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これまでの「かぶふら」

「歌舞伎町のフランクフルト学派」もはじめてしばらく経ち、そこそこの蓄積が出てきました。そうすると、前提が増えてきて、「名前は見たことけど一体何なの??」と思う方も出てくるはずです。名前を見てすぐ何をやってるかわからない。そう感じる方もたくさんいるでしょう(ごもっともです)。というわけで、2022年5月に始まった歌舞伎町のフランクフルト学派、通称「かぶふら」の今までの経緯をこちらに書き残していきます。「かぶふら」の文脈とか雰囲気が少しでも伝わると嬉しい!

歌舞伎町のフランクフルト学派とは・・・
『スピッツ論 「分裂」するポップミュージック』の著者である批評家・伏見瞬と、『女は見えない』の著者である批評家・西村紗知の二人が主催する季刊イベント。新宿歌舞伎町のROCK CAFE LOFTで毎回開催している。「今の世界で、文筆や表現はどのように行われるべきか」という問いに、パフォーマンスで応え続けることを目指したイベントである。
名前の由来は、開催場所である「歌舞伎町」と、西村の専門領域である「フランクフルト学派」を重ねたもの。同時に、「歌舞伎町の女王」「東京大学のアルバート・アイラー」といった固有名も影響を与えている。

第1回 2022年5月28日(土)


「歌舞伎町のフランクフルト学派」という名前だけが浮かび、「ひとまず愚痴を吐いてみよう」と出たとこ勝負はじまってしまった第一回。まぁはじまりはそんなもんです。
私の当時の問題意識は告知文に書かれています→

「「資本主義と欲望」が、我々の生活やカルチャーとどのように関わるか」を考えていく集まりになることは、この回の時点で決まっていたと思う。同時に、批評や文章を書いてみたかったり何か表現を始めたい人をチアアップする集まりにもなった。

外でのトーク仕事をしてこなかった西村がどうなるかと思いきや、意外な進行上手を披露。伏見は西村の安定感の上で調子に乗り、急遽後半にスピりだす。「大事なのはスピッツ、スピノザ、スピリチュアル」という伏見の言葉に西村が絶望に陥ったのも、今ではいい思い出。

第2回 2022年9月10日(土) ゲスト:つやちゃんつやちゃんに100の質問聞いてみた


彗星のごとく登場したライター/批評家つやちゃんをゲストに迎え、100の質問をぶつけてそのメンタリティを丸裸にしちゃおうという企画。西村・伏見も質問に答えることで、文筆家の生態とそれぞれの違いが明らかに!つやちゃんの意外なバックグラウンド(特に出身地!)、意外な影響元、意外と通ってなかったものが判明しました。「自分の嫌いなところ」に「特に浮かばない」と答えたつやちゃんのスーパーポジティブに、ほんのりネガティブな西村・伏見がビビった回でもある。100の質問全部消化できなかったので、いつか続きやりたいなぁ。100の質問表見返したら、ずっと見てたいくらい面白かった。「ラップ始めたい」「香水の批評書き始めたい」「政治運動したい」など、イベント終了後に参加者の方々から言葉をいただき嬉しかった。実際に始めた人もいたし!

この回の告知文。そういえば伏見はコロナ後遺症の治りかけで大変な時期だった。楽しくできてよかった→

しょーごさんがこの回の素敵な感想を書いてくれました!

第3回 2022年12月17日(土) ゲスト:手条萌


「評論作家」を名乗り、主にお笑いの評論・批評を同人誌として発表しつづけている手条萌さん。西村と相思相愛の様子なので、キャッキャしてもらうことにしました。

この回の告知文→

お笑い文化を肴にしながら、今の世界のこと、文章を書いていくことについて話した回。M-1直前ということで、チャンピオン予想もしました(手条さんのウォッチャーとしての見識が炸裂していた)。このタイミングでお笑いについて語れたのはよかったな。最終的に、女性作家に求められる役割(の息苦しさ)と、ファンカルチャーと批評の関係に話が移ったけど、このテーマは後に西村が単著『女は見えない』でダイナミック展開している。

手条さんが後半に「実は東浩紀や宇野常寛に影響受けてて、同人誌にこだわってるのも二人の活動から学んでやってる」という発言が熱かった。

第4回 2023年3月4日(土)「かぶ-1グランプリ2022!」


文筆仕事を続けていると、言及されにくかったり、後に世に残らなかったりする仕事も出てきます。「これ自分ではいい仕事だと思うのに、誰も読んでくれない・・・」なんて、思ったことない書き手はいないんじゃないかしら。というわけで、歌舞伎町のフランクフルト学派で、単著にならない文章に光をあてて、そのなかで年間ベストを決めようという「かぶ-1グランプリ」をはじめてみました。
たくさんの推薦もいただき、面白い文章が多く楽しかったです!
映えある第1回「かぶ-1グランプリ」の受賞作は、

山本浩貴(いぬのせなか座)「死の投影者(projector)による国家と死——〈主観性〉による劇空間ならびに〈信〉の故障をめぐる実験場としてのホラーについて」『ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在』収録

でした!本当に濃厚な論で、これほどの密度で作品分析と差別論と社会制度論を結び付けられる文章は本当に貴重だと思います。『ユリイカ』でこんな質量の文章みたことないよ!というわけで、何度でも読み返したい論でした。
その他の選考作はこちら→

・速水健朗「なぜ批評は嫌われるのか 「一億総批評家」の先に生じた事態とは」
・みくのしん/かまど「本を読んだことがない32歳が初めて「走れメロス」を読む日」
・住本麻子「「とり乱し」の先、「出会い」がつくる条件 田中美津『いのちの女たちへ』論」
・イワシ「Bring Me the Head of Sir Gawain──デヴィッド・ロウリー『グリーン・ナイト』論」
・灰街 令「Vaporwave、Distroid、hyperpop――二一世紀のネット音楽におけるgender performanceについて」
・マルドロールちゃん「模造の消尽のためのエスキス」
・藤谷千明「女性用風俗はなぜ急増する? 低リスク・低コストなビジネス構造と、過剰サービスに疲弊する男性セックスワーカーたち」
・松田樹「「政治と文学」再考 ――ケーススタディ・井上光晴と大西巨人」
・トーヤベンソン・ニューヨーク「森敬太、tofubeats、澤部渡らが年忘れ大雑談!トーベヤンソン・ニューヨーク・アワード2022」


ベスト10に選んだ方の一人、イワシさんがこの回の感想を書いてくれました!


第5回 2023年5月28日(飛び入りゲスト:大谷能生)


かぶふら1周年を迎えた第5回。西村・伏見が「批評欲望年表」をまとめて発表。伏見が割と孤独だった時代を披露する(友人関係がうまくいってない時期にイースタンユース聴いて泣いた話した記憶)一方、西村の記憶喪失ぶりが明らかに。本当に忘れてるのか!?

後半には大谷能生さんが急遽ゲスト参加!ベルクソンとアドルノの話を真面目にする一方、ものすごい税金対策(対策なのか、あれは?)が明らかに。なんだか勇気のでる会になりました。今年出た大谷さんの『歌というフィクション』はガチ名著なので、皆さん読んでください。


第6回 2023年9月3日 ゲスト:山本浩貴(いぬのせなか座)


「かぶ-1グランプリ」を受賞した山本浩貴さん(いぬのせなか座)がゲストとして出演!

山本さんのルーツを紐解きながら、今の制作スタイルになっていった敬意を率直に語っていただきました。「文筆と金」といった俗世的な話題から、「神とリズム」という形而上学的な話題まで自然と繋がる有象無象な感じが楽しかった。エッセイの流行に関する、山本さんの「エッセイ地位が上がったというより、フィクショナルなもの(小説、詩等)を作ること価値低下が著しい」というコメントが鋭かった。その状況の中で、どう書き、どう語るかという問題設定がクリアに出た回だったと思う。


第7回 2023年12月30日(土)「かぶ-1グランプリ2023!」


そして、次は第2回の「かぶ-1グランプリ」です。年末ギリギリでやれるのが嬉しいですね。
各論へのコメントをしつつ、全体的な状況にももちろん触れていきます。
アイデンティティ・ポリティクスの変容?エッセイとは家計簿である?対談ブーム?公共のない批評?
さまざまな話題に触れつつ、今年の批評の総決算を行います。『女は見えない』についての話もする予定です。
今年を納めるために大事な会になりますので、ぜひ遊びに来てください!
「かぶ-1グランプリ」の推薦も引き続きお待ちしております!
予約・推薦は下記ホームページから!




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