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西国と東国を分つ坂 足利峠

足柄峠は伊豆半島に位置し、相模国と駿河国とを分ける古代からの重要な関所である。万葉集に見られるように、この峠は古くから日本の東西を区別する境界として認識されていた。ここは「坂東」の名で呼ばれる地域の象徴的な存在であり、東の国と西の国の分かれ目とされている。

足利峠の関所跡にある指標



地理的特徴においても、足柄峠はフォッサマグナという地質学的な概念における境界の一つである。フォッサマグナは日本列島を西と東に分ける大きな地溝帯とされ、伊豆半島がその南端から日本列島にめり込んできたことで形成されたという説がある。この地形は、日本列島の地理的な西東分割を示すものとして認識されることがある。

足利峠から西国を望む。天気の良い日は富士山が先に見えるという



文化的側面では、網野善彦の著作『東と西の語る日本の歴史』に見られるように、足柄峠を含むこの地域は、畿内と坂東の間で顔立ちから体格まで差異があったことを示すDNA解析結果によって、文化的な区分が強調されている。これは、古代から中世初期にかけて日本内部に存在した文化的・遺伝的多様性を示唆している。

さらに、坂東は異国情緒を帯びた地として、京都の歌人たちに影響を与えた。彼らはこの地域の風土や人々を想像しつつ、オリエンタリズムに満ちた「東歌」を創作したと言われている。このプロセスは、異文化への憧れや想像力が文化創造において果たす役割を示している。

足柄山の金太郎



足柄峠と碓氷峠は、歴史的に日本の文化的及び地理的な西東の分界線として機能してきた。これらの峠を越えると、日本最大の関東平野が広がっている。日本の土地を理解するには、その中心よりも周縁に焦点を当てることが重要であるという考え方が、この地域の探索を通じて示されている。

西国から来た人はこの峠から東国へ入る

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