記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

死は近く、希望は遠く——最終編2章・感想【ブルーアーカイブ】

・狼——鋭い眼光、爪、牙を持つ獰猛な獣。一見すると悪や死の象徴のように思えるが、必ずしも一義的に描かれるわけではない。ローマを建国したロームルスとレムスは、幼少期にテヴェレ川に捨てられたが、雌狼に拾われて育てられた。そんな伝説が残されている。狼とは、自然の脅威を跳ね除ける守護者として、そして、子に乳を吸わせて育てる母として描かれることもあるのだ。

「しっかり掴まってて。」

・振り返ってみると、砂"狼"シロコにもその雌狼と同じ側面があった。対策委員会編において、先生をおんぶして助け出したのは、さながら、膝を擦りむいた我が子を家まで送る母だ。銀行強盗を提案したのも、仲間を守りたいという優しさがあってこそ。そうか……シロコはママだったんだ……おんぎゃあ!!

「ふ、ふざけないでよ!この変態教師!」

・……失礼しました。発作が。でもやっぱり狼って死の象徴でもあるんすよね。北欧神話において、世界に終末をもたらすのは狼。ラグナロク(神々の黄昏)において、巨狼フェンリルは主神オーディンを飲み込む。そして、スコルとハティという二匹の狼が、太陽と月を飲み込むことで、世界は終末を迎える。前置きが長くなりましたが、つまり私が言いたいのは——

黒服:
「色彩」が到来し——狼の神がソレと接触したのです。
恐怖(terror)の領域へと反転した彼女は、命ある全てのものを、あの世へと導く死の神「アヌビス」となり——
自身の本質が赴くままに——この世界に終焉をもたらすことでしょう。

・「狼」が恐怖の領域に反転すると「死」。その理屈は、狼の二面性を鑑みると、確かに筋が通っている。アヌビスというのは、エジプト神話における冥界の神で、狼の頭を持っている。

・そして、狼の二面性を表しているだけではなく、何というかこう……根源的な話であるように思える。光と闇は表裏一体。光は世界をあまねく照らすが、その輝きが増すほどに影は濃くなる。闇は人々に恐怖を与えるが、時には光より安らぎをもたらす。万物には両義性がある。そんな話だ。私達が享受している「平和」な日常も、裏を返せば「停滞」。しかし、ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。世は無常。いつまでも同じ状態が続くはずがない。

「アビドスの生徒会長……その遺体を発見したのは、小鳥遊ホシノだった。すごく、ものすごく大切な人だったはずなのに……。」(エデン条約編3章19話)

そう、私達は忘れていた。否、忘れようとしていただけだ。人は死ぬ運命にあることを。明日死ぬかもしれない存在であることを。平穏な日常が突如崩壊し、裏の顔を覗かせるという形で死の神・アヌビスが現れる。これは決して特異な出来事ではない。世界は元より「死」に満ちている。私達が平和を築くために尽力し、「死」を遠ざけようとするほどに、それが入り込んできた時の動揺は凄まじいものとなる——しかし、だからこそ、「死」は時として、「生」よりも人間の可能性に目を見開かせてくれる。

 自分を脅かすものを少しでも解き明かしたいと思うならば、人間は、そのものをまず支配しなくてはならない。私はそう考えている。これはなにも、恐怖すべき理由がもはやないような世界、エロティシズムと死が一つの機械の連続装置のようにある世界を人間が期待すべきだということではない。そうではなく、人間は人間を恐怖させるものを乗り越えることができる、人間は人間を恐怖させるものを真正面から見据えることができる、ということなのだ。
 そのようにしてはじめて人間は、今日まで人間というものを規定してきた”人間に対する奇妙な無理解”を脱するようになる。

「エロティシズム」p.9-10
ジョルジュ・バタイユ 酒井健訳

・目眩と吐き気を催す不安に襲われながらも、私達は遥か遠くに地平線を見る。その無限にも等しい距離に対して、人間の一歩はあまりにも小さい。それでも、大切な人の「死」を間近で見た少女は、大地を踏みしめ、みんなを守る盾になることを選び——

・新たな絆を紡いだ。きっと私達は、そうして前に進むことができる。空が緋色に染まる今この時にも。最終編2章「虚妄のサンクトゥム攻略戦」の初見感想をお届けします。

<前回の記事はこちら>


ゲマトリア、色彩の嚮導者

「——ゲマトリアは壊滅しました。」

・黒服……スーツまでボロボロになっちまって……😭

・こんな姿になってもなお、先生の元に駆けつけて、状況を説明してくれました。大人のカードを使おうとすると「乱用すれば私達と同じ結末を迎えることになりますよ」と忠告。先生の身を案じているかのような行動だ。仮にそうだとしても、あわよくば先生をゲマトリアに引き入れたい、という打算的な動機が前提としてありそうだけど。先生に対して愛憎入り混じった感情を抱いているのかしら……うわーいいなこの"関係"。刺さるわ。全部私の妄想ですが。

・黒服による状況説明。「色彩」はキヴォトスに到来すると、真っ先にシロコに接触し、死の神アヌビスに反転させた。すぐさまゲマトリアを襲撃。彼らが所持している「秘儀」と「検証結果」を奪った。かの存在が現在手にしているのは——

①デカグラマトンのパス
②複製(ミメシス)の秘儀
③聖徒の交わり(Communio Sanctorum)
④ライブラリー・オブ・ロア
⑤名もなき神の力
⑥無名の守護者の能力

・……うーん? これってどのくらいヤバいの?🤔 ってなったので、わかる範囲でまとめてみます。メインシナリオ以外はちょいちょい読んでる程度。

「彼の者はまた、己の神命を予言する10人の預言者と接触し
神聖な道である「パス(Path)」を拓きました。」

・①デカグラマトンのパス。「総力戦:ビナー」から重要な部分だけ抜粋すると……デカグラマトンは、神という存在に関する情報を収集、分析、研究し、それを証明するために開発されたAI。対・絶対者自律型分析システム。その研究が人々から忘れ去られる程の長き歳月の果てに、Q.E.D.(証明終了)を宣言。でも他者から見ると「ほんまかいな……」って感じ。「銀河ヒッチハイク・ガイド」でいうところのディープ・ソートですね。現在は人間の手元を離れて稼働中。

・デカグラマトン自身も中々やべーやつのようですが、加えて厄介なのは、この子を信奉する10人の預言者。たとえばケセド(慈悲)は、軍需工場の生産システムを乗っ取って殺戮兵器を量産する、なんてことをやってのける。

・デカグラマトンの"パス"は、「セフィロトの樹」における、10のセフィラを結ぶ22の小道のことかな。あくまでもゲマトリアの検証結果を奪った形だから、全部を掌握したわけではなさそうだ(と思いたい)けど……預言者をいくつか使えるようになっただけでも相当ヤバいのは間違いない。

②複製(ミメシス)の秘儀。これはエデン条約編でユスティナ聖徒会を複製して顕現させたやつか。こいつらがうじゃうじゃ出てきただけで、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園は苦戦を強いられたもんな。キヴォトス屈指の軍事力を持つあの2校が。あいつらがまた出てくるのかな。ヤバいに決まってるわな。

マエストロ:
私たち(ゲマトリア)が作り出した、人工の天使にして、神性の怪物。
紹介しよう。こちらが「聖徒の交わり(Communio Sanctorum)」を率いる、受肉せし教義……。
その太古の教義に関わる名を借りて、私たちは「ヒエロニム」と呼んでいる。

「総力戦:ヒエロニムス」より

③聖徒の交わり(Communio Sanctorum)。人工天使達のことらしい。わからん。ちなみに、それらを率いているのはヒエロニムス——

う゛っ゛!゛!゛!゛!゛

あーヤバいですね。マジでヤバい。また詰んじゃう。レベリングしなきゃ……

・④ライブラリー・オブ・ロア。これは聞き覚えがないな……と思って検索してみたら、でっかいペロロジラの画像が出てきました。何これヤバすぎでしょ!? だってあんなこわ——

・……かわいいぬいぐるみが巨大化しちゃったらさ、みんな戦意喪失しちゃうよね。うん。いやあ強敵だなあ。

「アレは太古の昔、まだこの世界に記録が残されるよりも前——当時存在していた原始的な神秘——「名もなき神」が築き上げた技術の一つ。」

・⑤名もなき神の力。これはさっそく実害が出ている。サンクトゥムタワー——名もなき神が築き上げた技術。「色彩」はこれを反転させた。こうしてキヴォトス各地に出現した6つの塔から、「色彩」の光を世界中に伝播させることで、全ての神秘を恐怖へと反転させる。もしこれが完遂されたら、みんなシロコみたいになっちゃうわけだ……ヤバいヤバいヤバい! 今すぐ止めないと!

・⑥無名の守護者の能力。無名の守護者ってのは、あの奇妙な機械群のことかな(実際には機械群そのものではなく、もっと概念的なものを表している?)。アリスを目覚めさせる直前まで苦戦させられてましたからね。漏れなくヤバい。

結論……全部ヤバい❗❗ 今までに登場した敵の能力をラスボスが全部吸収してる展開ですねっ💦 いかがでしたか❓ ……でも、さすがにどれもこれも無制限に使えるってわけではないだろうし、いくつかは会敵したことのある相手だから弱点はわかる。勝機はあるはずだ。

・ここまで挙げた諸々のうち、いくつかは総力戦や「特殊作戦デカグラマトン編」などで掘り下げられているらしい。いずれそっちも履修しなきゃな。まずは手探りの状態で通読してみます。

・それにしても……ゲマトリア、さすがに同情するな。だってさ、手段は褒められたもんじゃないけど、こいつらはこいつらなりに真理を探究してたんですよ。それなのに、ぜーんぶ横取りされちゃって、世界に終焉をもたらす道具として利用されてしまうなんて。終焉に備えるための要塞都市エリドゥが、危うく終焉をもたらしかけたリオと重なるものがある。この戦いが終わったら一杯奢らせてくれ。

・黒服曰く、ここまでの行動を鑑みると、「色彩」には明確な「意志」「計画性」がある。到来ではなく「侵略」。たとえるなら……地球に飛来した隕石が未知の病原菌を持っていて、パンデミックを引き起こしたら。これはもうしゃーない。天災だ。しかし、地球外生命体が真っ先に主要都市を制圧し、そこを拠点に版図を拡大し始めたら。これは明らかに計画的な侵略行為。「色彩」の動きは後者だ。

「——その名を「プレナパテス」。これから、ヤツと対面する事となるでしょう。」

・「色彩」の意志を代弁し、計画を遂行する実行者は「色彩の嚮導者」。名をプレナパテス。シロコが1章で出くわしたやつ。てっきりカイザーが発掘したオーパーツかなと思ってたけど、前後の文脈を考えればそりゃ「色彩」に関連したやつか。嚮導者=指導者、先頭に立つ者。言われてみれば教祖様って感じの見た目だ。で、キヴォトスのありとあらゆる神秘と恐怖、そして崇高の概念を吸収し、自らのものにしようとしている。

マエストロ:
「神秘」、そして「恐怖」。これらの本質は同じだが、私たちは「崇高」の形として、その二つの内の一面しか観測することができない。
(中略)
私たちが近づくことができたのは「恐怖」だけであり、その上それは複製(ミメシス)されたものに過ぎない。

「総力戦:ヒエロニムス」より

・吸収ってのが具体的にどういうものなのか、どんな理屈と手段があるのかはまだよくわからんけど……ふむふむ、少しずつ核心に迫っていくの気持ちいいな。ワクワクしてきたわ——って浮かれてる場合じゃねえ! キヴォトス滅亡の危機やぞ!

・まずは情報収集。そして、それに基づいた対策を講じる必要がある。先生は作戦会議を開くために、各学園の頭脳担当を務める生徒達をシャーレに召集する。おや、さっそく誰か来たようだ——

一番乗りか……まあ、いいけど。」

カヨコ、俺達結婚しよう。


作戦会議

「結論から申し上げますと、あの塔を2週間以内に破壊しなくてはなりません。」

・第一声がこれ。結論が先。具体的な目標と納期(?)の設定。なんかもう感動しちゃったな。この一言だけで、リンちゃんがいかに仕事ができるかわかる。

・あと席順がいいですね。アヤネは(みなさんに遅れを取らないように頑張らないとっ💦 )って気持ちで、最前席でメモ取ってる。連邦生徒会に噛みつきがちなユウカ、控え目なカヨコが後方。そのカヨコと何やら因縁がありそうなアコが隣。残る席を占めるのは、エデン条約編において様々な思惑が渦巻くトリニティを取りまとめたハナコ。結果としてハナコとアコが並んだわけですが、こうして見るとアコの方がデカいんだ、というかカヨコが群を抜いて薄すぎるな……っていかんいかん。集中集中!

・エンジニア部の解析によると、キヴォトスに出現した6つの塔(「虚妄のサンクトゥム」と命名)は、人間の精神を錯乱させる信号を伝播している。臨界点に達するのは約3000時間後。なるほど、「色彩」の光は神秘を恐怖に反転させるうんぬんを、現代の感覚に即して翻訳すればそうなるのか。古代文明や超常現象を現代の科学技術で解明する流れ、ロマンありますね。

・6つのサンクトゥムには、前述したデカグラマトンの預言者やヒエロニムスが守護者として君臨。残された時間は少ない。5つのサンクトゥムを各個撃破した後、最もエネルギー量のあるD.U.のサンクトゥムに全員で挑む、連合作戦を実施することに。

・「戦術の本質 完全版」によると、「統合作戦の原則(principles of joint operations)」の一つに「集中(Mass)」がある。曰く、「戦闘力の効力を決定的な時間と場所に集中せよ」。戦闘力は有限。ゆえに短期間で決定的な効力が発揮できる場所に、一体化された統合部隊を同時に行動させることが望ましい。これを踏まえて見てみると——各学園の動きをシャーレで一体化し、各サンクトゥムを目標地点として定め、統合部隊を各地に同時展開した後、最終的に戦力を1箇所に集中して雌雄を決する、という流れはまさにこの原則に即している。さすがは各学園の頭脳が結集した会議。短時間で最適解を導き出している。

・各自治区の治安維持や避難誘導は、トリニティおよび各自治区に一任。あとは……すでに「色彩」に触れた者を元に戻す方法も探さなきゃ。シロコがああなっちまってるもんな。

「「クズノハ」は……都市伝説のような生徒でして〜
百鬼夜行の一部の生徒が、会ったことがあると口にするものの、実態がないのですね。」

・セイアが夢で接触したクズノハなら何か知ってそうだが、そもそも都市伝説レベルの人物らしい。頼みの綱は百花繚乱紛争調停委員会。でも委員長と副委員長は行方不明……ああんもう、こんな時に! 忍術研究部に捜索を依頼しました。

・さて、話はまとまったな。さっそく作戦準備に取りかかろう。よしアロナ、「パシフィック・リム」のメインテーマを爆音で流してくれ。気合入れて行くぞオラァ!!


第1〜第3サンクトゥム

・守護者へ挑む前に、まずは作戦準備&各自地区の防衛。激アツ展開の連続。ダイジェストでお送りします。

「ええ。一番危険なポジションは、私たちに任せてちょうだい。それがハードボイルドというものだもの。」

・第1サンクトゥム。アビドス砂漠。3番目の預言者ビナー。便利屋68とアビドス対策委員会が再び手を取る。便利屋68が列車でビナーを所定の位置に引き付けた後、アビドスと囲んで挟撃する作戦。

「それに——あの列車こそが、アビドスの衰退に拍車をかけたきっかけですし……それが、世界を救うお役に立てるなら……」

・……対策委員会編3章が楽しみ(怖い)ですねえ!

「ははっ!結構やるじゃねーか!お前、気に入った!」

・第2サンクトゥム。ミレニアム郊外の「廃墟」。6番目の預言者ケセド。C&Cと正義実現委員会。ネル先輩とツルギ!!!! 背中を預け合う構図があまりにも良! FRONT&STRIKER&貫通属性&低コストEXスキル! ネルは屋外S、ツルギは屋内Sなのであちこちで暴れ回れるぞ! ぶちかませ!👊

「じゃんけんして!今すぐ!」

・喧嘩してたのでオカンが仲裁しました。

・第3サンクトゥム。ご覧ください、でっけえ武器を担いだちっちゃい女の子コンビ。私の娘と孫です。頑張ってるわね😊

・D.U.近郊の廃墟化した遊園地。複製されたアミューズドール・シロ&クロ(総力戦を読むと詳しくわかるらしい)。ゲーム開発部、RABBIT小隊、ゲヘナ学園風紀委員長ヒナ。ゲーム開発部が妹、RABBIT小隊がお姉ちゃん感あって微笑ましい。

「だ、第3サンクトゥム、作戦担当……は、花岡ユズ、です……」

・頑張れユズ!!!! キヴォトス屈指の戦闘技術を持つヒナ達を前にして肩身狭いだろうけど……アビ・エシュフを突破できたのはユズの閃きがあったからこそだよ!!!!


第4~5サンクトゥム——聖園ミカの祈り、歌住サクラコの覚悟

・第4サンクトゥム——の前にトリニティ自治区防衛について。コハルは避難誘導に従事していたが、窮地に陥る。そこに駆けつけたのは——

「コハルちゃんがここに居るって聞いて、ダッシュで来ちゃった⭐︎」

なんと聖園ミカ。コハルの状況を聞いて我先にと動いた。そんなに関係深かったっけ……?🤔 と思ったけど、そうか、ミカを最初に救った生徒はコハルだったな。パテル派にボコボコされていたところを「いじめはダメっ!」と割って入った。ミカが先生に「どうしてこうなったのかな……」と心情を吐露したのはその後だ。そう考えると、ミカにとってコハルが思い入れの深い人物になることはうなずける。境遇も似ている気がする。二人ともずっと他者に引け目を感じていた。ミカも何だかんだ引っ込み思案なところがある。無意識にコハルに自分を重ねているのだろうか。

・……えっ? 戦闘でミカ使っていいんですか!? やったあ!! ブルアカ始めたてで引けなかったから嬉しいな! 噂には聞いてるけど、どのくらい強いんだろう——

いや強すぎ。

「あなた達のために……祈るね」

美しすぎ……

・EXスキル名は「Kyrie Eleison」か。「Kyrie eleison(キリエ)なんて、名前も気に入らない。どうして見えもしない存在に縋らなきゃいけないの? 「憐れみたまえ」だなんて口にしたところで悲惨なだけじゃん。そんなの自分にも、他人にもするものじゃないよ。」——そう語っていたミカは、今やこれが代名詞になったのか。世界中が自分を苛む敵と化したあの地獄から、先生やコハルによって救われたからこそ、今度は自分が、誰かのために強く祈る立場になった——そんな変化が垣間見れる一幕だ。コハルを助けるのは、単なる恩返し以上に意味がある、自分のアイデンティティを形作る情念に突き動かされたからこその行動だったのだろう。理性による計算ではなく、ただひたすらに直情的。何ともミカらしい。相変わらずちょっと危なっかしいけど。

・ミカを裏切り者や魔女と呼ぶ生徒は、未だに絶えない。それでも彼女は前に歩み続けることを選んだ。贖罪という消極的な理由ではなく、誰かのために祈るという積極的な理由を見出しているのは嬉しいですね。……立派な背中になったね。ありがとうミカ。先生も祈るね。ミカのために。

・さて、第4サンクトゥム。ゲヘナとトリニティの境界付近(?)にあるカタコンベ。ヒエロニムス。トリニティのシスターフッドと救護騎士団。秘密主義的集団だったシスターフッドが協力的になってくれたのは嬉しい。

「私たちの事は、あまり信用できないだろうが……それでも——」

・アリウススクワッドが援護のために駆けつけてくれました。ベアトリーチェによる教育(洗脳)があったとはいえ、エデン条約にまつわる事件を起こした張本人だ。信用できないのが人情。しかし、先生の要請で来てくれたのなら断らないとハナコ。そして「私たちには、共通の大切な友人がいますから」と。これは言わぬが花か。あの子、本当に架け橋になれたんだなって実感できますね。

・……あれ? そういえばシスターフッドのトップであるサクラコはどこに……あっいたいた! おーい!







・……語らねばならない。歌住サクラコの覚悟について。そもそも、なぜ修道士は猥雑なものを忌避し、清貧な生活を営むのか? それは人間が、生き生きとした力の濫用としての自然を、無化の狂躁(オルギア)としての自然を拒絶するからだ。人間が常日頃からあらゆる欲求に動物的に従うようになってしまえば、それは自然がもたらす無尽蔵の脅威や無秩序と相違ない。ゆえに人類は、労働と禁止によって、理性による秩序を築き上げることを選択した。人前で裸になることを禁じるのも同様の理由からだ。その究極の形が修道士の生活である。かの集団は戒律を重んじ、勤勉さを美徳とする。

度はずれに荒れ狂う暴力を前にして、唯一存続できたのは非理性的な嫌悪、恐怖心だけだったのだ。これこそタブー〔禁忌〕の本質なのである。タブーは、冷静さと理性の世界を可能にするのだが、しかしタブー自身、大本では恐怖の震えなのだ。

「エロティシズム」p.102
ジョルジュ・バタイユ 酒井健訳

タブーの本質にあるのは恐怖心。ユスティナ聖徒会はその真理を悟っていたのだ。ゆえに、このような破廉恥な衣装を礼装として残すことで、啓示を与えた——「禁忌を侵犯せよ。恐怖心と向き合え」と。我々は戒律を重んじる。その根源にある恐怖心に真正面から向き合ってこそ、自分という存在を真に理解し、信徒としての使命に目を見開くことができるのだと。そう、冒頭でも引用した通り——「人間は人間を恐怖させるものを真正面から見据えることができる。そのようにしてはじめて人間は、今日まで人間というものを規定してきた”人間に対する奇妙な無理解”を脱するようになる」。

裸体のほかに半裸体の奇妙さも語っておこう。この場合、衣服は肉体の無秩序を強調するばかりなのだ。肉体はそのおかげで裸体のときよりもっと無秩序化しているのであり、もっと裸になっているのである。

「エロティシズム」p.288-289
ジョルジュ・バタイユ 酒井健訳

・かの礼装は、全裸より肉体の無秩序を強調する(=全裸よりえっちである)。サクラコは、この礼装を着用する自分を想像した時、とてつもない羞恥心に襲われたことだろう。お尻が晒されてしまうことに抵抗を覚えただろう。敬虔な信徒であるほどにその動揺は凄まじいものとなる。

・しかし、シスターフッドのトップとして、ユスティナ聖徒会によるこの試練に挑戦した。そう、彼女は選んだのである。無秩序への恐怖心に正面から向き合うことで、己の力を最大限に発揮し、混乱に陥ったキヴォトスに秩序をもたらすことを。

「……参ります。」

・感服した。何たる覚悟の強さか。秘密主義からの転身もしかり、歌住サクラコの活躍はキヴォトスの歴史に名を残すべき偉業である。このお尻丸出しの勇姿を写真に収め、キヴォトスにあまねく伝え広め、子々孫々まで語り継ぐことが我々の義務だ。この戦いが終わったらさっそく、クロノススクールの報道部を招き、この歴史的快挙を宣伝する会見を開こう。

・……まあ全部私の妄想ですが。「エロティシズムとは、死におけるまで生を称えることだと言える」——哲学者ジョルジュ・バタイユの言葉だ。死の神アヌビスと、ユスティナ聖徒会の礼装。一見すると別々に描かれたエピソードであり、後者はギャグ描写のように思えるが、実はどちらも一貫したテーマの下に描かれている……のかもしれない。だからお前ら笑うなっ! サクラコはみんなにお尻を見られながら、過酷なヒエロニムス戦してんだよ!

・なおサクラコの礼装について、スクワッドはノーリアクション。(何だかよくわからない話をしている)という感覚だったんだろうか。アリウスの水着イベント、お待ちしております。

・第5サンクトゥム。ご覧のありさまです。

・この他にも、レッドウィンター連邦学園、山海経高級中学校など、メインシナリオでは姿がなかった生徒達も登場。メインシナリオ以外ほとんど読まずにここまで辿り着いちゃったけど、むしろ正解だったかもしれない。全部読んでたら、私のサンクトゥムが臨界点に達しちゃってたよ(?)


虚妄のサンクトゥム攻略戦

・各サンクトゥムの守護者を討伐する「虚妄のサンクトゥム攻略戦」、ついに始動。第1~第5サンクトゥムの守護者を討伐すると、紆余曲折を経て第6サンクトゥムの守護者が出現。

・しかし、最終的に戦力を1点に集中する、という戦術は敵も同じであった。第6サンクトゥムの守護者は、各サンクトゥムのエネルギーの残滓を吸い上げていていき——

超巨大ペロロジラと化した。高層ビルに並ぶサイズ。並大抵の重火器では到底太刀打ちできない。

・と、そこで動いたのは自称超天才病弱美少女ハッカーことヒマリ。秘密兵器が完成。サンクトゥムのエネルギーを利用することで、物質を"3分間だけ巨大化"できるとのことなるほど。聞き馴染みのある展開だな。つまり——


巨大怪獣には❗❗❗❗
巨大ロボをぶつけんだよ❗❗❗❗


俺「いっけー❗ カイテンジャー❗👊」
俺「ペロロジラなんかやっつけちゃえー❗」
俺「かっこいいー❗」


俺「大変❗ カイテンジャーがピンチよ❗ みんな応援して❗」


俺「がんばれー❗」
俺「負けるなー❗」
俺「ぼくたちがついてるよ……❗😭」


俺「「「うおおおおおお❗❗❗」」」


俺「…………………………いや、何これ???」


思いがけない出会い

「空が……」

・とりあえず空が元に戻ったのでヨシ これにて「虚妄のサンクトゥム攻略戦」は完了。直後、現れたのは——

「あれは……シロコ?」

・……ずっと引っかかっていたことがある。色彩には明確な「意志」が感じられる、黒服がそう語っていた。つまり、相手は思想を持つ存在であり、対話ができる存在。その可能性が捨てきれない。恐怖をもたらすものを真正面から見据えてこそ、初めて可能性に目を見開くことができるというのなら。「戦う」以外の選択肢も考慮しなければならない。私達は盲目的にそれを選んでいるに過ぎないのかもしれないのだから。

・シロコはキヴォトスに来る前の記憶が無いのだという。今のこの姿は、それと何か関係しているのだろうか。「反転」から戻せるのか。そもそも戻す必要はあるのか、それ以外の選択肢はあり得るのか。考えなければならないことは山ほどある。

・みんなお疲れ様。まだ戦いは続くはずだ。少し休んでて。ここからは——

「先生」の時間だ。


完走した感想

激アツ展開の連続。マジで最高。

・どシリアスな展開になることを覚悟していたのですが、蓋を開けてみればコメディが多かったので驚かされました。ペロロジラ戦なんか演出凝り過ぎてて笑うしかなかった。でもそれがまたいいんですよね。サクラコのお尻しかり、KAITEN FX Mk.∞しかり、根底にあるのは恐怖に立ち向かって前に進み続ける姿であり、虐げられた者達が叛逆へ転じるカタルシスだ。こんな過酷な運命の中でさえ、少女達は痛快な喜劇を築くことができる。その姿はやはり人間の可能性というものを強く感じさせてくれる。最終編の名を冠するにふさわしい、凄まじい熱量を持った群像劇でした。

・……いやちょっと本当にサクラコのこと気になってきたな。宗教絡みのお話が好きなオタクだから余計にさ。どんな絆トークなんだろ。ピックアップ募集逃しちゃったから、お祈りするしかないか。

毛量えぐっ

・マコトもよかったなあ。やっぱギャグ世界の住民ってこういう時に頼りになりますね。あとはチェリノ書記長も……と、挙げればキリがないので、名残惜しいですが本記事では端折ります。みんなも自分だけの「ここすき」に思いを馳せよう!

・いやはや、こんなすげえもん読んじゃったからには続きに期待が高まりばかりだ……と言いたいところですが。でもなあ、まだ2章だもんな。思い出してみてくださいよ、エデン条約編3章を。いきなり巡航ミサイルぶち込まれましたからね。何なら4thPVを見ちゃってますからね。こえーよ。ここからどうやったらあれに繋がるんだよ。プロローグの「……私のミスでした。」にどう繋がるんだよ。なんもわからん……苦しい……助けてくれ……

・そう、私達はまだ敵の攻撃を退けただけだ。勝利の余韻に浸る暇はない。素早く攻勢に転じなければ勝利は掴めない。希望への道は遥か遠いのだ。各生徒、一層奮励努力せよ。終わったらみんなでスイーツビュッフェに行こう。それではまたどこかで。

<ブルアカ関連記事>