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実用書の構成は、わかりやすい順番

「編集者が身につけておきたい15のスキル」の記事にて、実用書の編集者に求められるスキルとして、企画力、コミュニケーション力、憑依力、構成力、深掘り力などを、それぞれ大まかにご紹介しました。

その中で、今回は「構成力」についてです。

では、詳しく見ていきましょう。


構成とは目次のこと

構成とは、簡単に言えば「本の目次」です。

目次は、大きな塊から、章→節→項となります。

実用書は何かの役に立つ本ですから、役立つためのわかりやすい順番を考えることになります。

この力が「構成力」です。

通常、構成を考えるときは、まず章見出しを決め、その下のレベルの節見出しを考えていきます。

そして、それぞれの節グループに入る項見出しをあげていくという流れです。

構成力とは?

これまでにない新しいテーマでない限り、私が編集するような初心者向けや初級者向けの実用書は、類書がある本がほとんどです。

そのため、私が構成を考えるときに、まず類書を研究します。私の場合は、最低でも5、6冊の類書を読みます。

そもそも企画を考える前に、少なくとも2、3冊は読んでいますので、数冊を追加で読んだり、すでに読み終えている本を、再度、熟読したりするという感じです。

これらには、自分の企画に似た実用書もあれば、文字だけの本の場合もあります。

それらの目次に共通している項目の多くは、重要な項目、伝えるべき項目ですから外せません。

本によって異なりますが、共通の項目が多いものでは7、8割が同じ項目になるケースもあります。

ただし、順番が異なります。

ある本では2章に入っていたものが別の本では4章に入っている、ある本で3章に入ったいたものが別の本では1章と4章に分けて解説されているといった感じです。

順番が違っていても、外せない項目は、ほぼおさえられています。

このように、どんな順番にするかを考えるが構成案づくりで、読者にわかりやすいものを提供できる力が「構成力」です。

「読者にわかりやすい流れはどんなものか」を考え抜くことが、編集者には求められるのです。

構成を考えるときに必要なものとは?

構成を考えるときのベースとなるものが「ターゲット読者」です。

わかりやすい例では、初心者と初級者。ベースとなる基本的な知識レベルが異なりますので、目次も変わってきます。

株投資の本を例に見てみましょう。

初心者向けならば、「株とは?」という項目は外すことはできませんし、「株主優待とは?」の説明もていねいになります。

一方で、初級者向けならば、「株とは?」という説明を省くことも可能ですし、説明が入る場合にも、簡単な解説ですむでしょう。

目次に反映するときは、初心者向けならば「株とは?」は節見出しとして必須ですが、初級者向けならば、項見出し、場合によっては見出しを立てずに本文で解説するだけとするケースもあります。

もちろん、「株とは?」は基本中の基本です。そのため、初級者向けでも、あえて節見出しにするケースもありますが、そのときは読者はすでに知っていることが前提になるため「おさらい」のようなイメージでの解説になるでしょう。

もう少し深い内容の「株価チャートとは?」という項目も、初心者と初級者では扱いが異なります。

初級者ならば、株価チャートという言葉を知っているでしょうから、「株価チャートとは?」の解説は簡単にすませ、その次に解説する「ローソク足」の説明を充実させることになるでしょう。

一方、初心者向けの本ならば、「株価チャートとは?」だけで節見出しにすることになり、「ローソク足とは?」は次の節に譲るというケースもあります。

このような感じで目次を考えていくことになりますが、構成力として大切なのは、やはり「順番」。「どのような順番だとわかりやすいか?」を考えに考えて構成案を作っていきます。

そのときのベースとなるのも、やはり「ターゲット読者」です。

同じ初心者向けの本でも、ターゲットによって順番が異なるからです。

わたりやすい例で言えば、「基本からていねいに知りたい方」と、「すぐに実践方法を知りたい方」とでは、解説していく順番を変える必要があります。

前者には、1章や2章のような初めのほうで、専門用語をきちんとページを割いて説明することが、わかりやすい順番となるでしょう。

一方、後者をターゲットに設定するならば、専門用語は最低限の解説だけにし、すぐに株取引の実践方法に入り、こちらにページを使うことになります。

もちろん、専門用語の解説も初心者と初級者では異なります。
知っている用語レベルが違うためです。

初心者でも初級者でも、初めて聞くような言葉が1ページ内に5個も6個も入っていると、とても頭のいい方は別として、一般的な読者はなかなかついてこられません。

そのため、専門用語を5個のうち3つだけ出し、残りは専門用語を登場させずに一般的な言葉を使ったり、登場させない用語の内容については、その項目でまったく解説しないといったことを行います。

解説しなかった専門用語は、項目を変えて別の節で紹介していくことになりますので、構成が変わってくるのです。
思い切って、一冊を通して、その専門用語を登場させないという選択肢もあるでしょう。

また、専門用語を解説する場合も、初出のときにしっかりと文字数を使って解説するケースと、初出では簡単に解説し、後のページでていねいに解説するという方法も考えられます。
このケースでも、構成が変わります。

このようなことを考えながら、ターゲットにあわせた、理解しやすい目次を作っていくのが、構成力です。

ターゲット読者を考えるときに、大切なのがペルソナです。

しっかりとペルソナを設定し、その読者に憑依できるくらい読者の立場で考えることができれば、わかりやすい順番になります。
(ペルソナについては、「読者から支持される本作りに一番重要なスキルとは?」の記事参照)


私が構成案を考えるときの具体的な方法

私のケースをもう少し詳しく紹介します。

私の場合は、まず複数の類書の目次を見ます。
上述しましたが、私の場合は、最低でも5、6冊の類書を読んでいますから、それらを見比べるということです。

刊行されている類書が少ない場合は、そのテーマの文字物の書籍を読み直します。このとき、大切なポイントを箇条書きにして書き出すということを行っています。図版が重要だと感じたら、それらをノートに描き写すこともしています。

1冊の本でこの作業をすると、A4のノートに4、5枚の分量になります。

上記のことを行った後、書き出した項目を、自分の企画の章見出しの中に移動させていきます。

章レベルは、企画を考えた段階で、ある程度決まっているため、その章見出しにあわせてグループ分けしていくわけです。

もちろん、この本だけのオリジナル項目も足していきます。
差別化のキモですので、オリジナル項目をどのように引き立たせるかをじっくりと考えながら作っていきます。

一通り構成を作ったら、全体の見直しです。

流れがいいかどうかを確認し、微調整をしていきます。

このような作業を繰り返し、構成案を作っていきます。

その後、監修者やライターさんと構成案をブラッシュアップしていきます。
(著者が執筆する本の場合は、構成案の初案は著者が作ることがほとんどです)

その作業を終えた後、次は「台割」への落とし込みです。

台割とは、ページ割のことです。

第1章はP15〜46、第2章はP47〜70……。第1章の第1節はP46〜47、第2節はP48〜49……のように、どの項目が何ページ目に入るかまで作る作業が台割への落とし込みになります。

台割ができあがったら、構成作業の完成です。
執筆へと進んでいきます。

ただし、執筆前にできあがった台割は、その時点でのベストです。
執筆が進んでいくと、この項目の前に、別の項目が入ったほうが流れがいいということが起こるからです。

これも読者にわかりやすい順番にしていく過程では大切なことになります。

ベストな構成は、制作過程で変化していくのです。

そして、ターゲット読者にわかりやすい順番の本ができあがっていくのです。


今回は「構成力」について、紹介しました。

次回は「編集者が身につけておきたい15のスキル」の中の「深掘り力」について紹介していきます。



文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

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