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人生の貸借対照表



だれでも病人でありうる、
たまたま何かの恵みによっていまは病気ではないのだ
    ――――中井久夫 精神科医



▼▼▼「内観」の経験▼▼▼


10年ほど前、僕は「内観」というのをやった。
創始者の吉本伊信という人が、
浄土真宗の「身調べ」っていうのを
内観法に発展させたのだという。
これが関西の少年院や刑務所で実践されると再犯率が減った、
みたいなこともあったらしく、昭和の時代に広まった。
今も内観は全国に何カ所かある内観道場で実践されている。

僕は2013年に燃え尽きに伴う鬱を患い、
2年間休職したのだけど、その療養の後半に2度、
まる7日間内観道場に籠もって先生の指導のもと内観をした。

もともと浄土真宗からアイデアを得たが、
今は特定の宗教色はなく、
仏を拝むとかそういう要素はなくて、
神父や牧師も内観に来ることがあるという。

7日間何をするかというと、
簡単に言えば、
生まれてから現在に至るまでの人生の棚卸しをする。
3つのことをひたすら思い巡らす。

1.人にしてもらったこと
2.人にして差し上げたこと
3.人に迷惑かけたこと

これだけだ。

まずは0~2歳ではどうだろう。
ほとんど何も覚えていないが、
まちがいなく言えるのは、
365日×2年間、
合計700回以上、
いや多分その何倍も、
汚いおしめを母に替えてもらった。
ミルクや母乳も飲ませてもらった。
布団を敷いてもらい、
清潔な部屋で過ごさせてもらった。
おそらく数えきれぬほど病院に連れて行ってもらった。

何をして差し上げたか。
何もしてない。

どう迷惑をかけたか。
記憶にはないが、
確実に夜にギャン泣きしたりして、
母や父の睡眠時間を奪った。
多分、大切な何かを壊したりもした。
それを飲み込みそうになって、
母の肝を冷やさせた。

、、、そうやって、
2年か3年ごとに、
1時間かけて振り返っていく。
そうすると7日間はすぐに過ぎ去る。
スマホも本もPCも全部ロッカーに鍵をかけ、
ひたすら目の前のふすまを見ながらそれをする。
手書きのノートは多少ならばつけても良いが、
むしろ内面に集中するためない方が良い。

その状態で、
7日間がすぐに過ぎ去るのだ。

嘘だと思うでしょ。

これが本当なのだ。
2回やったけど、
2回とも、
「え? もう終わったの?」
と思ったのだから。


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