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大地に寝てみる感覚

 このところは心の疲労が身体を鉛のように重くしていたので、寝ている時に自分の家の寝室に閉じているのではなく、大地に寝転がっている感覚で目を閉じて五体を投げ出してみました。
 大地を感じると、自分の身体が大地と一体となって、五感が際限なく広がるような感覚になり、何か大きなところに取り込まれるような気分になりました。
 局所的に物事を捉えると、何か自分だけが矢面に立って、辛い思いをしている、行き詰っている、不幸に直面している、そうやって、自分中心の世界を描いてしまいますが、考えてみると、周囲の人々にもそれぞれの世界があり、ただそれが相互に干渉しあっており、世の中が打ち出の小槌により無限に幸福と富を生み出すことが出来ない以上、幸福の裏返しに不幸があり、そこまでいかなくても、より大きな幸せのために小さな不幸を感受させるメカニズムの矛盾を感じつつ、お互い知らんぷりをしている場面もあります。
 善意と感謝の互恵関係にあってもその熱量に差があると、そこにすき間風が生み出されますし、そのすき間風により、どちらかの熱量が落ちていく、冷めていくと、互恵関係が親密であるほど、期待からの落差が大きく、それが裏切られたの思いにつながり、修復不能な憎悪感情に転じてしまいます。  
 かといって、完全に相互不干渉な領域、誰も住んでいない、どこからも人がやってこない無人島に一人で住むことは、絶対的な孤独を感じ、生まれた時から人との関係性の中で、いわば人間として生きてきたほとんどの人にとっては、耐えられないでしょう。
 なかなか面倒くさいのが人の世の中であり、なればこそ少なくない人が、人の世に疲れて幕引きをしてしまおうと考えるのでしょうが、自分がそのような気持ちに至った時は、寝転がり五感を大地に張りめぐらせ、一度、人間であることを忘れて、気持ちをリセットしたいと思います。

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