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学校

久しぶりに、高校時代の友人に連絡をした。

ほんの気まぐれで、アイツ何してんのかな…。
と軽い気持ちで、電話したのだ。

そしたら、アイツは慌てて、

なんで、オレの電話出ねーんだよ!
何回も何年も電話してたのに!
お前、薄情だな!
今さら、なんなんだよ!

と怒られたではないか。

どうやら…私の夜間高校時代の母校は、

もう何年も前に廃校になったそうだ。

その知らせを伝えたかったらしいのだ。

まぁ…少子化問題もあるだろうし、
夜間高校に需要はもうないのかもしれない。

今じゃ、オンラインで通信制とやらで、
簡単に高校入れる時代だ。

夜間高校なんて…古いよな。

でも、勉強以外で得られたものがあった。

いわゆる普通の高校では、体験できない。

もちろん、逆もあるだろう。

不思議なもんで、私の中で1番濃い思い出は、
ほとんどが、夜間高校時代のものだ。

沢山の訳ありな人達。

年齢なんて、バラバラ。

ほとんどが、昼間に仕事をしていた。

放課後に遊びに行くとか、お茶するとか。

何時間も、くっちゃべって笑ってなんて、
そんな時間なんてないし、店なんて閉まってる。

授業も大体17時半くらいから、21時半まで。

卒業するのに、最短で4年だ。

女子なんて、お水のねーちゃんが混ざってる。

日本人じゃない人も沢山いた。

年配の方も、元気に登校していたっけ。

そして、入学から、
卒業までほとんどのヤツが、
夜間高校を辞めて去っていった。

卒業式なんて、10人くらいしかいない。

あいつら、何してんだろうな…。

年配の方は、もうこの世にはいない。
だが、とても輝いてて、一番勉強熱心だったな。

母校がないって、なんか実感ないな…。

いや、学校はあるんだ。

ちゃんとした普通の高校が。
その高校の夜間部が無くなっただけ。

教室なんて、昼間のを借りている状態。

ある時、机に手紙があったっけ。

それは、昼間の私の机を使っている人。
可愛らしい、文面に、ときめいたっけ。

なんだこれ!
もしや…これって…交換日記みたいなヤツか?
うぉー!どーしよー!ドキドキするぜ!
何書けばいいんだ?とりあえず自己紹介か。
ふむふむ…ニヤリ。

返事を、書いて机に残して、
しばらく、文通みたいな?
訳わからないやり取りを、たわいの無い内容の
いわゆる交換日記らしきものをしたのだが、
やっぱり話合わなかったのかな…。

そのうち机の中に、手紙は無くなってた。

机と言えば、またある時、いたずら書きして、
消すの忘れて、次の日その机見たら、
そのいたずら書きにコメントを残してあった。

消すのも、出来なくなって、そこコメントに、
また、コメントしたけど、次の日は消されてた。

そんな、どーでもいい事が、鮮明に覚えている。

そう言えば!
ある日、昼間の生徒から、
机に忘れたモノを盗まれたと疑われたなー!

もちろん、濡れ衣なのだが…。

夜間部だからと、犯人扱いしやがった!

後から、先生から忘れたモノはあったと、
あっけらかんと、報告してきた。

おいおい!まずは、謝罪だろ!
それすらないのかよー!なんだよ!

なんか…ふにおちないなー!

あらぬ疑いをかけて、夜間部だからって、
犯罪者扱いされて、差別しやがって…。

ブーブーとみんなで、文句を言ったっけ。

まぁ…ガラが悪い連中ばかりだったし、
疑われても、おかしくはないんだよな。

はたから、見たら悪い事してそうだもん。

うーん…まぁ…仕方なかったのかな。

夏休みとか、
中学時代の友人に、頼んで、
ブレザーの制服貸してもらって、
なんちゃって青春を、したなー!

夜間部は、制服がなかったから、
すげーブレザーってなんか憧れてたな!

だって、昼間は仕事してるから、
作業着のままで、学校に行くんだもん。

部活帰りの昼間の生徒と、
すれ違う時に、もう眩しくてたまらなかった。

夕焼けごしに見ては、
わー青春だー!制服っていいなー!って、
目を輝かせて、羨ましいそうに眺めてたな!

だから、
いっぺんそんなのを、体験したくて、
ブレザーの制服を着てさ、
若者達が集まる所に行っちゃったんだなー!

あーこれこれ!これが、青春ってヤツかー!
なんて、素晴らしいんだー!いいなー!

オレ、今すごく輝いてるんじゃねーか!
周りの見る目も、違う様に感じるぜ!

と、しみじみと思いながら、楽しんだ。

まぁ…、ちょっと…いきがって、遊んだなー。

あー。
懐かしい…。

なくなったのか…。

あれから、数十年。

色々ありましたが…お世話になりました。

沢山の人生の経験を学ばせていただきました。

そして…お疲れ様でした。

母校は、私の心の中で大切に残ってます。

廃校になるって知ってたら、
最後の卒業式に参加して、先生達に、
お礼と感謝の気持ちで、ご苦労様でしたと、
伝えたかったな…。

でも、知ってる先生なんか、
いないだろうし、意味ないっか。

なんか、実感もないな。
変な感覚だな…勝手にあるもんだと、
思ってたけど…夜間部なんて需要ないか。

私も含めた、いわゆる問題を抱えている、
人達の唯一、心休まる場所であった。

かあちゃんに、楽して欲しくて、
高校に行くのを、あきらめて、
真面目に仕事をしようと決めてた、私。

かあちゃんが高校だけは、入ってくれと、
頼まれ、半ば強引に、入った夜間学校。

私は、
あの夜間学校に入れて、
本当に良かったと思うし、
絆と言うモノを初めて実感できた。

いやー、かあちゃんに感謝しかない。

そして、
色んな問題を抱えていた人達の、
居場所を作ってくれた事、出逢わせてくれた事、
勉強の楽しさを教えてくれた事、そのすべてに、
感謝の気持ちでいっぱいです!

夜の教室の窓から見た景色は、
真っ暗だったけど、外からみた校舎は、
光が灯されてて、私を温かく導いてくれた。

でも、
もうその温かな光はなくなったのですね。

どうか、夜は、ゆっくりと休んで、
昼間の、賑やかな、生徒たちの青春の瞬間を、
その一瞬を、たくさん作ってやって下さいな。

あー!オレの青春!甘酸っぱくないなー!
でも、そんなガラじゃないし、働きたかったし、
夜間高校でも、高校に行けてよかった。

あっ!だから、私ったら受験を知らないのだ。
夜間高校は、面接一本ですぐ入れたし。

あの、受験勉強とか…してこなかったなー!

その後、資格やらなんやらで、勉強はしたけど、
なんか、受験生って響き、いいな。

みんな、頑張って受験勉強して、昼間の学校、
行ってたんだもんな…偉いな…すごいな!

今じゃ小学、中学、でも受験するんだろ?

おい、おい、そんな事より遊ぼうよ。
あの時のあの瞬間は、もう戻れないんだぞ!
友達と遊ぶ事だって、大切じゃないか?

まあ…将来の日本を支えてくれる人材だ。

犠牲が大きい様に感じるが、ごめんよ。
我慢ばっかりさせて、勉強ばかりさせて、
負担が、大きいよな…。

頑張れとは言わないが、無理してるなら、
勉強している意味を考えてみて欲しい。

本当に、必要な事なのか、本気で受験勉強、
してるなら、自分を追い詰めないでくれ。

その歳なら、いくらでも、やり直しは、
できるんだから、自分を大切にしろよ…。

あー、オレは何にもしてこなかったから、
お前たちの気持ちがわからない。

理解してやれなくて…ごめんな。








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