2020年のベストな1冊

この1年はコロナ影響で家にいることが多かったこともあり、例年以上に本を読んだ1年間だった。

そんな中でもベストな1冊を挙げるとすると、間違いなくDisneyの元CEOのボブ・アイガーが書いた"ディズニーCEOが実践する10の原則"。今まで読んだことのある経営者本の中で圧倒的に良い内容だった。

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ボブアイガーはABCテレビの雑用としてキャリアをスタートし、その後社長まで上り詰め、ABCがDisneyから買収されたことによりDisneyのCOOへ。その後苦節の果てにDisneyのCEOに就任し、就任後すぐにSteve Jobsに直談判してピクサーの買収に成功。その後もマーベル、ルーカスフィルム、21世紀FOXの買収に成功してコンテンツを大幅に強化。そして既存事業を破壊する形でデジタルトランスフォーメーションを実行し、ディズニーをコンテンツとテクノロジーが融合したデジタル時代の最強メディア企業へと変革させた。

個人的には特に、プロフェッショナルファームやMBA卒のエリートではなく、現場叩き上げという点が大きな共感ポイントだった笑

私が外でミーティングに参加する時には、かならずそこにいるすべての人と会話を交わし、全員とつながろうと努力する。それはほんのちょっとした仕草にすぎないが、どうでもいい存在として見過ごされた時の気持ちを私も覚えているし、世界が自分を中心に回っているわけではないことを思い出す貴重な機会にもなる。

アメリカのCEOというと、どうしても最高の能力を持つが性格が最悪のサイコパスみたいな人物像が思い浮かぶが、アイガーは全く異なる。自身が社長を務めたABCが買収されたあとに親会社社員の失礼な言動を受けた経験を反面教師として、自らが買収した企業の経営者や社員に対して徹底的な敬意を払い、文化を尊重したことが買収成功の大きな要因だったという。こういうちょっとした心がけで人間性に差が出る。今後気をつけたい。

  二時間経って、メリットはほんのひと握りしかなく、デメリットはどうでもいいことも含めて、余るほどあった。私は落ち込んだが、仕方のないことだとも思った。「まあ、仕方がないな。いいアイデアだと思ったんだが。やはり無理だろうな」「メリットは数少ないが間違いのないものだし、たくさんのデメリットよりも重要だ」とスティーブが言う。「さて、ここからどうする?」また勉強させられた。スティーブはメリットとデメリットのすべての重要性を推しはかり、デメリットの多さに騙されてメリットの重みを、特に彼が成し遂げたいことを、見失わなかった。そこがスティーブのスティーブたる所以だった。

本質のみを追求し、本質ではない情報に左右されない意思決定をすること。会社のビジョンや戦略をクリアに持ち続けることが必要条件なのだと思う。

今はうまくいっていても将来どうなるかわからない事業を自ら破壊すること、つまり、短期の損失を覚悟して長期成長に賭けることには、ものすごい度胸が必要になる。日常業務やこれまでの優先事項がかき乱され、仕事の分担が変わり、責任の所在も変わる。新しいモデルが生まれ、これまでの仕事のやり方が通用しなくなると人々は不安になる。人事面で対処しなければならないことが多くなる。トップが社員に「寄り添う」ことが欠かせなくなる。もちろん、どんな局面でもリーダーは部下に寄り添わなければならないが、変化の局面ではいつにもましてそれが必要になる。リーダーは忙しすぎるし、部下のために時間を割けず、ひとりひとりの懸念や問題に応えている余裕はないのだと周囲に感じさせてしまうことはある。しかし、社員に寄り添い、リーダーが力になれると社員たちにきちんと知らせることで、社内の士気と実行力は上がる。

既存事業を破壊する取り組みを経営者として行うことは、度胸というより狂気が必要になるレベルだと思うが、更に一歩進んで部下に寄り添う重要性を説く。リーダーにはこれぐらいの余裕が必要だと痛感。

このイベントは、二〇〇四年に私がはじめて受けた取締役会との面接を締めくくるものになった。あの面接で、私はディズニーの未来について話し、その未来は三つのことにかかっていると話した。ひとつ目は良質なオリジナルコンテンツ。二つ目はテクノロジーへの投資。そして三つ目はグローバルな拡大だ。当時は、この戦略がどんな形になって現れるのか想像もできなかった。もちろん、私が話した三つの柱がこれほどまでに明らかな形になって、未来の組織の姿を世の中に発表できるような日が来ようとは思いもしなかった。

"シンプルな戦略"/"良い戦略"とは正にこのことだよなぁ… 結果10年後にこの戦略通りの未来を実現させているわけで、凄まじい。このレベルまで研ぎ澄まされて本質を突いた戦略を作れるようにならねば。

 おそらく、そんな感覚は誰しも同じなのかもしれない。どんな大人になっても、何を成し遂げても、その昔、物事が単純だった頃と同じ子供の自分がまだそこにいる。ある意味で、リーダーシップの基本もそこにあると私は思う。世界中から、権力者だ重要人物だと祭り上げられたとしても、本当の自分を見失わないことが、リーダーの本質だ。自分を過信しはじめた瞬間に、肩書きに頼りはじめたその瞬間に、人は自分を見失ってしまう。人生のどの段階にいても、あなたという人間は昔も今も変わらないことを心に留めておいてほしい。それが何よりも難しく、何よりも大切な教訓だ。

人との付き合いは、人間と人間としての純粋な付き合いでありたい。


成熟企業が長年培ってきた強みをもとに、M&Aなどのファイナンスの力&テクノロジー&グローバル経営を武器にしつつ、優れた人間性と他者への深い敬意を基盤にしたリーダーシップで変革を推進し、時代の変化に最適化した形で企業の可能性を最大限発揮できるようにする。

なんとなく思い描いていた理想の経営者像を体現している人の本を読んで、改めてこういう経営者を目指そうと思った。来年は勝負の年。頑張ろう。

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