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地域におけるイノベーション創出の取組について思うこと。

長いです。日ごろのグチも含めて。

まず「地域でイノベーションを起こします」と聞いて、どんな言葉が浮かぶだろうか。
アイデアソンやハッカソン等の「共創」をテーマとした取組や、イノベーションを語るためのセミナーイベント、中小企業の新事業創出等、色んなテーマが思い浮かぶかもしれない。

今では、これらの動きを”行政”が引っ張っている地域が多いように思われる。シリコンバレーのようにスタートアップのような企業がたくさん排出され、ストックオプション等、それぞれの挑戦者がエグジットすることで、支援者も儲かるという市場がないため、経済エコシステムたりえない。
すなわち、「ベンチャーは儲からない」という位置づけなのだ。なので、行政が中心となり、イノベーションっぽいことができる人にお願い(=受託)をするのである。必然的に地域でイノベーション・エコシステムを語る時のステークホルダーは、「行政」が中心となり、民間のコンサルへ「委託」し、関係支援機関を巻き込む、という流れになる。

さて、これらの取組のKPIをどこに設定するべきか。
やはりイノベーションの結果として、ベンチャーなどの新しいビジネスが創出された数、もしくはそれらビジネスが成長した資金調達額等が考えられるが、きっと現状は違う。イベント参加者数や開催数等、より不確実性のない、読みやすい数字に落とし込まれている。そのため、いかに「場」をつくるかに注力される。「場」をつくればイノベーションが起こる。化学反応が起こる。これはいい取組だ。そういう流れになっていると思う。

では、「場」をつくればベンチャービジネスは生まれるのか
その答えは「No」だ。もし「場」をつくればベンチャービジネスが産まれるなら、日本はとっくにベンチャー大国だろう。
なぜか。イノベーションの「場」をおもしろ、おかしく作ったとしてもベンチャーや新規ビジネスは産まれない。行政から「応援して欲しい」と頼まれた善意の支援者や、意識の高い行政職員いずれ疲れてしまう消耗戦だ。
主催者ならまだいい。ベンチャーや新しいチャレンジに関心がある層はどうか。彼らは、「そこにいること」で満足するのだ。挑戦せず、誰かのアドバイスを受け、生徒役を演じ続け、「勉強になった」で満足する。終いには情報収集・意思決定を支援者にゆだねてしまう。支援者は、「どうだ、お前ら知らなかったろ?」と、得意げだ。本当の価値は、「挑戦者>>>>>>支援者」にも関わらず、知った風な知識をふきこまれ、いわゆるベンチャーっぽいビジネスを目指すようになる。ベンチャーなんて定義もあいまいで、どれが正解かなんて分からないのに。

最近の結論としては、あくまで「場」は「幼稚園」なのだ。
小学生・中学生、ましてや高校生になるための科目も違う。引っ張っているコミュニティマネージャーはさながら「幼稚園の先生」だ。あまり使われない3Dプリンターや、レーザーカッター等、「玩具」も用意してある。
「さあ、イノベーションして遊ぼうね」

つまり、「場」の成長(来場者数やネットワークの拡大数)と、新しいビジネス、特にベンチャーやスタートアップの創出は非連続なのである。いくら「場」が成長したとしても、ベンチャーは生まれない。
正しいベンチャーは、そんなところに参加している暇はない。すり減る資金と限られた時間を有効に使うため、日々成長を目指す。
プロダクトが未完成の場合、自分の課題感は正しいのか、そこに市場はあるのか、今の市場すら気づいていない価値はなんだと、自分が価値を提供したい相手に飛び込んで、ぶつかって、そこを見つけ出す。
また、チーム探しも重要だ。絶対数が少ないエンジニアをツテを辿って口説いて回る。資金調達も考えなければいけない。投資家、VC、大手企業、自分の価値はどこにあるのか、有効なネットワークなのか、自分の成長に繋がることは何でも徹底的に試して、成長を目指す。
正しいベンチャーと接した時、1か月後のベンチャーの成長速度に驚く方もいるだろう。そんな人たちが新しい市場を切り開いて、世の中を豊かにしていくのだ。

では、「場」をつくることは無駄なのか
その答えも「No」だ。幼稚園は必要なのだ。ベンチャーの創出は偶発性によるものならば、その偶発性を高める努力はしなければならない。訴求点を作り、カオスの場を創出することで、その可能性は高まるはずだ。ただ、幼稚園だけでいいのか?という議論は多いにあると思う。小中学校としての機能として何が必要か、本当にベンチャーを創出し、成長させるためには、何が必要かという議論はもう少し必要だと思う。ここについては私もまだ結論に至っていない。

この中で一番性質が悪いのは誰か
「イノベーション屋」だ。「我々はイノベーションを起こせる」と、イノベーションを定義しないまま自信満々に謳い行政のお金で「場」をつくり、周囲を巻き込み、疲弊させ続ける。上記のような、場づくりの議論とは別に、ベンチャー創出へのアプローチは過大であると認識しているイノベーション屋はまだいい方だ。
性質の悪いイノベーション屋は、目に見える成果が出ない場合、それは地域の責任だと言い放つ。「我々は応援するだけだ」と。これについては、「お前本当にそれでいいのかよ」と声を大にして言いたい。自分達のやりたいことだけやって、後は知らん顔。地域大好き、地域がんばれ、何かあったらできる範囲で応援するからね。
イノベーションの定義は「新結合」であって、正直、知らない人達を集めて、飲み会するだけで十分加速する。あくまで技術発展という意味ではなく、異なる人材がつながって、新しい取組が生まれる可能性が広がる、という意味において。
「イノベーション」「地域活性化」最近の流行りだと「SDGs」、そんな言葉で近寄ってくるコンサルは、特に自治体に向かっていこうとするコンサルは、いくら耳障りのいいことを言っていても、何も成果を生まないことにそろそろ地域は気づくべきだ。
イノベーションは自分達だけでも起こせる。イノベーションは目的じゃないあくまで現象であり、手段になりうるものだ。囲って、マウントをとって、「俺たちすごいでしょ?お前らもっとできるよ」と上から目線のイノベーション屋だったり、専門家だったり、そんな力を借りなくても。そいつが日本しか経験してなかったら、ど素人だと思っていい。自分たちと同じである。

最後に何が言いたいかというと、挑戦したいと考えている人は、がんがん挑戦してください。挑戦者の価値が絶対です。市場の一次情報握っている人間が一番価値があります。

支援者は自己満足しないでください。テクニカルなところを教えるのは大事です。ただ「まずは市場に飛び込め」と。そこだけを強くいってください。挑戦者>>>支援者であることを理解してください。挑戦者はあなたたちの道具ではない。

イノベーション屋さんについては、そろそろ退場した方がいいかもしれません。恥も外聞も捨てて、税金で肥え太ることを目指すのであれば。


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