衝撃を受けた短歌

(永遠は無いよね)(無いね)吊革をはんぶんこする花火の帰り
笠木拓「はるかカーテンコールから」より

恋人同士もしくは恋人未満同士の歌だろう。花火デートの帰り、二人はバスか電車に乗っている。そして吊革をはんぶんこ。一つの吊革に二人で手をかけ、車内の揺れに身を任せ、手や浴衣が触れたり触れなかったりしている。

吊革だって揺れている。等間隔に吊られた○(吊革)が、車両の揺動に合わせて触れたり触れなかったりしている。○同士が触れ合うとき、∞(インフィニティ)となる。離れれば解消される。「永遠は無いよね」「無いね」の会話とシンクロした情景がそこにある。心焦がした花火大会の帰り、この時間が永遠に続けばいいと願いながらも、車両は終着点へ向かってしまう。永遠は無いと分かっているから、吊革や手が離れる瞬間がむず痒い。その刹那は花火のように掛け替えのない時間を彩る。

歌全体を見ると、“()”(丸括弧)がふたつ並んでいる。二人の台詞を示すマークとして用いられている。通常なら「」(鍵括弧)でよい気もするが、丸括弧で吊革を表現しているのかもしれない。

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