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編集者の「わかりやすい構成の立て方」

今日は、わかりやすい本をつくるための「イメージ」と「具体的な方法」をご紹介します。書籍の構成のお話なのですが、noteの記事を書くときの考えを整理して、表現するヒントになるかもしれません。もしよろしければお読みください。

こんにちは、高橋ピクトと申します。
池田書店という出版社で実用書の編集をしています。

わかりやすい本、
私は、こんなふうにイメージしています。


ある有名な絵本作家が
本は「著者」と「読者」に架かる橋だと言っていました。
編集者は「その橋にこわれたところはないか、穴はあいていないか、と調べてくれる人」だということです。

そのとおりだと思います。
原稿を読み、校正し、デザインや印刷、全体の仕上がりをチェックするのが編集者の役割です。しかし、私は、編集者はその橋を設計する役割も担っていると考えています。もちろん、著者と一緒に考えますが、その責任はどちらかというと編集者にあると思います。

これは私のイメージなのですが、
著者と読者には、こんな感じで距離があると思っています。

著者は「自らの経験や知識を、誰かに伝えたい」。読者は「著者のもつ経験や知識を知りたい」
そんな関係性と距離感を表しています。

読者に本を読んでもらうことによって、両者に橋を架けることができるんです。よい橋を架けることができると、読者は楽に著者の考え方や、メソッドを理解することができます。

逆に、橋の架け方(=本の作り方)が、うまくいかないとこんな感じで読者が困ることになります。

橋の高さは、本の難易度。橋の距離はページ数という感じでしょうか。

なので、編集者は上手に橋を架けたい!と考えます。
これが良書や、ベストセラーを生む秘訣だとも思っています。

次に、わかりやすい本をつくるため具体的な方法について、お話します。

わかりやすい本のために、
最も大事なのは「構成」

私が編集している実用書では、わかりやすい本をつくるために、以下のような工夫をします。

・わかりやすい構成を立てる
・読みやすく、わかりやすい原稿を書く
・文章を補足する図やイラストをつくる
・文章を補足する写真を掲載する
・わかりやすくレイアウト、デザインする
・マンガなど、キャラを設定して解説する
・編集者自らが体験して、その経験を伝える


中でも大事で、どの本でも必ず行うのは「構成を立てる」ことです。
編集者はどうやって構成を立てるのでしょうか?
以下の3つの手順で行われることが多いと考えています。

1. 本に入れる要素を箇条書きにする
2. カテゴリ分けをする(章を考える)
3. 順番を決める(章の順番を考える)
※1と2は逆のこともあります。

たとえば、「新しいキャンプの教科書」という本は、監修者との長期にわたる取材を経て制作した本でした。

「新しいキャンプの教科書」


まずはネタリストを作ります(1.本に入れる要素)
2015年が初版の本なのですが、PCのデータを探っていたらそのネタリストが出てきました。

監修者が伝えたいことは「キャンプを通じて、自然と共生すること」。それをヒントに、ネタを並べたところ、【衣】【食】【住】【遊】【火】【刃】【生きる力・防災】にわけられることがわかりました(2.カテゴリ分け=章立てのプロト版)。

それから、ネタリストをもとにさらに取材を重ねて、こんな章立てになりました。

Part1 キャンプをはじめよう(理論)
Part2 住空間をつくろう(実践)
Part3 自由自在に火を操ろう(実践)
Part4 自然の中で遊ぼう(実践)
Part5 野外料理をつくろう(実践)
Part6 キャンプのススメ(理論)

このときに大事にしたのは、読者の立場に立った章の順番です。
理論ページ(太字)が前半に固まると読みづらく使いにくいので、本の最初と最後に分けています(3.順番を決める)。また、監修者が大切にしていた【衣】【食】【住】【遊】【火】のエッセンスを全面に出しつつ、読者にとっても魅力的に映るように章立てを考えています。

実は【生きる力・防災】も大事なテーマでしたが、章とはしませんでした。監修者が強く伝えたいメッセージではありましたし、私たちも大切な要素だととらえていました。しかし、アウトドア初心者の読者の立場を考えると重いと考え、バランスをとって、本全体からそのメッセージを感じられる内容としました。取っつきやすい本だけど、読んでみると奥行きがある、そういう本になったと思います。

わかりやすい構成を立てる
5つのポイント

私が構成を立てる際に大事にしているのは、以下のことです。

1. まず箇条書きで本の内容を書き尽くす
2. 著者や監修者が何を伝えたいのか考える
3. 読者が何を得たいのか考える
4. そのうえで、章立てを考える
5. そして、順番を考える


悩ましいのは、2と3です。著者の考えを全面に出した構成になると、世の中にない本が作れるかもしれませんし、専門家の評価は得られるかもしれません。しかし、難しかったり、テーマがニッチになりすぎて読者に伝わらない可能性があります。一方で読者に寄り添ってやさしく、わかりやすくしすぎても、どこか見たことがあるようなつまらない本になってしまいます。

キャンプの教科書の最初にできた章立てはこんな感じでした。

Part1 出かける前の準備
Part2 テントサイトの設営
Part3 自然の中で楽しく遊ぼう
Part4 食事
Part5 撤収
Part6 上級者のキャンプ

簡素ですし、なんだかワクワクしないですよね。
また、監修者のメッセージも反映されていませんし、読者としても魅力的に感じられない章立てだと思います。

わかりやすい本をつくるには、編集者が著者、読者、両者の間に立って、よい橋を設計する(構成を立てる)ということが何より大切です。

私はnoteの記事を書く時は、箇条書きで書きたいことや伝えたいことを書き出して、一覧するようにしています。そのうえで、読んでもらうことを考えて、内容を絞り、構成を考えます。書籍の構成を考えるのとほぼ同じようにしているつもりですが……。書いてみると客観性が足りなくて、アップして反省ばかり。記事を書き出すと周りが見えなくなってしまうので、書く人と読む人の架け橋となる編集者の存在はつくづく大事だと思っています。

#仕事のポリシー #編集の仕事 #業界あるある

文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しいキャンプの教科書』や『勝ち馬がわかる競馬の教科書』『麻雀技術の教科書』など、趣味実用の入門書を担当することが多いです。「生活は冒険」がモットーで、楽しく生活することが趣味。ペンネームは街中のピクトグラムが好きなので。
今回はイメージを形にしてみましたが、例が特殊だったかもしれませんね…。伝わると嬉しいです。

Twitter @rytk84

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