見出し画像

母の短歌 つやめきて紅く熟せる柿の実を

 つやめきて紅く熟せる柿の実を
 期待を持ちて皮をむきいる

柿の木が小岩の家の庭に植わっていて、毎年、秋になると橙色の実を生らした。榊󠄀の生垣に沿って椎の木の間に3本の柿の木があり、外を歩く人からは気づきやすかった。たまに近所の人が、赤くなった柿の実を見て、「お宅の柿は甘柿?」と聞く。母が「甘柿と渋柿が毎年交互なんですよ」と言うと近所の人は納得したような顔をしていた。事実、隔年で甘柿と渋柿を繰り返していた。

母のこの短歌は、晩年の作なので、小岩の時の柿を歌ったのではない。柿が甘いという確信のもと、更にどの位甘いだろうかという期待である。しかし、この短歌を読むと、今年の柿は甘いだろうかと期待を込めて、皮を向いたときの小岩の頃のことが思い出される。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?