商習慣も文化も違うアジアでブランド展開するには?ファミマに学ぶ3つのポイント
アジア展開の前に立ちはだかった、インフラ整備の問題
大手コンビニエンスストアチェーンのファミリーマートは、アジア7地域にファミリーマートブランドを展開しています。アジア進出は、1988年の台湾に始まり、おもに東アジアを中心にエリア拡大を果たしました。
進出当初、アジアにおけるコンビニストアのビジネスにはいくつかの大きな課題があったそうです。
まず基本的な仕組みの問題。アジア各国と日本では店舗づくりの方法にさまざまな違いがあり、特にインフラ整備が大きな課題でした。
一般的なところでは、日本では顧客のニーズに合わせて商品を調達して在庫管理を行い、すべての情報は本部と共有されます。しかし、アジア諸国では卸業者が間に入って商品を納入するため、本部と店舗の間での情報共有がうまくいきませんでした。
また、店舗設計にもサプライヤーが介入しているため、たとえば店舗ごとに商品や陳列棚を柔軟にアレンジすることが難しかったのです。
さらに、日本のコンビニエンスストアにはおにぎりやサンドイッチなどを製造する専用の工場があるため、どの店舗にも同じ品質の商品を提供することができます。しかしアジア各国にはそのようなビジネスモデルが確立されていないため、そもそも専用の工場を持つという概念がありませんでした。
そのため、当然のように店舗によって商品の品質や衛生面にばらつきが生じてしまいます。これは「ファミマブランド」をチェーン展開していくには、致命的な問題でした。
1店舗に全力投球!成功例をつくって横展開
そこでファミリーマートは、まずは1店舗でのインフラ整備を徹底して行い、アジア版ファミリーマートのモデルケースをつくり上げることに専念しました。要するに、多店舗展開は後回しにして、アジアでの成功例を一つ作ることに注力したのです。
同社は特に下記3つのポイントにフォーカスしながら、店舗のインフラ整備を実施しました。これはコンビニ以外のビジネスにも応用できると思うので、ぜひ参考にしてください。
Point1:都市と郊外の地域差を理解する
アジア諸国では、都市部に欧米人や富裕層が多く住んでいるため、日本の都市部と同じように安定して高い売上を得ることが可能になります。
しかし、郊外や地方ではそれ以外の層をターゲットとする小規模店舗が多く、しかも仕入れルートが違うなどの理由で同じ商品でも安い価格で販売されているケースが多々あります。日本のコンビニではどの地域の店舗でも同じ商品は同一価格で販売するのが基本ですが、アジアではこの地域差を念頭におかないといけません。都市部と郊外で戦略を分ける。これがアジアでコンビニを展開する上での大前提となるポイントでした。
Point2:日本の働き方を押し付けない
日本では一人の従業員がレジ、発注、検品、品出し、掃除など複数の仕事を担いますが、アジアでは一つの業務だけを行うシングルタスクが基本です。
しかし、日本の習慣を無理に押し付けてマルチタスクを教えると、現地の従業員から反発を受けるという問題がありました。
そこで、同社は現地の文化に合わせてシングルタスクを基本としました。そして、その中でも素質がある人を見つけたらリーダーの役割を与え、マルチタスクを教育。そのリーダーを通して他の従業員にマルチタスクを徐々に広めていくという方法を確立しました。
初期段階での一人あたりの生産性は低いのですが、いきなり日本の習慣に変えるのではなく辛抱強くステップを踏むことで、軋轢を生まずに生産性を向上させることに成功したのです。
Point3:ブランドの共通言語を確立する
ファミリーマートというブランドを正しく海外に展開するために欠かせないのが、現地の人との共通言語の確立でした。
なんでもかんでも現地の習慣に合わせてしまうと、ファミリーマートらしさはどんどん失われてしまいます。
ローカライズする部分と、変えてはいけない部分、すなわちブランドコンセプトやバリューチェーン、ホスピタリティなどブランドを構成する大切な領域を、共通言語で定義することが重要です。
現地の言葉に正しく翻訳していくのは非常に大変な作業ですが、これを徹底的に行い、従業員にきちんと伝え続けることでブランドマネジメントを実現しました。
ブランドの適応力が、グローバル展開の成功を左右する
このように、ファミリーマートは「都市部と郊外の地域差」や「人や文化の違い」、ビジネスに対する相互理解の基本になる「共通言語の確立」などグローバル展開する上での課題を一つずつクリアしていき、日本流のビジネスをベースにしつつも積極的にアジア流の商習慣や文化を受け入れて、ローカライズを進めていったのです。
きめ細かなコミュニケーションを通じてアジアの人たちと信頼関係を築いていったファミリーマートは、台湾の店舗で日本とは異なる新しいビジネスモデルを確立。これを他の地域にも横展開する形で順調に店舗数を伸ばしていき、アジア各国で地域に根差したコンビニエンスストアの展開に成功しました。
この成功例が示すとおり、グローバルマーケティングにおいては、オリジナルを押し付けずに現地にコンバートしていく判断も必要になります。一方で、変えてはいけない領域を明確にして守ることも重要です。
異国の地であるからこそ、現地の人との相互理解を深めてブランドの適応力を強化していくことが、グローバル展開には欠かせないのだと思います。
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