕)
   雨が降り続いている。
   自動ドアが開き中から出てくる、”ししまるくん”姿の真田。
   雨に濡れながら、死地へと向かう真田。
   目の前に傘が差しだされる。
   ”ししこちゃん”姿の小山田が立っている。
小山田「一人でどこに行くんです?」
真田「言わなくてもわかるだろ」
小山田「水臭いじゃないですか。アニキ。お供しますよ」
真田「俺に付いて行っても何も得することはねえよ」
小山田「やだなあ、損得だけだったら、絶対にアニキとなんか付き合いきれ
 ないですよ。それに言ったじゃないですか『アニキのためなら地獄の果て
 までもついて行く』って」
真田「ふん。勝手にしろ」
  真田と小山田、一緒の傘に入り、死地へと進み出す。
真田「山県組も高坂組もぶっ潰す‼」

〇 獅子が丘港・埠頭(夜)
   雨はあがっている。
   倉庫の前で、山県率いる山県組の組員たちと高坂率いる高坂組の組員
   たちが対峙している。
   お互いガンを飛ばし合い、一触即発の状況だ。
山県「おやおや、組長さん自らお出ましとは……」
高坂「てめえら、この前はよくも舐めた真似してくれたなあ」
山県「ここで、はっきりと決めようじゃないか。山県と高坂、黒龍と真黒
 龍、どちらが獅子が丘をシマにするのか」
高坂「望むところじゃあ」
   両組員たち、ドスや銃など武器を一斉に取りだし、身構える。
山県「?」
高坂「何だ?」
   突然、大量のビラが空から降ってくる。
   山県、足元に落ちたビラを拾う。
   『暴力団追放』と書かれたビラ。
真田の声「暴力団は獅子が丘から出ていけー」
小山田の声「出ていけー」
   空を見上げる、山県、高坂、両組員たち。
   高く積まれたコンテナの上には、”ししまるくん”姿の真田と”ししこち
   ゃん”姿の小山田がビラを配っている。
   一堂、ポカンと口を開けている。
山県「てめえら、何しに来た⁉」
   コンテナから飛び降りる、真田と小山田。
真田「本当の暴力団追放運動をしにきました」   
小山田「てめえらまとめて、獅子が丘から出て行ってもらうぞ」
          (第3話 終)

#週刊少年マガジン原作大賞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?