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「Little Letter」曲目解説(10)Cloudy John

使用ギター:Ken Oya(2008)
使用マイク:DPA 4006A

アルバムのラストは、後腐れない締めくくりが好きです。ラストに重めの曲を置くスタイルも良いのですが、なかなか自分では採用できません。

元々この曲はプログラムを悩ませるタイプの曲で笑 どこに置いても地続き感が少しねじ曲がるのです。だったら地続きさせずに一旦終わり、一曲目に仕切り直せる感覚を大事にしようと考えました。
そして、ラストに置くことでその曲に多少なりとも「箔がつく」というか、堂々とした佇まいを与える事もできます。
与えられた曲順がその曲を相対的に性格付けることは、意外にも多い現象です。皆さんもオリジナルアルバムで聴くのとベスト盤で聴くのでは、たとえ同じ曲でも全然違うのを感じたことはあるでしょう。
だから音楽はアルバムで味わいたいんですよね。「一曲単位」でしか音楽を見れないのは、音楽にとって必要な「相対性」を無視した、もったいない行為だというのは言い過ぎでしょうか。


Ken Oya Model-J(2008)の響きも、DPAによって非常にうまく録れたと思います。
今回大屋ギターにだけは、メインマイクのSchoepsではなく無指向性マイクの名器DPA4006Aを採用しているのは、3曲目「Unknown Circle」の項で述べた通りです。

このギターがDPAでこそ活きてくるというのは、このギターの特長が音の直進性にあるように見えてその実、楽器の全体性が高度に保たれている証拠だと思います。
良い「音」が飛んでいくというだけでなく、楽器の「質感」の性格が強いんですよね。その質感は物理的な意味あいだけでなく、自分がこの楽器をどれだけ愛しているかという事も関係していると思います。そしてそれすらも録ってしまうDPAの凄み。

レコーディングは奥が深いです。
今回は本当に、楽しみながらそれを体験しました。

次作はまた、その迷宮に帰ってきて冒険の続きを始めるわけです。
それまではこのアルバムを味わい、このアルバムが自分に与えてくれる縁を感じながら活動していきたいと思っています。

全10曲の解説はこれにて終了です。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました!

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