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最古の記憶|エッセイ

物心がついた瞬間を覚えているだろうか?

私は幼稚園の友人に「ミュウツー」の発音を指摘されていたときだ。一生懸命ミュウツーと発音するが、どうしてもミュウチューになってしまう。何回か練習したが、ついに呆れられて「もういい!」と置いていかれた。
その練習の途中で、とびとびの記憶が急に繋がって映像になった感覚があったのを覚えている。
今まで何考えて生きてたんだっけ?
あれ…ミュウツーの前は何してた?
その直前のことが全然思い出せなくて、不思議な気持ちになった。

物心がついたあとは、一丁前に色々考えていた。
周りのお友達は髪を可愛く結ってもらってるのに、自分は下ろしたままなのを気にしてたり、ブースターの靴が可愛くてお気に入りだったり。

幼稚園だったので、3歳〜5歳の話だと思うが私は物心がつくのが遅かったと思う。
周りの子は私よりたくさん考えて生きてたし、なんならずる賢くみえた。物心ついた瞬間から、なんだか馴染めないなあと思ったのを覚えている。馴染めないという言葉は知らなかったが、自分が周りと違う気がしていた。
周りの子が髪飾りの話をしてる間、私はジッとブースターの靴を見つめていた。変な子供だ。もうその頃には家庭は崩壊していたし、それも自分と周りが違うと感じた理由だろう。

息子はまだ3歳だが、もう既に物心ついているんじゃないかと思ってしまう。そのぐらい色々なことを理解しているように見える。5歳の時の私より明らかに賢い。

息子の最古の記憶はどれになるんだろうか?
今は何でも覚えているように見えるが、何を覚えているかは大きくならないとわからない。
楽しい記憶だったらいい。
楽しいものじゃなくても、なんでこんなこと覚えてるんだ?ってことでいい。

息子に「ミュウツーって言ってみて」とお願いしたら、わざわざ私とソファの間に入って恥ずかしそうに「みゅうちゅー」と言ってくれた。
やっぱりミュウツーって難しいんだ。あの時なんであんなに練習させられてたんだろう?
考えていると「ちゅー」と言うついでに、息子の口が私のほっぺにひっついた。
「うわあ!」と私が大声を出すと、息子が大笑い。

息子の記憶に残るのは、こういう時間がいいな。

ソファに体重を預けながら、小さく祈った。
私に潰された息子が悲鳴のような笑い声をあげて、走って逃げていった。

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