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【所感】5-猫と高校生

やっぱり、猫が好きだと思う。
駅からだいたい10分くらい離れれば、だいたい猫の住む住宅地がある。
猫が野良犬と同じ扱いでないのは、不幸中の幸いである。
散歩しているとき、猫が通り過ぎた。
理由はなく、理由など要らず、ラッキーだと思う。

制服に着られている感じの、多分高校一年生の男子が走っていった。
モサっとした感じの彼は、顔を低くして膝の曲がった前屈みのフォームで走っていった。
怒ったような、でも表情筋の不足した表情で。
彼の背後を、桜の花びらが追っていったのを見た。
その奥には、サラッとした運動部っぽい男子が2人でサラッと歩いていた。
ああいう走り方の子はいつでもクラスに1人はいるよな、と思った。

自販機の前で、女子生徒が3人ギュッとくっついていた。
それぞれの体のラインからはみ出ないくらいの動きで、自販機に向かって、なにやら揃って腕を動かしている。
よく見たらICタッチの出っ張りの上に器用にスマホが置いてあった。
多分あれはTikTokを撮っていたと思う。
その奥には、地味目な女子生徒が2人、くっついて彼女たちを見つめていた。
笑みもなく、蔑む目でもなかった。
しかし多分、自販機を通り過ぎた後、悪口を言っただろう、と簡単に予測できる顔だった。
なるほど令和の高校生の分断とはこんな感じなのか、と思った。
モノが変わっただけで、分断の図式は昔となんら変わっていない。

4月の16時。
家に帰ったら、猫がいたら良いと思う。
散歩に連れ出す必要もないし、出迎えたりしてくれないのが何より良い。
何も目指さないし、何も進歩しない。
ただ居るだけというのが美しいのである。
たとえばあの恩田三姉妹の生き様と似ている。
さんざん悪口言って騒いで、それでおしまい。
理想的である。
散歩ついでに本を買ったのだった。
実用書コーナーを完全に無視して、日本人、小説、100円〜200円、「よ」。
いつもの吉本ばなな。
未読の古本を2冊発見したのだった。
どっちも100円。
これだから大人はいい。
ああしかし、モサっとした彼を追いかけた桜の花びらは、けっこう綺麗だった。

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