見出し画像

メンバー紹介②堀 幸太朗

 2010年、春、高1 私、菅井は友達がいなかった。
 中学の時の友達はみんな勉強ができたので私だけランクを1つ下げざるをえなかった。自称進学校の最底辺(ほぼヤンキー高だろと思う)に一人放り込まれた。しかも、クラスに友達はおろか知り合いもいない、とっかかりがないからどう話しかけても友達になるまでのビジョンが見えない。 そんなこんなで高校に入学すると一番初めにあるイベント、『健康診断』が行われる。学校に来れてる高校生なんか全員健康だろと思いながらも出席番号順に長蛇の列を作り、長い時間自分の番が来るのを待つ。そんな時、私らにはガラケーしかない。mixi、グリー、メール。私にはメールは一通も届いてないし、ゲームもしない人だから携帯を開く必要はない、が、開かずしてこの時間を消費していくのは耐え難い。そんな時、隣のやつが私の携帯を覗いてきて、待ち受けを見られないように避けた。 『なっ…何?』『ギター弾いてんの?』

 恥ずかしすぎる。自分のギターを待ち受けにしていることがバレて完全に痛い奴だと思われた。今は何とも思わないが、当時の私は自分の趣味がバレることが恥ずかしいことだと思っていた。

『俺、ドラム叩いてる』  
 
 堀 幸太朗はそう言った。こいつはなんでドラム叩いてることをそんなに馬鹿正直に言えるんだと思いながらも友達もいなければ知り合いもいない私にとって、会話を続けるのはその時の最善手に思えた。近くに堀の友達もいてそいつと3人で喋った。その時出てきた、私と堀を繋ぎとめたキーワード 

【けいおん!】

 この頃の陰キャオタクでけいおん!を見ていないやつはいない。みんな見てる。【ぼっち・ざ・ろっく!】なるものが現在、巷で人気のようだが、私の時代は【けいおん!】である。私の頭ではこの二人はいける!と確信した、【けいおん!】を見ていてさらに楽器もやっているやつなんか、ニコニコ動画で弾いてみたや叩いてみたを見てニタニタしていることを私は知っているから。そこからショボン、安定型あんぱんまん、インテル王子、川口千里と当時のニコ動やyoutubeで名を馳せていたドラマーの話、アニメの話をした。ここまできたら一安心、高1の春の最初にして最大のミッション、喋れる友達を作ることに成功した。

 堀 幸太郎という人間は、明るく、冗談も言える、挨拶もできて、彼女もいた、世の中や人間一般を馬鹿にしたり皮肉ったりするけど、基本的にただのいい奴だった。当時の私からしたらとても大人に見えた。これが家で一人、永遠にギターを弾いている人と、外バンを組んで社会性を獲得しているやつの違いかと思い知らされた。その日も帰って直ぐにインターネットでtab譜をあさり9mmのdiscomunicationコピーをしながら素人がコピーした精度の低さに絶望していた。

 ところで9mm Parabellum Bulletという超イケているバンドをご存じだろうか?当時、AKB48が全盛期の時代、9mmはおろかロキノン系のバンドを聴いているやつは私の周りでは一人もいなかった、ただ一人を除いて。堀はアニソンばかりかと思ったがロキノン(全然私より詳しい)も聞いているらしい、しかも9mmを私と同じで馬鹿みたいに繰り返し聞いているようだ。堀はバンド系の楽器はどれも演奏できるやつで9mmのギターリフがいかにヤバいかを語れるし、私が語ることも理解してくれた。あの頃が私の人生のピークだったかもしれない。 


『SYNDICATE - ビンキーガール』
short hairのあの子、浮かない顔して1人、深夜4時をほっつき歩いとった。 Composed:SYNDICATE
Vocaloid-Edit:びび様 (@bibian0115)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?