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母の短歌 山の友等は尾瀬沼を行く

 「今日は」とかけあう声もさわやかに
 山の友等は尾瀬沼を行く

母が辛そうだった。電話の向こうの声が泣いている。どこかに行けば気が晴れるのではないかと尾瀬に誘った。近くの山に友だちと行ってたようだし、「山に行くと清々するよ」と言っていた。以前にも友人と尾瀬に行き、尾瀬を楽しんでいた。母はそのことを短歌にした。それを思い出して、尾瀬に誘った。

鳩待峠を下り、尾瀬ヶ原の木道を歩いた。辛いことを忘れたかのように、母の足取りは軽やかだった。見晴らし十字路から寄り道して、三条の滝を眺めた。その日は、第二長蔵小屋に泊まった。翌日は、燧岳への分岐を過ぎて、尾瀬沼を歩き、大清水への長い坂を登った。それからバス停までの道を歩いた。

尾瀬を行く母の顔は、終始、爽やかで、
「尾瀬に行くと心が晴れ晴れするよ」
そう言っているように思えた。



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