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数式として捉え、製造業の現場や画像処理の技術を変えていく。

2023年4月、東北大学大学院 博士課程への進学と同時に、シグマアイに正社員として入社した荒木さん。大学院では情報統計の研究に没頭しながら、シグマアイでは研究開発担当として企業とのプロジェクトを進めています。入社後は、製造現場の最適化や画像処理技術のプロジェクトをリードしています。入社までの経緯や、大学院での研究とシグマアイの仕事を両立するメリットについて詳しく聞きました。

荒木 健介(あらき・けんすけ)
研究開発担当 / Researcher
東北大学大学院情報科学研究科博士課程
東北大学量子アニーリング研究開発センター運営
2023年東北大学情報科学修士号取得 。2023年より現職。

一旦は修士卒で就職の道に進みかけるも、博士進学へと方向転換

-博士課程へと進学した経緯を教えてください。

アルバイトとして修士2年の夏にジョインして、博士課程に進学した2023年4月に正社員として入社しました。大関研究室に所属していたのですが、修士1年のときは「修士で卒業して就職するか、博士に進学するか」迷っていました。学部4年の年に新型コロナウイルスの感染拡大によって緊急事態宣言が出されて、研究活動に専念できなかったからです。研究室の先輩とのやり取りも限られる中、自分が研究者に向いているか、判断がつきませんでした。

修士1年のときには、就職の方に意向は傾いていて、就職活動を行いました。大きな組織の中で埋もれてしまう大手企業よりも、周りの人と仲間意識を持って仕事ができそうな中小企業を志望。最終面接まで進んだ企業もありましたが、指導教官でもありシグマアイの社長でもある大関さんに「もう一度、研究者への道を考えてみないか」と声を掛けられたのです。

就職活動を進めながらも、研究活動に没頭して自分なりの成果を出したいと、ずっと思っていました。研究活動への想いを大関さんに伝えたところ、「その想いを形にしてほしい。荒木君の研究へのスタンスは高く評価しているので、やりきれば成果を出せると思うよ」と言ってくださって、就職から進学へと進路を変更したのです。

ビジネスを通じて得られる社会との接点を、研究にフィードバックする

-そこで、シグマアイに正社員として入社したのは、なぜですか?

そして、博士課程に進学するに当たって、視野やスキルの幅を拡げようと、シグマアイに入社しました。私の専門分野は情報統計の理論解析であり、いわゆる基礎研究にあたります。
そのためシグマアイが得意としている量子アニーリングの実社会への応用とは、方向性が逆と言えるかもしれません。

だからこそ、ビジネスのシーンで量子アニーリングに触れることで、自分の幅を拡げられると感じたのです。統計物理の数式をゴリゴリ扱うのが私の専門なのですが、シグマアイが提供するソリューションの根っ子も、「社会課題やビジネス上の問題を扱いやすい数式に落とし込むこと」であり、共通している部分もあります。シグマアイでの数式の活用手法を学ぶことで、自身の研究にフィードバックしやすいとも感じました。

-情報統計を専門として選んだ理由を教えてください。

数式を駆使する基礎研究寄りの学問で、シンプルで分かりやすいことに惹かれたからです。
初めは実データを用いて結果を検証するような分野にもトライしていましたが、もどかしい部分を感じていました。

ビジネスでは現状の課題にうまくフィットした設定を1つ見つければそれで良いこともあります。しかし研究の場合、結果の良し悪しに関係なく他の条件や問題規模などについても検証する必要があり、突き詰めようとするとキリがありません。

そのような部分について他者だけでなく自分で気にしてしまう事も多々ありました。

一方で情報統計の理論解析では、それらの不確定な要素を一般化して扱うことができ、出てきた結果を素直に受け止めやすい良さを感じています。この点が自分には合っていました。

ただし、理論や数式の世界だけにどっぷり浸かってしまうと、現実の世界との接点が薄くなってしまう。その接点を補完して研究者として成長するためにも、シグマアイへの入社を決めたのです。大関さんには「シグマアイでは、研究者としての視野を広げることができる、面白いテーマに向き合うことができるよ」と言われていました。

数式が、複雑な人間の営みを良い方向に変えていく

-シグマアイに入社して、どのようなプロジェクトを担当しましたか?

大手製造業の製造工程の最適化プロジェクトを担当しました。原料の投入から出荷までの流れを効率化するために、モデルを構築する仕事です。加工する原料の組み合わせを最適化したり、それに合わせて生産設備の稼働を効率化したりと、様々な試行錯誤を行いました。モデルのベースは、前任の羽場さんが作ってくれていましたが、現場に適用可能にするまで、私の手で進化を重ねました。検討するべき要件が多岐に渡りますが、それらの要件を一つずつ数式に落とし込み、計算結果に反映させていくことにやりがいを感じていました。

現場の実状を自分の目で把握するために、工場にも月に1回くらいは訪れていました。加工工程の詳細をヒアリングしたり、行程表を組む方と効率化するポイントについて議論を交わしたり。様々な情報に触れて、モデルを精緻化することによって、現場の作業を最適化することに成功しました。そこには、研究室の中だけでは体験できない世界が拡がっていました。現場の皆様との協働しながら生まれた数式が、現場の作業を効率化しているのを目の当たりにしたときは、鳥肌が立ちましたね。数式を使った学問のシンプルさ・簡潔さに惹かれて研究者を志したのですが、その数式が複雑な人間の営みを変えていく可能性に出会うことができた。自分にとって転機になりましたね。この体験は今後のキャリアにも、影響を及ぼすと思います。

-このプロジェクトの今後の展望を教えてください。

製造現場で成果を出すことができて、お客様にも喜んでいただけました。「本当にありがとうございました」と個別にメッセージをいただいたのは嬉しかったです。すでに派生したプロジェクトが動いています。規模の拡大や発展的な需要に応えるための改良に取り組んでいます。

画像処理のプロジェクトは、発想力が結果に直結するのが面白い

-製造業以外のプロジェクトについても、教えてください。

画像処理技術を開発するプロジェクトを担当しています。大学で画像処理にも使われるアルゴリズムの基礎研究に取り組んでおり、実用面にも目を向けてみたいと考えたことがきっかけでした。

画像処理の技術開発には、既存の道具を使いこなす発想力が問われる面白さがあります。ぼかしなどの基本的な処理技術はpythonなどで誰でも使えるように整備されています。これら単体で課題を解決できることはありません。しかし、本命である技術とうまく組み合わせることで全体の効果を大きく変えることができます。

この組み合わせや順番を考え、生まれた画像を実際に見て、感じたものを工程にフィードバックするという試行錯誤の繰り返しにやりがいを感じています。

シグマアイの業務を通じて、量子アニーリングの知識を習得。自分の専門にも活かしたい

-大学院での研究と、シグマアイの業務は、どのように両立していますか?

2023年8月〜9月に、国際学会も含めた大きな学会2本に出席しました。多忙でしたが、何とか乗り切ることができました。シグマアイの活動で学んだ、進捗管理のスキルが役に立ちましたね。シグマアイの仕事と研究者の活動の双方を経験することで、やれることの幅は確実に拡がっていますし、両立させるコツも身についてきました。

この1年間、シグマアイの業務では多くのことを吸収できました。自分が関わるプロジェクトだけでなく、メンバーとの議論を重ねる中で、見えてきたこともたくさんあります。特に量子アニーリングに関する知識は多く蓄積されたと実感しています。大学院の研究室において、同僚の発表がより深く理解できるようになっただけではなく、情報統計の研究にも活かせるポイントも感じています。

また、シグマアイには博士課程に在籍している先輩社員が複数在籍しています。同じ境遇の先輩と日々接点を持てるのは、今後のキャリアを考える上では非常にありがたいですね。今年の4月以降、新たな後輩が入社した場合は、自分からも何かを与えるような存在になれれば、と考えています。



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