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【台湾有事は直ちには無い。それより日本を覆う空気の方がよっぽど心配。】

台湾に久しぶりに滞在。そこで考えたこと。自分のメモのためにテキストにしておこうと思います。

今回は台湾のいくつかの地方創生などを研究している大学から手招きを受け、日本でのプレイスメイキングの実践例を紹介するということで台北市から南投〜高尾市まで移動しながらいろいろな人と交流してきた。

南投県のキナン国際大学での講演

今回は研究者や学生ともたくさん会う中で、相変わらず台湾の人々の日本に対する関心の高さというのを実感したのだけど、それ以上に現地でなければ感じられないことや分からないことの吸収のほうが多かった。

高雄市で行われたカンファレンスの様子

台湾の人たちは目を輝かせて日本に学ぼう!と意気込んで来るのだけど、正直いっていまや日本の僕らのほうが彼らから学ばなければいけないことがたくさんあると思った。

まず改めて感じたのは台湾の人たちの政治への自然で合理的な接し方。これは日本には全くない部分だし、本当にリスペクトすべき部分だと思う。

ちょうど台湾に滞在中に、鹿児島では老朽化した川内原発の20年の稼働延長が決まった。4万6千筆を超える県民投票の請求があったにも関わらずあっさりと無視されての決定。

40年を超えて稼働延長が決まった鹿児島川内原発

日本中の老朽化した原発の稼働延長に対する住民からの請求はいまのところ他県でも全部棄却されているということ、そもそも原発依存は国の政策なのでそれに従うという(爆)。

国とか他県のせいにして県知事と議会が稼働延長を決める。そんなことだったら県知事も県議会もいらないんだけどなんだそりゃ。なにもいきなり止めろとか言ってるわけじゃない。対話を求める民意などまったく意にも止めない態度。脱力感だけが残る。

一方、台湾にも4つの原発がある。しかし、2011年の日本の状況を受けて建造中だった4号機は建設を停止。2021年には新北市(台北の隣の市)で40年間稼働した國聖第二原子力発電所1号機を永久閉鎖した。

今年の3月14日、台湾電力は台北に近い國聖原子力発電所2号機を永久閉鎖して40年の運転期間を満了。残る3号機も25年に運転期間を終えた後は稼働させないという方針を蔡英文が総統になって打ち出し、2017年に25年まででの脱原発を宣言した。

しかし!

さらにその後に本当にそれで大丈夫かという議論が起き、是非を問う「国民投票」が行われた。結果、完全な脱原発はまだ時期尚早(?)ということで25年までの完全な脱原発は見送られて、現在棚上げになっている。

台湾電力第3原発台湾南部・屏東県

それは両岸問題(いわゆる台湾有事)が万が一にも起こって天然ガスなどが輸入できず電源が足りなくなった時には、止めている原発を予備電源として使うことを検討しているということも要因のひとつのよう。

日本が引き起こした原発事故を受けて冷静に自国の原発への対応を決めた上で、万が一の国難にもしっかりと備えている。

とはいうものの、

日本では「台湾有事」が毎日のように喧伝されているけれど、台湾の人たちによれば近々中国がロシアがウクライナにしたような攻め方はしないだろうと分析しているという。これは今回現地でいろいろな人に訊ねたけれどほぼみんな近しい意見だった。

別に平和ボケしている感じではない。すごい勢いで発展している高尾市の港には巨大な軍艦が停泊していて象徴的だったけれど、台湾の防衛力やいま圧倒的なシェアと技術を持っている半導体産業の優位性などちゃんと把握した上で、武力侵攻で破壊して分捕るというシナリオを選択するほど中国も馬鹿ではないという見立てだ。

中国が台湾を手に入れたいとは考えているのは確かだけど、台湾の自分たちも防衛力を高めて鍵はかけている。国際的な関係性もちゃんとある。やれるもんならやってみろと。

日本で散々台湾有事が報道されまくっているということを伝えると、それは日本の防衛(軍事)費を上げるために税金を増やしたい層がいるからそうしてるんでしょうね、と。日本はジャーナリズムも劣化しているのか...。さもありなん。

台湾でも少子化は進んでいて、このままだと過疎化が進行してしまうから、「地方創生」戦略も日本に学ばないとという機運も高い。けれど日本のように手が付けられなくなってからやるんじゃなくて、経済的にも発展していて力のあるいまのうちからしっかり準備しようとしている。

原発にしろ地方創生にしろ、国民の安全に関わることはしっかりと国民投票までして議論と対話を深める。選挙ともなれば投票率も高い。

このことは今年の総統選挙でも争点になっていた。結果脱原発を掲げる民進党が勝利した。

日本が世界で競争力を失いつつある原因はお上が決めることに議論も対話もできないマインドにあるのだと思う。どうせ何言ったって無駄だという諦めと合理的な無知の空気が日本には蔓延している。

隣の芝が青いということは重々承知だし、日本にだっていいところはたくさんある。けれど、、、うちは本当にこれで大丈夫なのか。悲しい気持ちになりながら飛行機に乗って帰ります。


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