朝
9時頃にのろのろと起床。その前に何度か目を覚ましても、たいていだるくて起きる気にならなくて、だらだらとベッドで過ごしてしまう。
そのベッドとは、上体を起こし、脚も上げられる2モーターのリクライニングベッド。食道摘出後は体を起こして寝なければならず*、手術の翌年に思い切って購入したもの。入眠時にはだいたい状態を30度くらい上げ、明け方に目が覚めたとき15度程度まで下げることが多い気がする。上体を起こしていると腰に負担がかかるし、その姿勢を保つために肩などにも力が入ってしまうようで、起きたときはたいてい疲れている。朝、一日の始まりに「あぁ、体が痛い…疲れた…」と感じることで、軽く絶望感を味わう。
ベッドから出て、ヨガマットの上へ。テニスボールとストレッチポールでがちがちになった体をほぐし、ストレッチ。
そしてキッチンへ。朝食はだいたい米粉のバナナパンケーキ。喉の放射線治療の直後クッキーなどが一切食べられなくなって***、いい機会だからとグルテンフリーを試してみたところ、小麦粉が体に合っていなかったことを実感。胃腸が弱く、便秘症の一方、よく下痢もしていたのがだいぶ改善されたので、それ以来、小麦粉は少なめ生活を続けている。
つぶしたバナナと米粉、ちょっと片栗粉とベーキングパウダー、卵、水で調整して焼く。バナナや卵である程度栄養がとれているとわかるのが安心感。作りながら、できるだけコップの水を1杯。逆流が怖くて夜はあまり水分がとれないので、脱水を防がなくちゃいけない。でも、実は水もすっと入っていかず、飲みづらい。空気を飲まないように注意深く“がんばって”飲みながら、“前菜”に、ナッツとチーズを少しつまむ****。
朝食を終えたら、処方薬を飲む。「逆流を防ぐ効果を狙っている」と説明を受けた抗生物質と、胃腸の働きを助ける薬。昼食後は胃腸の薬だけ。夕食後は、朝と同じ2種類に、胃酸を強力に抑える薬が加わる。
身支度をして、ジムへ。体力づくりに趣味を兼ねて、病気が見つかる4年くらい前から格闘技ジムに通っている。手術のとき「体重をできるだけ落としてほしくない」と主治医に言われ中断し(OKされたとしても、食べられない期間が長く、体力が相当落ちたので無理だった)、治療後2年ほど経って再開。再開してからも2年くらいになり、だいぶ動ける体力が戻った。とはいえ、50歳という年齢からも基礎体力・筋力との低下とのせめぎ合いを感じる今日この頃…。
昼
ジムから帰ると14時前。リモートワークの夫が作ってくれた遅めの昼食をとる。私たちの定番は、ニョッキ。手軽で好きだったパスタは手術後食べるのが大変になり、食べなくなった*****。その代わりに見つけたのが、じゃがいもが原料のニョッキ。小麦粉のパスタより飲み込みやすく、重すぎず、食べやすい。そして、パスタ好きの夫がいろいろなスパイスなどを入れて作るパスタソースがそのまま使えるので、“パスタ欲”が満たせる。
一口食べて「これ、何が入ってるの…?」と夫に質問******。「ピーマン、にんじん、セロリ、玉ねぎに、タイム、オレガノ、塩コショウ」と聞いて、「セロリとオレガノかな?」と想像して食べ続ける。入っている食材の味をイメージしながら食べ続けたら、味に慣れるうちにおいしくなってきた。
昼食後、パソコンに向かって自由業の仕事をする。病気がわかったときにいったん全部の仕事を断ることになり、クライアントを失った。治療痕は体力が落ちて復帰に時間がかかり、“元気”になってからも、起きたときの倦怠感や食べるときのエネルギーの無駄使いによる体力バランスの変化と、食べることに時間がとられるためのスケジュール立ての難しさにより、仕事量は激減してしまっている。
夜
19時前に仕事をやめて、夕食の準備にとりかかる。お味噌汁(かぼちゃ、玉ねぎ、油揚げ、小松菜、まいたけ)とほうれん草の胡麻和えは前日に作ったつくりおきがあるので、冷凍してある雑穀ごはん(100グラム)と、大豆とひじき入りのサラダ(サニーレタス、水菜、にんじん、トマト)に、ゴーヤーチャンプルー(豚肉、ゴーヤー、卵、豆腐)。
病気前の食生活はいいかげんな部分がかなりあったが、落ちた筋肉を戻したくてたんぱく質を意識。また、量が食べられない分、1品を少なくいろいろ食べて栄養を採ろうと思うようになった。消化器系の治療に年齢的なこともおそらく影響して、こってりしたものを食べると具合が悪くなることがあり、また、和食の味がいちばんわかりやすくごはんが食べやすいため、和定食的な夕食が多くなった。
発がんのリスクであることがはっきりしているアルコールは、怖くて飲まなくなった。
食べていて気づくと1時間はたっぷりかかっている。普通のペースで食べられるようになったように錯覚するが、やはり一般的な人よりかなり遅い。
これだけしっかり食べると苦しくはなくても満腹で、食後は家庭用マッサージャーで背中をほぐして長く休憩。その間に夫が洗い物を担当してくれる。
食後すぐは横になれないし、体勢が変わる入浴も難しいので、食べたものが落ち着くまでドラマを見る。夫が設定していた音量ではよく聞こえないので*******、リモコンで音量を上げてお気に入りの海外ドラマを1話か2話。
満腹感がおさまって、お風呂に入る。寝る姿勢のせいで身体ががちがちになることもあって、病気前よりちゃんと湯船につかることが増えた。
お風呂から上がり、水を2口ほど飲んで、髪を乾かしてベッドへ。また午前1時を過ぎてしまった。朝がだらだらしてしまうから全体的に時間が後ろにずれるし、食べること+食べた後の休憩に時間がかかって遅くなり、結局早く寝られず、体勢のせいで熟睡できないから早起きができない。悪循環だ。明日は早く起きられたらいいな…と思いながら、眠りにつく。