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桜舞い散る中、インポッシブルの建物から見えた景色。『IMPOSSIBLE ARCHITECTURE もうひとつの建築史』@埼玉県立近代美術館 感想

こんにちは!コダカです。

埼玉県立近代美術館で開催中の企画展「IMPOSSIBLE ARCHITECTURE もうひとつの建築史(実際の表記はIMPOSSIBLEの真ん中に線がひかれています。)」に行ったのでレポートします。

3時間いました。
閉館時間がこなければもっと居たかもしれません。

この展覧会はその名のとおり、「建築できなかった、されなかった=インポッシブル」建物が主役です。
ひとことで「インポッシブル」と言っても、インポッシブルな建築が必ずしも「アンビルド」ではないということを証明するように、コンペで落選し実現されなかったものだけではなく、できないことを前提とし社会への提言を目的としたもの、実現可能だったが社会的な事情によりとん挫したもの、一つの図面・模型に様々な物語がありました。

まるまる1フロアの広さに約40人の建築家・美術家・芸術家による複数のコンペ図面や模型が所狭しと展示されています。(前期後期で入れ替えがあったそうです。)

思想的モニュメントとしての建築、防災復興の建築、平和の祈りの建築、コミュニティの建築…etc
順に観ていくと、たとえ「インポッシブル」であっても、「インポッシブル」だからこそなのか、まるで人々が渇望する解決策のように時代が抱える問題に対して作品が提示されていて興味深かったです。

ブルーノ・タウト氏の「生駒山嶺小都市計画」や荒川修作氏+マドリン・ギンズ「問われているプロセス/天命反転の橋」の奇抜さに圧倒されたかと思えば、黒川紀章氏の伊勢湾台風の惨状を目の当たりにして作成した「農村都市計画」や「東京計画1961」の社会問題への姿勢としての作品に心が熱くなりました。

また今回の目玉であるザハ・ハディド氏を筆頭とするザハ・ハディド・アーキテクツと設計JVによる新国立競技場の模型やCG画像の数々。最初の高さ75mから変更された高さ70mの模型の見比べもできます。
さらには並べたらボクの身長を軽く超えてしまいそうな分厚い実施設計図書や文書まで展示されていました。
終了してしまいましたが、以下のギャラリートークも拝聴することができました。

【終了】スペシャル・ギャラリートーク:設計者が語る「ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV《新国立競技場》」ゲスト:杉浦盛基(日建設計 構造設計部長)(出典:埼玉県立近代美術館公式サイトより)

当時ザハチームと設計JVがどのようなやりとりをして仕事をしたのか、懸念されていた屋根の開閉部分へのアプローチやメディアから問題視されていたアーチ部分への工法等、これまであまり聞くことがなかった内容の話を多くの来館者が真剣に耳を傾けていました。半分以上が学生や建築関係者のようでしたが、素人のボクでも理解できるように丁寧な説明をして頂けたと思います。

そして、トークショーを聞くのため後回しにしていた映像作品
映像作家ピエール=ジャン・ジル氏による
『見えない都市#パート1#メタポリズム』を最後に鑑賞しました。

内容は新橋あたりから東京の湾岸地区を車と同じぐらいの速度でドローンのように飛び回るのですが、黒川紀章氏の「東京計画1961」の螺旋建造物や磯崎新氏「空中都市-渋谷計画」等、これまで見てきた「インポッシブル」の建物たちが丹下健三氏の「静岡新聞・静岡放送東京支社ビル」、
「FCGビル(フジテレビ社屋)」等実際の建物と混在して建ち並んでいます。今や東京の名物となった櫻の花びらが舞い散る中、その映像に都市建築に関わる多くの人の想いが昇華した未来を見たのでした。

建築やデザインを学んでいないボクですらこの状態ですから、専攻されている学生さんたちはたまらないでしょう。オススメします。

さて、最後になりますがこの展覧会について美術館の公式サイトにはこう記されています。

「不可能に眼を向ければ、同時に可能性の境界を問うことにも繋がります。建築の不可能性に焦点をあてることによって、逆説的にも建築における極限の可能性や豊穣な潜在力が浮かび上がってくる-それこそが、
この展覧会のねらいです。」(出典:埼玉県立近代美術館公式サイトより)

会場はJR京浜東北線北浦和駅下車徒歩3分、埼玉県近代美術館。24日まで。終了日が迫っていますのでご注意ください。

「IMPOSSIBLE ARCHITECTURE もうひとつの建築史」
会期 2019年2月2日 (土) ~ 3月24日 (日)
※会期中に一部展示替えがあります。
前期:2月2日 (土) ~2月24日 (日)、後期:2月26日(火)〜3月24日 (日)
休館日 月曜日
開館時間 10:00 ~ 17:30 (入場は17:00まで)
(出典:埼玉県立近代美術館公式サイトより)

最後までおつきあいありがとうございました。

参考サイト
埼玉県立近代美術館
インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史(公式サイト)
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/index.php?page_id=386

美術手帖(インポッシブル・アーキテクチャーもうひとつの建築史記事)
https://bijutsutecho.com/exhibitions/3234

つたない文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。 もっと上手に書けるよう精進します。