見出し画像

「ごくごく」と野菜ジュースを飲んだ

陸上でお茶でおぼれかけて、またすこし心がへこんだ。
病気を経験してわかったのは、わたしは、成長するうちに習得し出来て当たり前になっていたことができないとき、ひどく自尊心を削られるということ。慎重派なので「これができない? ということはこれはできるの? わたし?」と、いちいち自分を疑う。
文字通り自分を信じられない「自信がない」状態に陥る。

それからしばらくしたある日、パックのジュースを飲んだ。外食してもあまり冷たい飲み物を注文しないし、ストローを使う機会がめったにない。
暑くなった日で喉が渇いていた。一気に喉を潤し、甘みにもいやされてほっとした。
そのときふと、「ごくごく」と野菜ジュースを飲んだ自分に気づいた。この感覚は久しぶり!

空気を飲み込んでしまうと苦しいとわかってから、一口、一口、“喉でかみしめる”ように「ごくり。ごくり。」と飲むのが習慣になった。
でも、ストローで吸い込むと口の中に余計な空気が入らず、吸い込んだ飲み物が喉の近くまで運ばれるので、恐れずにどんどん飲めるのだった。

意外と近くに解決策はあるものだ。

ノベルティでもらったものの、使わないのでどうしようかと思っていた金属製のストローセットがあった。ただの水や、わたしの好みのぬるま湯をストローで飲む発想が(なぜか)なかったけれど、使ってみたらやはり調子がよい。
最近は、薬を飲むときのぬるま湯もストローを使うようになっている。

さすがに熱いものをストローで飲むと火傷しそうなのでしない。でも熱い飲み物は一口ずつ味わうので、ごくごく飲まなくてもいい。

そのストローセットにはご丁寧にタピオカドリンク用の太いものもついている。
タピオカドリンクは、喉の放射線治療が終わったとき、痛みで食べる気になれず、でも空腹感があって切なくなる…そんな段階のころ、ちょくちょく飲んでいた。タピオカドリンクが大ブームにはる直前の時期だ。つるつると喉を通ってくれてお腹にたまるから、ありがたい存在だった。

今はもうタピオカドリンクは飲まなくなったけれど。ぬるくしたスープにこのストローが使えるかもしれない。

介護用の吸い飲みも、誤嚥を防ぐ効果があるのかと思う。その立場に立ってみて始めてわかる。人の立場に立つ、“他社の靴を履いてみる”ことって、心がけているようでもなかなかできないことにも思い至る。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?