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伏線回収の必然と偉大なるマンネリ

 ダンジョン飯が1月からアニメ放映を開始しました。


 累計1000万部を突破した人気コミックで、僕はカドカワの株主優待で1巻を手に入れてから愛読しているわけですが、ドラクエ以降のRPGをベースにした剣と魔法の世界の冒険は、HPやライフゲージといった概念で生命力が捉えられ、呪文やポーションによってライフポイントが回復し、食事が介在しないところで、冒険が進むという漠とした認識しか持っていないところに、ダンジョンでも栄養バランスの取れたメシが、冒険を続けていく上では大事という視点を採り入れたところに、この作品の斬新さがあると思います。

 もちろん、RPGの中でも、ディティールにこだわったゼルダの伝説などは、食材を手に入れて調理して、体力回復させるような、リアルの冒険に近い設定になっていますが、ダンジョン飯のように、栄養バランスも良く、見栄えも考え、デザートまで作って、食事を楽しむというような発想、しかも、食材がモンスターであり、モノによっては食べてみると意外と旨いモンスターや部位もあるという設定も、なかなか斬新です。

 また、そこかしこに、おばあちゃんの料理の知恵的なエピソードや、限られた食材で何品も料理を作るとか、とにかく死と隣り合わせの極限状態でありながら、となりの晩ごはん的な雰囲気もあり、このミスマッチが良いのでしょう。

 とはいえ、物語が進んでいくと、一話一話のエピソードから、物語全体に話題が広がり、だんだん伏線回収が難しくなっていき、ある意味、気軽に読めなくなっている、巻が進むと、そこで世界観やキャラ設定が確立しているので、そこから入ると全然わからないし、このコミックの面白さも伝わらないような気がします。こうしたコミックがアニメ化や映画化される場合、だいたい1クールとか2クールぐらいまでなのも、短時間でのキャラの理解や伏線回収に視聴者がついていけない、ということがあるのでしょう。

 そう考えると、こち亀などは、原則として1話完結の世界から広げることなく、200巻まで行きついた、読者を引っ張った力は、偉大なるマンネリの金字塔ですね。

 

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