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Daily Life Essay「あじわい亭」 ~4品目~

Daily Life Essay「あじわい亭」
感じていたことを伝えられなかったこと、ずっと自分の中で心にひっかかっていたことや感情、はじめて食べたご飯のような新たな気づき、覚えておきたいこと。週替わりでメニューが変わる幕の内弁当のように、いろんなエピソードが詰まった、日常を味わうエッセイマガジン。
それがDaily Life Essay(日常のエッセイ)「あじわい亭」です。


崖っぷち、でも諦めなかった先に。


渋滞にハマることは想定していたが、まさか駐車場が全部満車なんて…。


出発1時間前の羽田空港、第2ターミナル。
駐車場に満車の意味を表す「満」が出ていても、少し空いていることがあるのを知っていた自分は、余裕ぶっていた数分前を後悔していた。

すぐに一般道に入るが、有料道路での移動を避けた人々が集中し、大渋滞。ここを抜けた先にそもそも駐車場ってあるんだろうかと考えながら、この渋滞をいつ抜け出せるのかそわそわしていた。


あと50分。ようやく渋滞を抜け出し、駐車場がありそうな一帯にたどり着くも、頼りにしていたパークアンドライド型の駐車場は予約車以外は不可。しらみつぶしに駐車場を探し回るも、辿り着いた駐車場は道路沿いから一番離れたところ。出発まで残り45分。


うわ、これやってしまった。本当に乗れないかもしれない…。


そう思っても、諦めきれなかった。
とりあえず出来ることをしようと思い、キャリーケースを引っ張り、ダウンを片手に空港方面へ全力疾走。マップを頼りに走り始めるも、途中で「これさっき車で走ってた方向では?」と思い再度マップを見ると、逆方向に進んでいたことに絶望。

これは終わった…。そもそも走ってじゃ空港に行けないじゃん…。

と絶望の淵に立ったとき、トンネルから一般道に抜ける渋滞の車列に、「空車」の表示をした一台のタクシーが目に入る。これを捕まえれば間に合うかもしれないという、ラストチャンスを乗せた希望のタクシー

思い切り手を振り、路側帯に停め、空港へ向かってもらうよう伝える。
時計を見ながらも、あとはなるようになると思うしかなかった。


15時22分。出発まで30分を切ろうかというとき、空港に到着。
すぐにチェックインすると、30分前と思っていた保安検査が20分前だと気づき、その瞬間「救われた…」と安堵で包まれる。そして、自分よく諦めなかったと最大級の褒めを送りたくなった。


諦めたほうがいいときもあるが、諦めないで自分ができることをやっていると救われることがあるのだと気づけたとき、苦手なことも過去にできなかったことにも少し挑戦してみようかなと思う。そして、過去に誰かに与えたギフトやギブがこうして返ってくるのかとも。


車のキーロックをしたか不安な気持ちがありながらも、いよいよフライトだ。そわそわした気持ちはあるが、鍵を閉めていることを信じて、空を飛んでいこう。

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