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短歌:子どもはあまねくチビである

雪の日にわたしの腰に届いてたチビと呼ばれた犬思い出し/銀猫
ゆきのひにわたしのこしにとどいてたちびとよばれたいぬおもいだし

 冬になると思い出すことのひとつです。

 小学二年生くらいの頃から、わたしの実家では犬を飼っていました。犬を飼いたがったのは姉で、姉はひとりでほぼ全ての世話をしていました。

 散歩には、よくふたりで行きました。
 我が家の犬は雑種(いまならミックスと言いますね)の和犬で、小さめの柴犬くらいの大きさでした。

 そして、わたしはとても背が小さな子どもでした。いまもですが。
 当時、身長はどのくらいだったのかな。中学に入ったとき、ギリギリ140cmに足りませんでしたから、きっと120cmやそこらだったのではないかと思います。

 冬の、雪が降りしきるある日、姉とわたしは犬の散歩に行きました。歩いていても、頭や肩や犬の背に雪が積もるような日でした。
 我が家の犬がくんくんと臭いを嗅ぎ立ち止まっていたときに、小さなわたしの脇に何かの気配がありました。

 「動かないで!」

 姉が私に言いました。
 それでもわたしは、おそるおそる、自分の右側を見たところ、そこには犬がいました。わたしの腰高を超える大きさのセントバーナードが。

 もちろん、セントバーナードは我が家の犬に興味を持っていただけなのですが、初めて見るサイズの犬に、わたしは(たぶん姉も)足が竦んでしまいました。
 そこに、

「チビ! こっちに来なさい!」

という声が。

 チビと呼ばれたセントバーナードは、声の持ち主の方へと去っていきました。そちらを見ると、雪かきをしている中年のご夫婦がいました。

 ああ、仔犬のときはチビだったんだろうなあ。そのまま名前になっちゃったんだなあ。
 そんなふうに思った次第です。

 あの頃よりも、いまの方が犬を飼っている人は多いと思いますが、セントバーナードは見かけません。我が家の近所には、ボルゾイやボーダーコリーやバーニーズ・マウンテン・ドッグは見かけるのですけれど。

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