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翻訳小説を読まなくなったいきさつ

昨日アップした、好きな作家について書いたのか、はたまたその話題を巡る女性とのやりとりについて書いたのか、自分でも定かではないエッセイ:

その末尾に、

ところで、中学の頃までは外国人作家の翻訳小説をよく読んでいたのに、高校のある時期からまったく読まなくなる。
── それには明確な理由がある。

エッセイ『「好きな作家は?」ときかれた時に』より

と書きました。これは、一度アップした後で読み直し、中学時代のBest 3が、
・アガサ・クリスティー
・エドガー・ライス・バローズ(火星シリーズ読破!)
・北杜夫

だったのに、高校時代以降は、
三島由紀夫
大江健三郎
村上春樹
(・筒井康隆)
(・井上ひさし)

と、海外作家が消えたことは意外と重要ではないだろうか、これは注意喚起(誰に?)しておいた方がいいだろう、と書き加えたものです。

高校生のある時期、特に誰かに何か言われたわけではなく、こう考えたわけです。

「小説は、本来それが書かれた言語で読んだ方がいいのではないだろうか?」

これは単なる『あるべき論』ではない。
「小説を読む、というのは、単にあらすじを追うだけではない。原文の表現と翻訳された日本語でニュアンスが異なることもあるだろう ── いや、程度の違いこそあれ、必ず全て異なるはずだ」
そう考えたわけです。極端なヤツですな。

もちろん当時、そんな言語能力は持ち合わせておらず、必然的にこうなる:

「海外作家の小説は、それが書かれた言語で読める能力が備わってから読むことにしよう」

しかし、外国語学科に進学したわけでもなく、そんな能力を身に着けることはできない。

18歳から19歳にかけての1年間、学校にも行かず、好きな事だけしながら本を100冊ほど読んだことがありましたが、見事なばかりに原文を日本語とする小説ばかりで、海外文学は1冊たりとも含まれていませんでした。

「うーむ。これでは大人になってから海外作家の小説を一切読まないという、なんだか国粋主義者的偏愛読者になってしまう!」

まあ、それはそれでいいのだけれど、初心に従い原著で読むトレーニングをしよう、と決心しました。

まずは易しいモノ、と考えた時に、子供の頃の愛読書(もちろん当時は翻訳版)を原著で読んでみることにしました。
これならば、ストーリーを憶えているので、知らない単語をいちいち辞書をひかずとも読み進めることができるはず、というわけです。

そして選んだのがこのシリーズ、『ライオンと魔女』から始まる『ナルニア国物語』シリーズ(C.S.ルイス)です。

Wardrobeから始まる不思議な世界!

小学生向きの物語ですが、大人が読んでも面白い、というのがなんとか読み続けられた理由でしょう。

次は、中学生レベルで、過去に読んではいない、けれど読んでみたい物語、ということで、ミヒャエル・エンデのファンタジー、「はてしない物語(Neverending Story)」と「モモ(Momo)」にとりかかりました。
原著はドイツ語で書かれていますが、同じゲルマン系の英語版で問題なし、と考えました。

『モモ』の方が日本語ユーザーにはわかりやすいか?

こんなことをやっているうちに英語で長い文章を読むのが苦にならなくなり、結果として留学プログラムに手を挙げることにつながっていきました:

そうはいっても英文小説を読むにはやはりまとまった時間がかかるため、読破したペーパーバック(たいてい、海外出張に行った時に空港で買う)は限られていて、

・Michael Crichton

他に、Lost World, Rising Sun, Airframe, Andromeda Strain, Eaters of the Dead, A Case of Need, … 天才だ!

・Stephen King

視覚的想像力をかきたてる作品。

最近では(最近でもないかな…)ハリー・ポッターの原著を読んでいましたね。

小説ではないけれど、英文吹き出しの『MANGA』もよく読みました(おススメです!)。

ん……で、やはり高校時代に考えたことは正しかったか? ── という結論が必要ですね。

答えは
「(部分的に)YES!」
やはり、小説を味わうためには、原著で読んだ方がいいです。
ただし、アガサ・クリスティーの推理小説のように、論理性が重要な作品では差がほとんどない(とても失礼だけど、あらすじが重要、ということになるのでしょうか?)。
でも、例えば、スティーヴン・キングのホラーや、レイモンド・チャンドラーのハードボイルドのように、

描写が読み手の心理に与える効果が大きい作品

では、(たぶん、だけれど)原著と翻訳で差があるのでしょうね。

まあ、── 少なくとも、高校時代の『思い込み』によって、かなり偏執的な読書習慣を長らくもってきたことを、

── 後悔はしていない。

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