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ゴミ出しに何を履くかも「いざ鎌倉」

「今朝は缶と瓶、持ってって」
毎週「資源ゴミの日」の朝、女王様から指令が飛びます。
(ほとんどアンタが飲んだ亡骸なきがらなんだから)
というわけです。
「いやいや……」
無益な口ごたえはしません。
生ゴミは家の前なので女王様が出しますが、資源ゴミは3ブロック離れているので、8時前に幾何いくばくかの《武装》が必要、というのが真相です。

ちなみに我が家では、上半身のみ簡単に着替えて(あるいは何か羽織って)偽装し、下半身は未だパジャマ、という状態を半魚人はんぎょじんと称する「超・地域言語」が使われています。
家の前なら半魚人はんぎょじんでも大丈夫、というわけです。

例によって話題が逸れました。
問題は資源ゴミを出すために何を履いていくか、です。
サンダルか、スニーカーかの二択です。しかも、古く汚れたサンダルか、くたびれた安物のスニーカーか、の二択です。

3ブロックといっても住宅街なので、100メートルもないでしょう、サンダルで十分なのですが、いつも、
ウン!
と気合を入れてスニーカーを履きます。
《本日の主題》にようやくたどり着きました。

若い頃は、多少距離がある場所に歩くのでも、裸足にサンダル履きが多かった。
しかし、ある時期から靴、それもスニーカー的な代物を心掛けて履くようになりました ── たいした距離ではなくても。

それは、
《いざ、という時に全力で走れるか?/備えているか?》
が生きていくためにとても重要なことではないか、という「命題」を抱くようになったためです。

「事件」「事故」いずれの場合も、そこから全力で逃げたり、あるいは現場に駆け付けたりする必要がでてきます。
小中学生の時は(……私だけ?)そんなことの連続でした。
……でもオトナになり、いつかそんな日々を忘れてしまっている。

しかし、
いつ何時、南海トラフ地震が起こり、津波から逃げるために高台に駆け上らねばならないかわからない。
あるいは、
水谷豊が取り逃がした凶悪犯を追って、
「そいつを捕まえてくれ!」
と私に応援を求めてくるかもしれない。

『いざ鎌倉』という際に、《馬》が無ければ駆け付けられない!── ではないですか。

街でピンヒールを履いた女性を見かけると、
(……キミは、誰かがそのバッグを引ったくって逃げたら、追いかけることができないよ)
と余計な心配をします。
(……周りの他人に期待しているのかもしれないが、みんながみんな、いい《馬》にまたがっているわけではないからね)
仕方ないな、と辺りに気を配り、私だけはいつでも引ったくりを追いかけられる姿勢を取ります(ウソです)。

来世では女性(もちろん、人間の ── オオアリクイでなく)に生まれ変わりたい、と思っていますが、そうなっても、ハイヒールなど履かず、いつでも全力疾走できる準備をしていようと思っています。
(この記憶を来世までキープできるか、という些末な問題はあるにせよ……)

この思いを一層強くしたのは、10年余り前、会社の駅伝大会に出場した時です。
タスキを受け取り、走り出して間もなく、左のランニングシューズの紐が緩んでいることに気が付きました。
けれど、立ち止まり、かがんで締め直しては、決定的に遅れてしまう! そこで、左足に気を使いつつ、中途半端な全力疾走をしました。
(サンダル履きで全力疾走するのは、これと同じです)

……このツケは大きく、左の膝を痛めました。
今でも山に登るのはいいが、下山の時は左ひざに気を使います。昨春、屋久島で縄文杉まで往復した時も、サポーターを巻いた膝は爆弾でした。

右手に多量のビール缶、左手に町内のどこにも負けない本数の酒瓶を下げて3ブロック歩く途中、
どこで美女が悲鳴を上げ、助けを求めてくるかわからない。
おそらく、真っ先に《現場》に駆け付けるのは、この私です。

── ま、とりあえず、駆け付けるだけですが。

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