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「余人を持って代えがたい」思考は危うい

 昨日の夕方、3月まで僕が部門長をやっていた職場の人が、前の仕事の関係で相談に来ました。

 その相談自体も、出向人事のポストにかかわる案件で、それ自体、出向先の他社とのパワーバランスを変更し、うちの会社の責任が重くなるような話であり、その職責に担った人材を送り込むにせよ、出向先の提示している報酬では不十分で、責任分担を協議しつつ、報酬の引き上げを求めるべきという、なかなか機微に関わるアドバイスをしました。

 その後、現在、前の部門が抱える事案を聞いたのですが、いくつもの事案において、3月までに比べても状況が悪化しており、どこも事態の打開に難渋しているという印象を受けました。

 いずれの事案も、関係者の相関関係図を頭に叩き込んだ上で、それぞれの立場を一定程度配慮して、少し手の込んだ合意形成プロセスを踏みつつ、物事を前に進める必要があり、もともと、難易度高めでしたが、
4月に入り、相次ぐ事態の悪化を受けて、問題解決の時間軸が強制前倒しになり、一つ一つの事案に丁寧に対応するというより、ある種、65点取れれば十分役目を果たしたと割り切り、多少、果実を取りこぼしても、とにかくプロジェクトをとん挫させないことに注力している状況のようです。
 
 特に最重要の案件が、その問題の大きさ、困難の塊のデカさゆえに、先送りの判断となっており、3月までいた自分としては、そこは、関係者の合意形成のまさに途中にある状態、一年近くかけて、そっぽを向いていた関係者がプロジェクトの実現に向けて話し合いに応じるようになり、今から具体的な詰めに入ろうとしている矢先にあり、ここで先送りすると、膨らんだ期待と機運は萎んでしまい、思いがバラバラになってしまうのではないかという危機感を覚えました。
 
 とはいえ、僕がそのまま残ったところで、現状の極限状態の二乗のような中で、最も重い案件に注力できたかと言えば、それは無理だったように思います。というより、思い入れが強い分、おそらく最重要案件に注力してしまい、他の事案への対応がおざなりになり、あちこちで問題が火を噴いて、組織が空中分解したかもしれません。

 僕には、現場ヘの思い入れを強く持ちすぎて、暴走してしまうきらいがあり、そこが強みとなる場合もありますが、多方面から攻撃を食らっている現在の局面では、一つの砦の攻防にかかりっきりになり、冷徹に全体の資源配分を行う司令塔としての役割を全うできず、部門の責任者としては失格だっただろうと思います。

 僕は、自分のことを、余人を持って代えがたいと、3月までは思っていましたが、そういう思考が、マネジメントの階段をのぼる上ではむしろマイナスになってしまうのでしょう。専門性は持ってもいいが、好きなこと、やりたいことだけやっていれば良いという立ち位置ではない。

 そこをトップに見透かされて、あえて今のような、「宮将軍」的なポジションで、人に任せることを覚え、これまでの自分の穴を埋め、さまざまなタイプの弁護士との対話を通じて、自分のこれまでかかわってきた業務についての法的思考を培うように、ということなのでしょう。

 最重要案件は、僕にとっては大事に育て上げた娘のようなもので、できれば関係者で汗をかいてきた分、皆が納得できるところまで手間をかけて、後進に範を示せるモデルを示したい、そんな思いが捨てきれませんが、
一方で、費用対効果が見合っていないことは明らかであり、ある程度の合意点を見出して、あとは現場に任せ、必要に応じてバックアップするというやり方が合理的であるのは確かであり、そこは現体制に任せつつ、求めに応じてアドバイスする、こちらから立ち入らないことを原則に、適宜サポートしていきたいと思います。
 

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