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誰でも社会問題を語れる!『社会学の入門』の入門をつくりました。

こんにちは、高橋ピクトです。
今回は、担当した本をご紹介します。
「マンガでわかる社会学」という本です。

社会学って難しそうなイメージがありますよね。
「社会をよりよくするために何ができるかを考える学問」だそうですが、実際に何をするのはわからない…。

でも、この本の制作を担当して感じたのは、
社会学はめちゃくちゃ身近だということです。

たとえば、日常生活の中で「どうして女性ばかり負担を強いられるんだろう」「どうして男性らしく振舞うことが求められるんだろう」と、考えたことはありませんか?

これを「社会学的想像力」といって、その疑問が社会学の出発点だそうです。そして、疑問の先にある対象を否定せず、理解を試みることで、解決方法を探る。

社会学で扱うテーマには、アイデンティティ、ジェンダー、格差、差別、メディア、政治など、今、世の中で話題になっているものばかり。

「なぜ男性優位の社会は変わらない?」
「どうして差別がなくならないの?」
「同性婚ができないのはなぜ?」


こういった話題はテレビやネットで語られているのを観たり、自分自身が家庭や職場、仲間同士で会話をする機会があると思います。
でも、「自分も意見を言いたいけど、気軽にできない」という人も多いのではないでしょうか。正しい知識がないと、誰かを傷つけてしまうんじゃないか、SNSで炎上してしまうんじゃないか、心配になってしまいますよね。

でも、安心してください。
監修の西田亮介先生、そしてマンガ家の安永知澄さんのおかげで、わかりやすい本となりました。西田先生には「『社会学の入門』の入門」と言っていただきました。

マンガの冒頭を少しご紹介しますので、もし、興味があればご覧ください。

冒頭のマンガをご紹介


本書のマンガの主人公は、それぞれに「生きづらさ」を感じる人たちです。
ある日、居酒屋でモヤモヤをぶちまけているところに、社会学者の西田亮介先生に出会います。

マンガの中で、西田先生は
「社会をよりよいものにするために何ができるかを考えるのが社会学です」と語ります。

本書は、生きづらさが生まれる場所では何が起きているのか、日常に不安や不満、疑問を感じるとき、目の前にある世界だけが真実なのか、視点に偏りはないか、本書は、そういったことを考えるきっかけとなる書籍です。

データで、視野が広がる

本書は、世の中を見る際に、データを用いるところも特徴です。
たとえば、「2章 性によって社会は分断される?」では、こういったデータが紹介されます。

主人公たちは下の「ライフステージ別 家事時間(男女の家事時間の差)」のデータを見て、女性と男性では、家事にかけている時間に差がありすぎることに気が付きます。


一方、日本と他国の「男女別の生活時間」を比べると、
日本の労働時間が極端に長いこともわかります。


確かに家事を行う時間は男女で圧倒的な差があるけど、
その背景には、日本のいびつな労働環境も影響していたということです。

ひとつの事象について多方面からデータを見ることで、視野を広げ理解を試みる。そして、よりよい解決策を探るのが社会学なのです。

西田先生への取材で
「世の中を見る力が磨かれた」

本書では、監修者である西田先生に取材を行い、マンガのシナリオや、解説を作っています。その質問は、こんな感じ。

Q1)西田先生が考える社会学の定義を教えてください。
Q2)ソーシャルメディアの登場は、アイデンティティ形成にどのような影響を与えたのでしょうか。
Q3)日本は海外に比べ、性別役割分担意識が強いのはどうしてでしょうか?
Q4)取り組むのが男女に限らず、「家事は無償」と考えられているのはなぜでしょうか?
Q5)少子化解消のために、西田先生が必要だと思われる政策にはどういったものがありますでしょうか。
Q6)インターネットの登場によって広がった格差はあるのでしょうか。また、インターネットの存在が「格差の感じ方」に与えた影響や、人びとの格差感覚に変化はありますか?
Q7)SNSがない時代と今とで、人々の持つ差別感情や排除意識は変化したと考えられますか?

制作に携わる編集者、ライターが日々感じる生きづらさや、感じることを、そのまま西田先生にぶつけました。

対面の打ち合わせを1度、リモートでの取材を4度ほど。
西田先生は淡々と、適切に取材に応じてくださいました。事例やデータを例示したお話は率直に面白く、新しい視点を得ることができました。本書のメインキャッチである、「世の中を見る力を磨く」という言葉は、西田先生への取材での実感から生まれています。

原稿は編集者とライターの協同で、マンガは安永さんが執筆しています。
西田先生からは相当量の原稿の手直しをいただき、かなり苦労をかけてしまいましたが、おかげさまで、本書のことを「社会学の入門の入門」と評価してくださいました。

私たちの分身、主人公たちの成長

と、本の紹介をしましたが、本書の見どころは、なんといってもマンガです。思い悩む主人公たちの切実な言葉。暗闇に光が差すような西田先生のアドバイス。そのうえで、成長していく彼らにぜひ注目していただきたいと思います。

安永さんは主人公たちの表情や、会話の間を丁寧に描くことで、語るのが難しい「誰かの生きづらさ」を表現してくださいました。

CHAPTER3 『「不平等」はなぜ生まれる?』より
CHAPTER4『日常にある「差別」をなくすには?』より
エピローグ『生きやすい社会にするため、私たちができること』より


社会学以外の多くの学問は、何かを分析するときに平均や主流のデータに注目します。一方、社会学は主流から外れたデータの散らばりや、個別性にも目を向けるそうです。

自分以外の誰かを否定せず、尊重し、理解を試みる。

私は、この本を担当することで、社会学は「優しい学問」だと感じました。もっともっといろいろな事象を見て、周りの人と意見交換をすることで、人の気持ちや立場を理解したいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
もし、少しでも社会学が身近に感じられたら、読んでみてください。


文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しい腸の教科書』『コリと痛みの地図帳』などの健康書を中心に担当。「生活は冒険」がモットーで、楽しく生活することが趣味。2010年に立ち上げ、シリーズ37冊となった『マンガでわかるシリーズ』は、編集者としての経験を広げてくれた大切なシリーズです。とある飲み会で社会問題の話をする難しさを感じまして、「マンガでわかる社会学」を企画しました。ちょっとは話せるようになったと思うのですが…。ペンネームは街中のピクトグラムが好きなので。

Twitter @rytk84

本づくりの舞台裏、コチラでも発信しています!​

Twitterシュッパン前夜






















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