ウォーキング風呂グ vol.8 西船橋〜法典の湯編

生まれも育ちもどっぷり船橋で、20歳を超えたあたりで東葉高速鉄道の開通に伴う区画整理により市川のはずれに引っ越した。
引っ越した実家から法典の湯は車で10分ほど。時々亡き父の運転で妹と一緒に訪れていたものだった。
ここは近隣の温浴施設の中では価格的にもリーズナブル。そして何よりこの辺ではあまりないタイプの濃ゆい温泉が湧き出ていて源泉かけ流しがウリ。
そんな私の地元の湯までこのたびはご案内したい。

西船橋から北口をまっすぐ

今回は西船橋から法典まで歩くことにした。
時間は午後2時40分。晩秋の太陽はもう傾き始めている。
北口エスカレーターを降りてカラオケ館がある通りをまっすぐ早稲田ゼミナールまで。関係ないけどこの通りにある南風堂(喫茶店)は妙に天井低くてレトロな店の作りが面白い店。しばらく行ってないけど。
大通りに出ると右に武蔵野線の高架が見えるので高架沿いに歩いていくとする。

もう暗い

どんつきまでいくと袋小路になってたので少し引き返して左に曲がると鬱蒼とした緑道に出た。小学校の頃から母親に、この辺りで昔バレー教室帰りの女の子が誘拐されて行方不明になってると聞かされていたので中年も半ばを過ぎた私でも早足になる。
怖がってたのもバカバカしいほど数分で駅前の商店街に出た。

無口になって進んでいくと行田の近くだろうか、船橋近辺の人間なら知っている超巨大な船橋給水場配水塔が見えてくる。夕日に染まるコロッセオにも似た石の建造物の影はいよいよ深く不気味さを増している。子供のときからこのバカでかい建物に対するえも知れぬ畏怖の念を感じていた。不動のままひっそりそびえるその様は息を潜めじっとこちらを観察し続けている大きな意志を持った古代より生き長らえし化石生物のように感じられたのだ。
さらに足早に早歩き。もうすぐ日が沈む。
正直ちょっと武蔵野線の一駅をナメてた。高架下はほぼ畑、ところどころ鬱蒼とした森もありまだ6時前だというのに誰もいなくて泣きそうになっていた。

そこからさらに30分は歩いただろうか…。やっと目的地は見えてきた。


料金詳細は写真にて。土日だったので900円だった。会員になるとかなりお得なのかなという気がする。券売機で券を買ってカウンターに出す。タオルに金をかけるのがバカバカしいのでタオルは自宅から持ってくるべき。100円で買っても貧弱なやつしかもらえない。
一階の奥は食堂になってる。普通に蕎麦とか麺類とかつまみも色々ある。一人用カウンターもあるので全然一人飲みも落ち着いてできるなと思った。
まあ酒を飲む前にもちろん風呂だろということで階段で2階へ。
赤い暖簾をくぐるとそこそこ広い更衣室。ロッカーは好きなとこに100円入れて鍵閉めるタイプなので隣が使われていない着替えやすいところを選んでほしい。このへんのロッカー選びセンスもこういったスパ銭では大事なポイントとなる。いつもなぜか失敗する。

ここの風呂は130万年前にできた地層から組み上げた化石温泉と呼ばれるかけ流し天然温泉が売りなんだけど、じつはほかに高濃度炭酸泉風呂も大人気で、先ごろのリニューアルで内風呂の一番大きいお風呂を炭酸風呂に改装したようだった。20畳ぐらいはあるだろうか。かなり大きな炭酸お風呂には大型テレビも設置されており温度も38度ぐらいなのでついついテレビに見入って長風呂してしまいそうな雰囲気だった。内湯は2つ。もうひとつの6畳ぐらいの湯船は入らなかったけどミルク系の入浴剤のお風呂だったと思う。内湯もそこそこに露天風呂へ。
以下、能書きから引用。

楽天地天温泉とは
楽天地天然温泉「法典の語」の温泉は、この地の地下1500mの地層(地質年代は新世後期180~350万年前に堆積した地層から汲み上げられたものです。この温泉に含まれる成分は、現在の海水と非常に似ており、太古の昔に地殻変動などによって空気に触れることもなく封じ込められた海水が、長い年月をかけて醸成された貴重な温泉で、化石海水と呼ばれております。
この太古の恵みとも言える温泉の泉質は、ナトリウム塩化物強塩温泉,弱アルカリ性高張性温泉といわれ、これをそのままぜいたくにかけ流しで使用いたしております。主な効能は身体がよく温まり湯冷めしにくいという特徴があります。また、お肌がつるつるになる『美人の湯』とも呼ばれています。

源泉かけ流しが20年ぐらいずっと湧き出ている仕組みがわからんので本当にそんなに毎日かけ流しておいて枯渇しないのか少し疑問なのだが、もしかしたら循環しているだけなのかもしれないしそういう難しいことはわからない。でもとにかく何百年前の地層からくみ出した海洋温泉とのことで泉質にも深い醸成感がある。
色は濁った黄土色、10センチより下は不透明で青森の不老不死温泉の見た目に似ている。温度は少しぬるめの39度ぐらいだろうか。舐めると少し塩っぱいが不思議と傷に染みたりはしないマイルドな入り心地。岩風呂は経年かけ流しの温泉にさらされて茶褐色に変色しており、見た目にも効能の裏付けを感じさせてくれる。とにかくスーパー銭湯の割には静かでどことなく秘湯感があって雰囲気がとても良い。露天は茅葺きの屋根付きで和風旅館のような趣もある。お湯はぽたぽたと少しとろみもあってしっとりするし、海の温泉にありがちなベタベタ感もないので出たあともすべすべとして肌に良いなと感じられる。

露天にはほかに温泉を水でうめてぬるくしたぬる湯と、熱目の温度に設定したあつ湯、寝湯、ひとりで入れる信楽壷の壺湯が2つ、あとは座って入るタイプのバブル系マッサージ風呂がいくつかある。派手さはないがお湯の温度も風呂の形も変化があってあきのこないフォーメーションだと思う。私がお気に入りなのは一人用の壺風呂。特に向かって右側のほうが竹筒から流れる水音の耳心地がよく左脳が疲れているときにASMR的な効果を得ることができてよい。

また、ここで特筆すべき魅力といえばよもぎ蒸しサウナであろう。あかすりとセットにすればより韓国民間療法的な風情が味わえる。
風呂を出たところに6畳ほどの小上がりがあってごろ寝できる。ただし、あまり広い休憩所はないので要注意。
あくまでも近所の人が銭湯がわりにくるくつろぎ所という感じのところなのでリゾート感は皆無であることをご留意いただければ本当に優れたスーパー銭湯だと思う。

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