見出し画像

価格では無く価値でものを見る

プロ雑用です。
評価に関する話をしてる途中ですが、閑話休題。

先日こんな話題を見かけました。

この手の話は、以前から楽天スーパーセールやAmazonブラックフライデーでもよく見かけます。

この手の話を見たときに、私はいつも「やっちまうサービス側がもちろんダメなのだが、そういうのが出てくるのはやはり一般人が過剰に安さやお得さを求めるせいだろう」と思うのです。

評価の話もあながち無関係とはいえない話ですので、今日はこちらの話題を取り上げていきたいと思います。

優良誤認と有利誤認

景品表示法には、優良誤認(実際にはそうでないのに良い品質だと思わせる)と、有利誤認(実際にはそうでないのに得な条件だと思わせる)の二つが記されていますが、今回の価格の場合は、後者の有利誤認に当たります。

ちなみに、優良誤認のほうは、最近ではソシャゲのガチャなどがよく違反例として上がります。

優良誤認も有利誤認も、どちらも違反行為になるので、消費者庁より措置命令や課徴金納付命令が出される場合があります。

そして、これらの法は、故意・過失は問いません。
「わざとやったわけではない」は通用しないルールです。

売りたいと買いたいの心理戦

価格というのは、常に市場価値を反映します。実際の市場はさまざまな変数があるので複雑なわけですが、同レベルの選択肢(商品やサービス)が多い市場では、価格競争は発生しやすいです。

そういった価格競争が発生しているときに有利になる条件の一つが、今回の件にもある「割引率」。割引率が高ければ高いほど、消費者側は「お得だ」と感じ、購入につながります。ディスカウントが良い例です。
また、そもそもの価格が極めて安価であることも購入につながります。その代表例が100円ショップなどです。

日本人は精神的に貧しい

お得だったとか、人よりも安く買ったということを、誇ったように喧伝する人が多いですが、これはどういう心理なのかなと昔から疑問でした。

思考を巡らせてみると、どうやら以下のような3つくらい理由がありそうだぞ、と思い当たります。以下から解説していきます。

  1. 失う痛みに耐えられない・損失回避バイアス

  2. お得感を左右するアンカリング

  3. お金は汚いという価値観

失う痛みに耐えられない・損失回避バイアス

私自身は、昔から「自分が必要だ、ほしいと思った時に売ってる価格が適正価格」と考えているので、バーゲンセールや福袋などには一切興味がありません。なので、セールだからと大量に不要品を買ったり、100円ショップで大量に買い込む習性のある人々の心理がよく理解できなかったのですが、バイアスの一種なのかと考えると、思い当たるものがありました。

「すでに持っているものを失う痛みは、新たに得た喜びより大きい」
つまり、損失回避バイアスです。

この損失回避バイアスは「失う痛み」は「得る喜び」の二倍相当であるとされています。人によって違いはあるでしょうが、いずれにしても失う痛みの方が大きいのは間違いないのでしょう。

つまりすでに持っているお金を、人は可能な限り失いたくないのです。将来のためだとか何だというのは、後付けのいいわけで、単純に失いたくないという心理を人間は持っています。

お得感を左右するアンカリング

人は最初に提示された数字や情報をまず基準とし、その基準をもとに物事をジャッジするようになるという特性があります。これをアンカリング効果とといいます。

松竹梅と3種類あれば、一番売りたい商品は竹に置くなど、最も売りたいものを高いものと低いものでサンドイッチする手法が代表的です。

実店舗でもこれは使われており、例えば大手家電量販店で最も目立つ場所に置いてあるテレビなどの大型家電は、ハイスペック家電であり、その価格も非常に高くなっています。これは、それを買われることが目的では無く、その価格やスペックをお客に最初に目撃させることで、その後に見る商品を売れやすくなる(顧客は財布のひもが緩くなる)効果があります。

元々の価格よりもいくら安くなっているのか、を示すのが割引率や値引き価格ですが、これもアンカリング効果を引き出すことができ、元値が高ければ高いほど、その効果は高いです。

お金は汚いという価値観

よく、良いものを早く安くということが言われます。これは、一見すると顧客優位性のはなしのようにも見えますが、そのウラには「お金は汚い」という価値観が隠れています。

お金が汚いという価値観は、一説には徳川幕府の国家安寧の戦略とも言われますが、もっと以前からあるものだとも、明治維新以降だという説もあるなど、出自ははっきりしません。出自はどうあれ、多くの日本人に根強く残っている考え方です。

お金が汚いと思っているから、高価なものを売っている商売人は強欲な悪徳人なのです。だからこそ、安くて良いものを売る商売人こそ真っ当、身を粉にして削ってギリギリの商売こそ真っ当、と考える人は多い。(その考えを煮詰めていくと「原価厨」や「神を自称する客」が誕生します。)

お金は汚く、高価格で儲けることは悪徳であると考えるからこそ、高い割引率や安いものにこそ価値があると、無意識に考える日本人はいまだ多い。

清貧と貧しさは似ているようで異なる

たしかに企業努力や工夫によって安く商品を提供できる企業はすばらしいと思いますが、それが社会圧力となって企業を追い込んでいくことは、明らかな間違いです。

日本の価値観として清貧さ、質素倹約を尊びますが、それならば「余計なもの」は買わないことこす考えるべきです。欲しいものをいかに安く買うかは、清貧ではなく、精神が貧しいだけ。

でもお金がなくて…お金がないならなおのこと。
欲求を抑えることのできない、人間性が未熟といえるでしょう。

お金を道具として使いこなす

本来、100円で買ったものだろうが、10万円で買ったものだろうが、同様に大切に扱わなくてはなりません。それが自分にとってどうであるか、が大事であり、それこそが「価値」です。

100円で買ったものだからぞんざいに扱う、高価なものだから大切に扱うというのは、価値を価格の区別がついていないということ、自分の価値観を持たざるものの行動です。

割引率や価格ではなく、自分にとってそれが必要か/大事かによって判断しなくてなりません。バイアスや心象心理にインフルエンスされるうちは、まだまだこういうサイトが多く現れることでしょう。詐欺まがいだ!と騒ぎ立てる前に、こういったサービスを本当に滅したいなら、消費者側が成熟しなくてはなりません。

セールだから買う、お得だから買う、ではなく
「自分が必要/ほしいと思ったときに、出せる価格で買う」
「安い高いでは無く、自分にとってそれはどのような価値があるか」
というぐらいには消費者側が成熟しなくてはなりません。

いつまでも安くて良いものを求め続ければ、こういうサイトは今後も出てくるでしょう。それこそモグラたたきです。消費者側はいつまでも昭和の貧しさを持ったままではいけないのです。

給与が安い、お金が貯まらない、欲しいものは手にはいらないと不満ばかり募らせている人は、お金を使っているのでは無く、お金に使われている人。
価格では無く、価値でものを見る訓練をしましょう。

今日はこんなところで。
それじゃ、また👋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?