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映画「鈴木家の嘘」試写&トークショー雑感

今日は渋谷ユーロライブにて、映画「鈴木家の嘘」の試写会に行ってきました。映画とその後行われたトークショーの雑感を書きたいと思います。

※これから映画をご覧になるかたでネタバレが気になるかたは、映画鑑賞後に再びこのnoteにいらしてください。よろしくお願いします。

以下ご注意ください。


渋谷ユーロライブ・フィルマークスさんの試写会に招待されました。

この映画ですが、とてもシリアスなテーマをもったファミリードラマと言えます。

あらすじは「ひきこもりの長男を自死させてしまい発見した母親がショックで記憶喪失に。長男の死を思い出させないために嘘をつく家族の話」です。

あらすじと予告編だけ見たら劇場で絶対見ない映画です。暗くて重い。耐えられそうにありません。試写でも自死のシーンがリアリティがありすぎて直視できませんでした。

しかし、そこからでした。このままひたすら家族の葛藤や無念が続くと思っていたら、あれ?と違う方向に物語は進んでいきます。母親がショックを受けないように「長男は部屋を出てアルゼンチンに働きに行っている」と家族は咄嗟に嘘をつきます。

そして、あの手この手の嘘で悲劇に少しの笑いを加えファミリードラマに。人を惹きつける映画という印象に変わりました。

この作品がデビュー作となる野尻監督はお兄さんを自死で亡くされているそうです。その経験が他人に死因が自殺と言えないことや集団カウンセリング等のシーンに投影されて、リアリティがある映画になっています。

また、その想いを主人公の長女・富美(木流麻生)に帰依させているような非常に生々しく尖ったセリフが随所で放たれます。これが大変な熱演で見る者の目を離しません。

長男の死後ソープランドに通う父親・幸男役には岸部一徳、自死を発見してしまう毒蝮三太夫のラジオが大好きな母親役・悠子役には原日出子、大学時代からひきこもりの長男・浩一役には加瀬亮という演技派がそれぞれ夫婦親子の関係性を、時には激しくぶつかり合い、時には優しく信じて待ち、最後まで演じ上げていきます。さらには、幸男の姉に岸本加世子、悠子の弟に大森南朋の両俳優が親族役で映画全体のクオリティを押し上げます。

食わず嫌いはよくないですね。本当に見てよかったです。

トークショー

トークショーの登壇者は講談師の神田松之丞さんと映画評論家の森直人さんのお二人。

映画を見る才能がなく、映画のトークショーの仕事は2回目で前回はなかなか大変だった(オブラートに包んでます笑)と最初から飛ばす松之丞さん。

松之丞さん自身もお父さんを子供の頃に自死で亡くしてしまった経験を持ち、この作品のDVDを事前に見た後、夢でうなされたといいます。

松之丞さん「こういう身内の自死を経験した人は多かれ少なかれ、ずっともやもやを抱えているのではないか。父が亡くなって25年経つ今でも頭の中にその出来事のもやもやが残っている。だから講談師という職業を目指したというのもある。野尻監督も同じようにそのもやもやを作品に昇華させたかったと思う。」(大意)とおっしゃっていました。

また、劇中の役への共感・視点が人それぞれで変わるという話題で、ジャックニコルソンの『恋愛小説家』を例に出したり、松之丞さん森さんとも「今まではひきこもりの長男の視点だったが子供を持つと視点が父親に変わった。見る人によってこの映画は違って見える」(大意)と。

そして、終わりの方で、森さん「骨太なフレームを持つ監督」と野尻監督の技術を褒めた上で、「悲観的で真面目な話ほど、ユーモアで届ける技術が必要」(大意)と松之丞さんは話をされていました。これも大変勉強になりました。

あっという間に予定の20分……。のはずが。

お二人とも熱くなってしまい時間を大幅にオーバー。40分もしゃべり続けていました。

もっと色々お話されていたと思いますが、うる覚えで恐縮です(汗

本作は11月16日(金)から新宿ピカデリー・シネスイッチ銀座他で公開です。

詳細は公式サイトでお確かめください。

最後までおつきあいありがとうございました。

つたない文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。 もっと上手に書けるよう精進します。