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再勉生活! フェイクIDでJoe's Breweryの関所破り!

講義と宿題に追われながらも、博士研究テーマをどうするか ── 悩ましい日々でしたが……。

研究室では、毎週15人ほどのメンバーがBeckman研究所の講義室に集まり、Weekly Meetingを開きました。輪番で毎回2人の研究発表を聴き、内容を議論しました。
Payne先生はこういう時も、ボスとして議論をリードするのではなく、
「I am interested in …」
「I suggest that …」
とあくまでもひとりの参加者に徹し、ポスドクや学生の自主性を重んじるタイプの研究者でした。

この時点で研究室には、慶大理工学部の木村敏夫先生と企業研究者の豊田さん、という2人の日本人がいました。
2人はCeramic Buildingから徒歩10分近くのBeckman研究所にオフィスと実験室があったので、この時に日本語で情報交換をしました。ただ、ここのカフェテリアで毎週木曜に出るミートローフが素晴らしく(特にグレイビー)、ランチタイムによく出かけたものです。

近代的なBeckman研究所。
私の棲むCeramic Buildingの屋根裏部屋とはえらい違いでした。
うらやましいッス!

研究室ではMeetingの後、3ヶ月に1度くらいの頻度で、Payne先生も参加し、地ビールバーで議論する美風(?)がありました。

ボスが来ない時も学生たちはMeetingの後でよく呑みに出かけていましたが、東洋人は誘われません。
意地悪されているわけではなく、
・年齢差がある(10歳近く年上)
・家族持ちが多い(生活コストの問題もある)
という理由で、誘ったとしても来ないだろうと思われている(実際、来ないことが多い)ためでした。

私は学生側の人間なので、ボスが来ない時も結構参加しました。
集まるのはいわゆるキャンパスタウンのド真ん中にある、
《Joe's Brewery》
で、ダーツやビリヤードもできる店です。
オリジナルのPale AleやWhite Beerを呑み、オニオンリングやチーズのかかったフレンチフライをつまみながら、バカ話や文化論、たまに研究の話をしました。

まだ存在しているようですが、名前が《Joe's》に変わり、メニューからクラフトビールが消えているようです。

店の入口には学生バイトのようなアンちゃんがいて、ID(運転免許証)を必ず確認する。21歳以上でないとそもそも店内に入れない。
この時既に33歳だった私は顔パスかと思いきや、毎回確認された。日本人全般に言えますが、特に私は「童顔」のようで、厳しくチェックされました。

WBC優勝のシャンパンファイトに20歳の高橋宏斗(中日)は参加できなかった、とのことです。米国ではこの「21歳以上」ルールはかなり厳しく、日本のコンビニのように自分で「20歳以上」マークを押せばOK、とはいきません。

夏のある日、
「乾杯!」
とジョッキを合わせた後、カリフォルニアからSummer Job(夏だけのバイト的インターン)で滞在している学部1年生Markがいることに気が付いた。
「君は21になっていないよな? どうやってあの関所をくぐり抜けた?」
すると彼は涼しい顔で、
「Look, I am 22」
と運転免許証を見せる。生年月日を計算すると確かに22だ。
「That is a fake(偽の)one」
別の学生が言った。
「Yeh, I have the other one」
Markが今度取り出した免許証では、生年月日だけが3年後になっている。
「Californiaには精巧なフェイクIDを作る業者がいるんだ。俺の友人は入学した時にたいてい作ってもらったぜ」

ルールがあれば必ずそれをかいくぐろうとする者も現れる。しかし、学生たちに喜ばれていたこの業者は、当局に摘発されたということであった。

高橋選手も、fake IDを持っていればシャンパンファイトに参加できたかもしれないね。

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