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炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 2.「これ実は老眼鏡なんです」

2.「これ実は老眼鏡なんです」

「なんだ、ディレルさんのお友だちだったんですか…」
「まあそうなんですけど…ちょっと僕もビックリしましたよ」

 店長さんは意外な展開に笑う。どうやら店長さんの言動を聞く限り、ディレルはこの店ではそれなりの常連客らしい。店長が名前を知っているということから考えても明らかである。

「でもおどろいたな、二人がミニチュアゲームに興味があるなんて…」
「今日はじめて覗いてみたばかりだぜ。まさかディレルにばったりなんて、俺さまだって想像してなかった」
「ディレル、この手の話まったくおくびにも出してなかったし…」

 ディレルとは考えてみれば大学にも入ってからのつきあいなので、もう十年近いのだが、この手のゲームの話題は聞いたことがない。お風呂屋さんの息子ということもあるので、何度も彼の実家(銭湯潮の湯)に行ったこともあるのだが…

「そうかなあ…みぎてくんよりはずっと違和感ないと思うんですけど」

 ディレルは苦笑する。まあ確かにこの体育会系魔神がミニチュアボードゲームやフィギュアのペイントをしている姿の想像図に比べれば、ディレルの方が似合うのは間違いない。もっともそれは多少論点がずれている気もするのだが…
 すると魔神は反論する。

「えーっ?俺さまだってこういうの結構好きだぜ。ほら、前にシルバーアクセとか作ったじゃん」
「あ、そういえば…」

 かなり前の話になるが、クリスマスパーティーを開いたときに、この魔神が手作りのシルバーアクセを作ってきたことがあった。見かけによらずけっこう器用なのである。ああいう細工が得意なら、この手のフィギュアも好きというのも頷ける。

「まあとりあえずいいじゃないですか。せっかくの体験会だし、僕も一緒に手伝いますよ」
「あ、そうだな。俺さま楽しみ楽しみ」

 さすがにこれ以上店長さんを待たせるわけにもいかない。ということで、ようやくコージたちは初のミニチュアゲームの体験をすることになったのである。

*     *     *

「げぇぇっ!囲まれたよ~」
「みぎてくんもっと逃げればよかったのに…」

 今回体験したミニチュアゲームは、宇宙に進出したキャラたちと、スペースゾンビのバトルという感じのゲームである。どうも本当はもっといろいろなシナリオがあるようなのだが、これが入門用らしい。スペースゾンビは数が多いので、一体一体は弱いのだがなかなかしぶとい。対するスペースソルジャー(?)は強いのだが、数が少ないのである。今回は突出しすぎたみぎてスペースソルジャーが大ピンチである。

「こんにゃろっ!避けたらいけるっ!」

 みぎてはここでちょっと気合いを入れてサイコロを手に取る。といってもこのピンチだから、かなりいい目がいる。サイコロを四つ振って、半分以上が6でないとあえなく憤死である。
 が、勢いよく振ったサイコロの目は1・1・1・4…

「まったく逆ですね…」
「みぎて、ほんとにサイの目悪いなぁ」

 結局みぎてのスペースソルジャーはゾンビに袋叩きを喰らってあえなく憤死である。

「あー、よく負けた!ちょっと悔しいけど」

 みぎてはからからと笑って敗北を認める。ゲームなのでこういうことはよくある話である…が、負けたにも関わらす、なんだか楽しそうである。さっきみぎて自身が自白していたのだが、ギャンブル系のゲームだと、負けるとヒートアップしてしまい失敗するのはよくある話なのだが、このゲームはそういうことはないようである。もちろんつまらないとか、ルールがわからないとかそういうわけではない。
(たしかにルールはちょっと複雑なのだが、やっていることはキャラの動作を順にやってゆく感じなので、覚えやすい。移動して、物陰から射撃するとか、そんな感じである。)
 これはコージも感じていたのだが、どうもこのゲームは勝ち負けよりも、立体のフィギュアたちが入り乱れて立ち回るのを見るというのが楽しいものらしい。

「今回はまあアーミーをこちらで貸し出しましたが、皆さん自分のアーミーを作って、ペイントして遊ぶのが普通ですね」
「えっ!?自分で作れるのか?それすげぇ!楽しそう!」

 みぎては店長さんの説明に歓声をあげる。たしかに借り物のフィギュアでこれだけ素敵なバトルシーンが楽しめるのだから、自分で塗ったフィギュアなら絶対熱いだろう。

「でもペイントって家でやるのは難しいんじゃ…シンナーとかラッカー塗料とか使うとなると…」

 コージはさっきも話題になった心配事を聞いてみた。コージ達の狭い下宿でラッカーなどを使ったら、お隣から文句が来るのは間違いない。
 ところがディレルがそこで口を挟む。

「コージ、大丈夫ですよ。水性アクリル塗料なら臭いもないし…」
「あ、そんなのあるんだ…」
「水性なら俺さまだって使えるな」

 ディレルの解説に店長さんは頷き、更に補足を始める。

「そうなんですよ。昔より水性アクリル塗料はずいぶん良くなって、手でさわったからといって剥げたりしません。それにエアブラシでなくて、筆塗りでいけます」
「コージ、エアブラシって?」
「スプレーみたいなやつだな。プロとかか使うやつ」

 エアブラシはコージも名前しか聞いたことがないが、イラストやプラモ塗装で滑らかに色を塗るのに使う、一種のスプレーのようなものらしい。もっとも細かい霧のような塗料が飛ぶので、がっつり防御しないと部屋が塗料だらけになりそうである。
 店長さんの説明では、最近はエアブラシを使わなくてもきれいに塗れる塗料が登場しているらしい。エアブラシはコージたちには敷居が高すぎるので、これはありがたい。
 と、ここで店長さんはいよいよ本業…営業活動に入る。

「で、こちらの棚にあるアクリルゲーミングカラーは、ゲーム用を考慮してさらに塗膜が強く、筆塗りに最適な…」
「…まあこれが仕事だものな…」

 当然と言えば当然の営業活動なので、コージたちとしてもここに文句を言う気はない。強いて言うなら一気に説明をされるとなにがなにやらわからないことが問題だが…

*     *     *

 さて「アクリルゲーミングカラー」とかいう塗料の説明が一通り終わったところで、店長さんはこんなことを言い出した。

「まあこんな説明よりも、実際にペイントも体験してもらった方がいいですよね」
「ペイント体験?」

 コージたちはゲーム体験コーナーのとなりの机に移動する。机の真ん中にはさっき紹介された「アクリルゲーミングカラー」が大量に…ざっと見たところ百本くらい並んでいる。よく見てみると、どうも全部微妙に色が違う。あんまりいろいろな色があるので、名前が想像つかない。

「すげえ…こんなに色があるんだ」

 みぎては目を見開いて、目の前の小さなプラスチック瓶を手に取る。少し緑がかった茶色の塗料のようである。

「これ、何色?」
「うーん…オリーブ色みたいだけど、ちょっと違うか…」

 すると店長さんはにこにこ笑って答える。

「あ、ゴブリンスキンですね」
「ゴブリンスキン?聞いたことない色名だよな…じゃあ、こっちは?」

 隣のもう少し赤みの塗料を指差したみぎてに、店長は言う。

「こっちはモールドランド、それからこっちはケイオスタンですね」
「…何がなんだかわからなくなってきた…」
「っていうか、色名全部メーカーオリジナルなんじゃ…」
「俺さま違いわからないかも…」

 百種類を越えるほどの塗料である。どうやら色名はメーカーが勝手につけたものらしい。しかしここまで徹底しているとすごいもので、単なる白ですら何種類もある。これだけあるととても名前など覚えられそうにないのだが、店長さんは一目でわかるらしい。プロ恐るべしである。
 さてコージたちが椅子に座ると、二人の前に小さなプラモデルが置かれる。ペイントはおろか、組み立てすらしていない。プラスチックの枠に繋がったパーツの状態である。まあパーツは数個しかないので、組み立てそのものは簡単そうであるが…
 プラモデルをはじめて体験する魔神は、この状態をみてビックリである。

「ええっ?これがあんなすげえフィギュアになるの?嘘みたいだな!」
「プラモデルは組み立て前はランナーについたままですからね」
「ランナー?この枠のこと?」
「ですよ。プラモデルは溶けたプラスチックを金型に流し込んでつくるから…枠というか、プラスチックの通り道なんですよ。」

 どうやらプラスチックの注入口がランナーの正体らしい。射出成型というやつである。こういう話はコージも初耳である。
 二人はディレルや店長さんの指導のもと、早速フィギュアの組み立てに入る。工作用ニッパーを使ってランナーからパーツを切り離し、切り口をやすりで磨いてから接着剤で組み立てると言う手順である。が、ここで恒例の問題が発生する。

「ちょ…このニッパー小さくねえか?俺さま使いにくい」
「ええっ?あ、みぎてくんにはちょっと小さいのかなあ…ちょっとじゃないですね」

 ディレルが呆れてしまうほど、この魔神にはプラモデル用ニッパーは小さい。というか魔神の手が大きすぎるのである。もともとプラモデル用ニッパーは普通のものより細かい作業ができるように、先も細く小さいものが多いのだから当然である。とはいえ普通のニッパーだと、細かいパーツの切り出しがやりにくいので、なかなか難しい。
 さて切り出しのあとは切り口の整形である。ニッパーでパーツを切り出した切り口がでこぼこして格好悪いので、カッターややすりで削り落とすのである。ここを丁寧にするとしないとでは、仕上がりがけっこう違うらしい。
 面白いことにみぎてはこういう地味な作業は、意外と苦にならないらしい。鼻唄などを歌いながら、太い指先でナイフやヤスリを操り、器用にバリを削っている。コージの方が苦戦しているほどである。

「みぎてくん、意外ですね~」
「そうか?シルバーアクセとか、丁寧に磨くの普通だしさ」
「あー、たしかに同じかもしれませんね」

 たしかに銀細工はこういうフィギュアとある意味同じである。素材こそ違うが、サイズもかなりにているのだから、やすりとかの扱いも同じだろう。そう考えると、この魔神はビギナーというには多少問題があるのだろうが。
 あんまり丁寧に加工をしていると時間が全然足りないので、ある程度のところでいよいよ組み立てに入る。フィギュアは小さいし、今回は販促用の簡単フィギュアらしく、組み立ては接着剤が要らないイージービルドとか言うタイプらしい。あっという間に組み上がる。この段階でもけっこう素敵である。

「これってどんなキャラ?」
「スペースソルジャーですね。強そうでしょ」
「鎧けっこうでかいな。歩くの大変そうだぜ」
「あー、この鎧は動力入っているって設定なので、大丈夫なんですよ」

 組み上がったフィギュアを見ながらみぎての素朴な疑問が出る。たしかにこのスペースソルジャーとかいうフィギュアは、頭の大きさに比べて鎧がかなり大きい。等身でいうと9頭身くらいになっている。さらに鎧自体は横幅もかなりあるので、まるで鎧と言う機械のてっぺんから頭が覗いているようにみえる。どうやらパワードスーツのような設定らしい。さすがSFである。
 さて組み上がったフィギュアを、今度はペイントする番である。下地にプライマーとかいうスプレーをかけてやる。これも塗料の一種らしい。

「これをかけないとせっかくのペイントが剥がれることがあるんですよ。家でやる場合は、ベランダとかで段ボール箱でカバーしてやれば大丈夫ですよ」
「スプレー塗料はまあ仕方ないよなあ」

 エアブラシのように長時間つかうわけではないし、このプライマーとかいうスプレー塗料も水性らしいので、これくらいは覚悟を決めてやるしかないだろう。せっかくの力作が剥がれてはちょっと悲しい。
 プライマーを塗ったフィギュアが乾いたところで(意外とすぐ乾く)、いよいよペイントのスタートである。基本となる色を塗ってから、影や明るいところを塗り足して行く感じらしい。こんな小さなものを細い筆で塗って行くのだから、けっこう細かい作業である。

「あ、ディレル…その眼鏡…」
「えっ?あ、そういえばコージ達の前では滅多にかけないですよね…」

 ディレルは学生にありがちの近眼なのだが、普段コンタクトレンズなので滅多に眼鏡姿を見かけることはない。ところが今回フィギュアのペイント作業をする場合、なんと眼鏡をかけている。それも普通の眼鏡ではない。鼻のところに引っ掛けているところといい、なんだか老眼鏡にしか見えないのである。
 ところがディレルはあっさりと肯定する。

「あ、そうですよ、これ実は老眼鏡なんです」
「えええっ!?また早すぎるだろ?」
「甘いですよコージ、これあるとないとは大違いですよ」

 ディレルから老眼鏡を渡されたコージは半信半疑でかけてみる。実のところコージ自身は目はいい方だと自認しているので、眼鏡など持っていない。せいぜいスキーと実験用のゴーグルくらいしかかけたことがないのだが…

「それでペイントしてみたらわかりますよ」
「…あっ!」

 言われるままに老眼鏡をかけて筆をとったコージだが、フィギュアをみたとたん驚きの声をあげる。たしかに…よく見えるのである。それも一回り大きくはっきり見える。どうやら老眼鏡は虫眼鏡のようなものらしい。

「これたしかに要る…」
「でしょ?百円ショップのでも十分ですよ」
「見た目があれだけどなあ…」

 機能だけなら百円ショップの老眼鏡でも問題ないのだろうが、目の前のディレルの老眼鏡姿は、ちょっと年寄りっぽすぎる気がする。とはいえわざわざこのために眼鏡屋さんにいって老眼鏡を作ってもらうのも抵抗がある。高い上に老眼でもないのになんに使うのかとか、絶対根掘り葉掘り聞かれて困ることは確実だからである。
 こういう細工物が意外と得意な炎の魔神はというと、さすがに眼鏡をかけないとこまるという様子はない…だろうと思っていたコージだが、魔神が見慣れない丸いものを取り出したのをみてびっくりする。

「みぎて、それって?」
「あ、これ?細工用の拡大鏡だぜ。昔からもってるんだけど便利だぜ」

 魔神から見せられたものは、丸い片眼鏡である。あきらかに時計屋さんとかが付けているものと同じだろう。どうもこういう細かい作業に拡大鏡というのは常識らしい。

「コージもそこの百円ショップで何か買ってきた方がいいですよ」
「…そうする」

 ディレルどころかみぎてにまで出し抜かれた感でショックのコージは、おとなしく百円ショップの老眼鏡を買ってくることにしたのである。

絵 武器鍛冶帽子

*     *     *

 基本となる色を塗り終わると、いよいよ影をつける段階である。と、ここで店長さんはちょっと大きな瓶を取り出す。普通のペイントの瓶は高さ二センチくらいなのだが、今回出てきたペイントの瓶は倍くらいである。

「これはシェイド用の塗料です」
「?どこが違うんだろう」

 蓋を開けてみたコージは、ちょっとびっくりする。今まで使ったいたペイントは、どろどろのペーストみたいなものだったのだが、今回のシェイド用ペイントはあきらかに水みたいに薄いものだったからである。

「こんなに薄くていいの?」
「これでいいんですよ。騙されたと思って塗ってみてください」

 半信半疑のコージだが、言われるままにこの薄いペイントを恐る恐る塗ってみる。薄いので当然見た目あまり変わらない。

「コージ、もっとダイナミックでいいんですよ。全体にじゃぶじゃぶ塗っちゃって」
「ええっ!?」

 ディレルの大胆(と、思える)発言に、コージはちょっとビックリする。じゃぶじゃぶと塗ってしまっては、いくら薄い塗料といっても上塗りしてしまうような気がする。
 とはいうものの、いつも慎重派(やけにならない場合)のディレルが言うのだから、根拠がないとは思えない。これがみぎてなら、絶対その場の勢い発言だと確信できるのだが…この辺は日頃の行いの差である。
 半信半疑ながらも、コージは言われたままに薄い塗料を筆につけて、そのままフィギュアに塗ってみる。

「あ…意外…」
「でしょ?」

 薄い塗料はフィギュア全体に広がるのだが、不思議なことに溝とか、くぼんでいるところに集まる。窪んだ部分はもともと影になるところなので、それが薄い塗料で暗くなって強調されるのだ。今までのっぺりしていたフィギュアは、あれよあれよという間に陰影くっきりの素敵な宇宙戦士に変わる。まるで魔法をみているような気分である。

「コージ!これすげえな!」
「さすがに驚く。すごい」

 たちまち格好よくなったフィギュアに、みぎてもコージも目を丸くして歓声をあげる。

「いいですねー、これだけでもぐっと引き立ちますよね」

 店長さんは陰影のおかげて見映えのよくなった二人のフィギュアを誉めちぎる。お世辞とわかっていても誉められると嬉しくなるものである。それに実際のところ、みぎてのペイントはさすがに細工物が(見かけによらず)得意ということもあって、コージからみてもけっこういけている。陰影をつけるとかなり素敵といってもいい。
 店長さんもこの巨体の魔神がこんなに器用だと知ってビックリである。

「いや驚きました。魔神さんがこんな器用だなんて…」
「あはは、まあ俺さま似合わないとか言われるんだよなあ。自分でも思うけどさ」

 みぎて自身、初のフィギュアペイントにかなり満足のようである。まあ細かく見れば作例のようにはいかない部分もあるのだが、それはそれで個性という気もする。コージも楽しいので、これならもっとやっても良いという気がする。まあペイントはともかく、ゲームの方は家でやるにはちょっと部屋の大きさが厳しいような気がするのだが…
 少し悩んだあと、コージは思いきって切り出す。

「えっと…これって入門セットとかあります?」

 いきなりここに展示されているような大軍団を作るのは無理すぎる。初心者向けのセットとかを買うならありかな、というわけである。
 店長さんは棚にあるやや小振りの箱を取り出す。

「これですね。今日塗ったスペースソルジャーの部隊と、反逆軍団の部隊がセットですよ。あと基本色6色と筆が入ってます。これだけで付属のシナリオも遊べますよ」
「へぇ~、いいなそれ。コージ買おうぜ…値段心配だけど」
「それなりに値段するなあ…」

 値段を見ると七千円くらいなので、ゲームとして考えるとちょっと高い気がする。
 ところが横のディレルは劇押しである。

「これ、ペイントと筆だけで四千円しますよ」
「え?そうなの?」
「ですよ。それに僕もペイントはあるから、うちに塗りに来たらいいですよ。皆で塗るのも楽しいし」

 どうやらペイントとか筆までセットとなると、この値段は妥当らしい。付属のフィギュアを塗るだけで楽しめて、ゲームもできるとなると、考えようによってはかなり安い。それにディレルも一緒に遊べるとなると、ゲーム相手も不足しないことになる。それにコージたちの場合、さらに都合が良い点がある。

「まあそうか。じゃあお願いします。俺とみぎてとでシェア」
「あ、みぎてくんとシェアすれば無駄がないですよね。たしかに…」

 入門セットはそのままで対戦できるように、敵味方の両部隊がついてくる。二人でこれを分ければ、お互いですぐ対戦できる上に、出費は半額ですむのだから言うことない。
 ただし唯一の問題点がある。

「コージ、どっちをとる?」
「あ、それがあった…」

 入門セットにはスペースソルジャーと反乱軍がついている。つまりシェアするとしても、どちらかしか選べない。見た目はやはりスペースソルジャーの方がヒーロー側なので格好良いような気がする。反乱軍は格好いいというより個性的なので、好みが分かれるところである。

「じゃんけんだな、じゃんけん」
「…俺さまじゃんけん弱いんだよな…あ、やっぱり負けた」

 案の定あっさりじゃんけんに負けてしまうみぎてである。
 ということで、コージはスペースソルジャー部隊、魔神は個性豊かな反乱軍をもらうことになったのだが…
 これが予想外のどたばたフィギュアバトルのきっかけになってしまうとは、この時点では誰も予想してはいなかったのは言うまでもない。

(3.「みぎてくん、これで勝負ね」へつづく)

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