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読書感想#46 【吉本隆明】「共同幻想論」

引用元:改訂新版 共同幻想論 角川ソフィア文庫 平成24年4月5日36版発行

私の読み方

個と全体がいかに関係しあっているのか、たとえば私と国家との関係はいかなるものであるか、これを考察するという観点から、今回私は本書を読み解きました。

なお、本記事は「共同幻想論」の解説を意図するものではなく、またその全容を要約するものでもありません。純粋な研究資料として執筆したものではなく、むしろ私の考えに本書を紐付けて行くというような、恣意的な内容になっています。そのため、「この部分の説明がない」、「本書の内容に従順ではない」等の批判にはお応え出来ませんこと、あらかじめご了承下さい。

共同幻想とは何か

何かしらの指標となるものなしに話を進めるのは難しく思われますから、前提に吉本自身の言葉を引用して、本書の表題ともなっている「共同幻想」を定義付けるところから本稿を始めます。

共同幻想というのは、おおざっぱにいえば個体としての人間の心的な世界と心的な世界がつくりだした以外のすべての観念世界を意味している。いいかえれば人間が個体としてではなく、なんらかの共同性としてこの世界と関係する観念の在り方のことを指している。

p.16

おそらく、多くの読者にとって分かりやすいのは、引用の後半部分ではないでしょうか。「何らかの共同性」、すなわち国家や社会のようなものは、「観念の在り方」、言い換えるなら、観念として存在していること。あるいは私自身の翻訳が許されるなら、社会や国家、世界といった、普段私たちが漠然と抱いている、何か私たちを包み込むような大きな存在、これは実体的なものではなく、実は観念的なものであったのだ、すなわち幻想であったのだ。ここまでを聞くと、何となくではあるものの、「共同幻想」の雰囲気が掴めたのではないでしょうか。

大事なことは、「共同」であること

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