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”プロスポーツ”に求める環境とは何か

こんにちは。

スポーツ安全指導推進機構 ※注 のFBグループで気になるニュースを共有していただいたので、思わずツイート連投しそうになったのですが、段々文量が止まらなくなったのでnoteに移行。


プロアスリートという特殊なクライアントをどう扱うか。

プロスポーツという概念そのもの、そしてそこに求められる環境が、まだまだ発展途上なんだなと改めて考えさせられる問題です。


事故が起きた時誰が責任を負うのか


治療の鍼が折れ体内に残り除去 ソフトバンク・松本がリハビリ組へ 開幕ローテ絶望的(Yahooニュースよりデイリースポーツ記事)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ff93d7e7e9967a761c0ab49235064b81252bac30?fbclid=IwAR0UaXAhtJzxdxzl1H0IfLb3K0y307qMm2gAqmtrIaExc4QORW_mGmX4WhA

見出しを目にした時点で嫌な予感はしていたのですが、案の定記事を開くとすぐに『プライベートで受けた』との文面が目につきました。

こうなった時に高給取りである野球選手の休場中の責任(給与)は誰が負うのだろうか、といったことが真っ先に頭をよぎりました。


ザッと調べると松本選手は今年推定年棒2,800万円。

仮に1ヶ月休場期間が発生したとしてその期間中の給与は233万円。

チームにとっては休業期間中に発生する給与は大きな機会損失です。


おそらく今回のケースでは休業中も球団が給与は払い続けると思いますが、時にチームスポーツのプロアスリートの契約書には「チーム外で勝手に受診するな」という文言が書かれているケースもあるので、選手の自己責任ということで極論給与をストップされてもおかしくないと思います(海外なら普通にある話かと)。

そうなれば選手としてもなんらかの保険や補償に入っていなければ、究極的には治療院に請求を立てることになるのでしょうか。

そもそも、今回受診する上でチームと治療院の間で連携が取れていたのかも大きなポイントです。



”プロの環境”とは何か


日本のプロスポーツ界の中でも間違いなく選手達の給与が最高レベルの野球界で起きた今回の一件。

以前のこちらの鄭大世選手のnoteを読んだ時にも感じましたが、改めて【給与が上がる≠プロ】では無いなと感じます。

一緒に仕事をしていたリーガのスペイン人トレーナーに『F1マシンをその辺のガレージでメンテしないだろ』とよく言われていたのが頭を過ぎります。


本来避けるべきものではありますが、施術中に選手が動いてしまったり、過失ではなくとも事故というものは常に起きる可能性があるものです。

今回の件を受けて今後のチーム側の対応としては『勝手に外部に行くな』が一般的だと思いますが、選手もチーム内でケアが完結していると感じていればそもそも外部には行きません。

仮にチーム側で事故が起きていたとすれば『トレーニング中の負傷』などとリリースを出して施術をした方を守ることも出来るのですが、このような報道を行われてしまえば治療院側の印象の悪化は避けられず、普段の営業にまで影響が及びかねません。

挙句の果てには事故による損失分の請求をされる可能性があるなんてなれば、そのリスクを負ってまで選手を見てくれる治療院やクリニックは限りなく少なくなってしまうのでしょうか。


チームの予算や人員の制約があって選手が外部に行く形を取るケースも無くはないと思います。

しかし今回の報道であまり治療院側への配慮が見えないことを考えるとチームと治療院側に連携があったようには見えません。



ハードだけが環境ではない


給与を上げていくことだけがプロではなく、プロに相応しい待遇や環境を作って行くことがどの競技においてもその競技力を高めるためには必要になって行きますし、今後はその待遇や環境がプロとしての各スポーツの財産となっていきます。

無論、僕自身はトレーニングやコンディショニングの機器を取り扱う身でもあるので『所詮は製品を売るためのポジショントークだろ』と思われてしまうかもしれませんが、そもそも上記のような考えから今の事業を行なっているのでそう思われるのは何ら問題はありません。

但しむやみに機器を買い揃えれば良いとも思っていません。


モノを扱うのはあくまで人です。

どんなに素晴らしい機器が揃うハード(施設や設備)を用意したところで、それらを活かす術を知らなければそのポテンシャルを引き出すことは出来ません。

必要に応じて適切に運用出来なければ道具もあってないようなものです。


ネジを閉める際に電動ドライバーがあるのは理想ですが、何より大事なのは【どこにネジを締める必要性があるか】を知っているかどうかです。

それさえ知っていればドライバーだろうが、極論コイン一枚だろうが、ネジを締めること自体は出来るかもしれません。

ですが、【どこにネジを締める必要性があるか】を知らない人は、例え電動ドライバーを持っていたとしてもあるべき場所にネジを締めることは出来ません。

良い道具はおろか、必ずしも道具が必要なのではなく、本当に大事なことはやらなければいけないこと・必要なことを理解していることです。


豪華な分析ツールがあるのは理想ですが、エクセルからだってやれることはあります。

入浴用の施設がなくたって、大きなバケツに水を張ってアイシングや交代浴をすることは出来ます。

しかし、ハードがないことはいつだって【やらなければいけないこと】をやらなくて良い理由にはなりません。

環境を作るのは人です。


スポーツ環境においても選手の年棒が上がって行くだけでなく、その環境を作る人たちにの給与や待遇が改善されていくこと、そこから施設や設備面での改善が今後更に行われることを強く望んでいます。

少しでも良いプロの環境、スポーツの環境を作って行くべく、今ある環境で何が出来るかに今一度目を向けてみましょう。

自分も出来ることからより一層頑張ります。



※注 スポーツ安全指導推進機構について

スポーツ安全指導推進機構は、「ライフ・ファースト」のコンセプトの下、海外先進国に比べ大幅に遅れている日本のスポーツ現場の安全性向上をテーマに研究活動を行っています。
具体的には、スポーツ現場における命と安全を守るために、スポーツ現場指導者への講義やテストの実施や、合格者グループで情報共有・啓蒙・教育を継続的に行なっている機構です。
現場に立たない僕自身も受講したように講義やテストは誰でも受けられるものになっているため、少しでも興味のある方は是非リンクからページを覗いてみてください。

https://sportssafetyinstruction.jimdosite.com/

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