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"友達が家に遊びに来た"の質感が良すぎるRPG――DLC番外編感想【ポケモンSV】

 あけおめです。新年早々、無線イヤホンの片方がぽろっと落ちて、下水道に流れされました。この記事を読んでいる方におかれましては、ちゃんと耳穴にキュッてして日頃から大切にしてあげてください。どれだけ悔いても一緒にいたあの日々に戻ることはできないから……(この記事は残った片方を付けながら書いてます)

(えっ、あ、あたしの家に……?///)

 そんな憂鬱な気分を吹き飛ばす冒険が幕を開ける。ということで、『ポケットモンスター スカーレット/バイオレット』DLC番外編をプレイしました。後編配信開始からわずか数日後、Pokémon Presentsを待たずして突如発表された番外編告知PV。そこに映っていたのは、本編で共に冒険を繰り広げた三人と一緒にキタカミ地方を訪れる様子、「ともっこ」の謎に関する掘り下げを示唆する意味深なカット。おいおいサプライズが過ぎるだろ❗❗ 年が明ける前から期待に胸を膨らませていました。

 以下、ネタバレありの感想です。今回はサクッと。初っ端から「仲の良い男の子が家に遊びに来る」というシチュに乙女ゲーの波動を感じるなどしていましたが、実際、冒頭は「初めて友達が家に遊びに来る」の独特な空気感がとても印象的でした。そもそもあの三人がどうやって再集合するんだ?🤔 とは思っていたんですが、

「くれぐれも はいねこの
ご家族に 迷惑かけんなよ!」

 いやーーーーマジで解釈一致。ちょっとソワソワしながら家に遊びに来ようとするペパー。そこにグイグイと押しかけてくるボタンとネモ。そしていざ家を訪れると、ペパーは「とにかく粗相がないように」と隅々まで気を遣う。ボタンは気になったゲームをやり込んだりしてだらっと過ごしてそうな趣がある。ネモは相変わらずの元気っぷりだけど、客人としての作法を心得ている節があって、育ちの良さが窺えますね。

友達ん家に置いてある漫画やゲームでワイワイやってたあの頃。思い出すなあ……

 友達のお母さんに挨拶したり気を遣ったりしつつも、部屋にお招きするといつも通りで、だらだらと暇潰しをするこの感じ。子どもの頃、友達ん家に遊びに行った時の空気そのまんまですよこれSV本編の大波乱が無事に収束した後の何気ない「日常」を覗き見ているようで、めちゃくちゃ良い。シャニマスのコミュみたいな解像度だ。ある時はずっと探していたライバルを見つけ、ある時はずっと離れ離れだった親の心情を知り、またある時はみんなの居場所を守るために独りで戦い続けていた。そんな過去を踏まえればこそ、こうしてごく普通に友情を育んでいる様が美しい。

 そして、ただ日常を過ごしているだけではなく、少しずつ成長している様子も垣間見れる。この点について印象的だったのはペパーとスグリの関係性。特にペパーには驚かされましたね。というのも――

スグリからの手紙が届くと、気にする素振りを見せる。
スグリに会いに行こうとすると突っかかる。
いざスグリと対面するとこの台詞。直後にボタンから「マウントとんなし」とツッコミ。

 …………めっっっちゃドキドキしちゃった。かなりヤキモチ焼いてくれるじゃん。マウント取るじゃん。プレイしている最中は「ペ、ペパーくん、あたしのことそんなに思ってくれてるんだ……(ドキドキ)」「やめて! あたしのために争わないで! もぉ~!///」と気持ち悪いくらいニヤニヤしてました。いかんいかん、悪い噂を流される前に傷心度下げて爆弾解除しなきゃ……❗💦

 でも冷静になって振り返ると、ペパーがスグリに対抗意識を燃やしたのは、これまでの境遇や家庭環境が遠因になっていそうですね。たとえるなら、弟が生まれて、両親がそちらの育児に付きっ切りになると、それまでずっと愛情を注がれていた長男が嫉妬してしまった状態でしょうか。それこそ、ペパーは友達を家に招くなんてことには縁がなかっだろうし、家に遊び行く言葉だけでも妙にソワソワしているあたり、「友達と普通に遊ぶ」という行為に慣れていなさそう。そんな時、大切な友達に、手紙を送ってくれるほどの存在がいることを知る。「誰かの大切な存在でありたい」「見放されたくない」――そんな思いに駆られての行動だとすれば、察するに余りある。

 どこかで道を誤れば、ネモやボタンにも同じ感情を向けかねない。これまで築き上げた友情を自分自身の手で壊してしまいかねない……と、これはまさに、鬼さまへの愛が捻じ曲がり、強さにこだわるあまり、周囲の人間を傷つけてしまったスグリと重なる言動か。根が深い問題だ。

 煩悩だけで考えてた私最悪すぎないか? ほんとすんません……

凛々しい表情をするようになりましたね。部屋の説明文が「がんばった跡が たくさん」なのほんとすき。

 そんなペパーの葛藤に対するアンサーとなるのは、やはりスグリ。DLC前編では表立って活躍できなかったり、後編ではリーグ部を崩壊寸前まで追い込んでしまった彼ですが、今回の番外編では、ゼイユを始めとした村人たちの洗脳を解くために駆け回ったり、ポケモンを繰り出して食い止めたりと、頼りがいのある人物に。かつては姉ゼイユに頼りきりだったスグリが、逆に今回は彼女を助け、(過程は最悪だったものの)強くなったその腕前で活躍する。今までは悪い方向にばかり働いていた「強さを追い求める姿勢」が良い方向へ。これは後編を踏まえての成長を実感できて非常に良かったです。

あまりにも純粋悪の存在で「えぇ……(ドン引き)」ってなった。「ククク……人間に悪の心が芽生える限り、我は何度でも復活する……」って言葉を残すタイプのラスボスじゃん。

 「誰かにとって一番大切な存在でありたい」という思い。欲望。それに駆られて暴走してしまう、という点でスグリとペパーの行動は共通している。これもうキタカミの地が呪われてるだろ❗❓ともっこを操っていたであろうモモワロウというポケモンも、その本来の力は「欲望と能力を"引き出す"」というもの。いわんや、誰にでも心の中には潜在的に欲望が宿っており、それがいつ・いかなる形で表出するかはわからない。元ネタであろう『桃太郎』の物語は、鬼ヶ島の財宝を村人たちに分け与えてハッピーエンドを迎えるが――たとえば桃太郎が最初から財宝の独り占めを目的にしていたら。我欲のためだけに善良な動物を家来にし、鬼を殺めるだけの悪人でしかない。

テラパゴスを無理やり捕まえようとして、最終的には主人公に委ねたスグリと重なる台詞ですね。

 最終的にペパーは自分の行動を自省して、仲間との友情を大切にする。光と影――前編・後編含めて、「宝探し」を暗い側面から光を当てた本DLCは、SV本編を補完するアフターストーリとして完成度が高く、驚きと感動に満ちていました。「休学後のスグリはどうしているのか」「スグリとゼイユがあの三人に出会ったらどんな化学反応が起きるのか」「ともっこにはやはり黒幕の存在がいたのか」といった、PV時点で期待していたものはしっかりと見届けることができたので、短いボリュームながら大満足の内容でした。

相変わらずおもしれー女

 ……惜しむらくは、どうしても寂しくなっちゃうことですかねー。片田舎で次々と起こる惨劇がいかにも怪奇小説的でゾクゾクさせられつつも、ちゃんと笑いあり涙ありのの夏休みの痛快な冒険劇って感じで。あの三人にまた出会えた最初の場面では思わず涙ぐんじゃったし、だからこそ「これで本当に終わっちゃうんだな……」という一抹の寂しさもまたあります。改めてやっぱり大好きだ。ポケモンSVが。そして、そこで出会えたみんなが。

 あわよくば洗脳前のともっこに戻すための道具とか出ないかな、Pokémon Presentsで番外編2の発表あったりしないかな、なんて「欲望」を抱きつつ、ひとまずはこの「宝探し」の物語に思いを馳せて締めたいと思います。今年ものんびりとnote記事を書いていきますので、よろしくお願いします。それではまたどこかで。


<2024/1/26追記>

 見ました。ゴーストポケモンのかわいいところ、怖いところ、悲しいところ、全部出てますね。本当に恐ろしいのは、ラスボスだとか何とか言って決めつけてた私じゃねーか❗❗ 反省します……

<ポケモンSV・DLC感想記事>