小銭の行方。
これは、私の変な、こだわりの話である。
かあちゃんと一緒に住んでいた時。
かあちゃんは、とにかく小銭を、
服のポケットや、鞄の中にたくさん入れる。
財布なんて、ほとんどが小銭でいっぱいだ。
かあちゃんは、耳が聞こえない。
一緒に買い物に行くと、
幼少期から、私がお会計を任されていた。
レジの人が、値段を言ってる声が、
聞こえないから、金額がわからない。
だが、
レジに金額が、表示されているのを、
かあちゃんは、その意味をまったく、
知らないのか、私にお会計をさせるのだ。
だから、かあちゃんは、
一人で買い物をする時は、とりあえず、
すぐ札を出してしまうクセがあるのだ。
金額がわからないから、札を出しとけば、
事なきを得れるからだ。
そして、お釣りは小銭ばかり。
そんな、私は、
幼少期から、家事一般をやっていた。
母子家庭で、かあちゃんは家事が出来ない。
だから、必然的に私がする様になったのだ。
そんな家事の一つの洗濯。
この洗濯する時に、これでもかってぐらい、
小銭がたんまり出でくる。
はて?かあちゃんは、マジシャンか?
と言うぐらい、次から次へと、
色んなポケットから、小銭、小銭、小銭。
それを、まずは出してから、洗濯するのだ。
たまに、
取り残した小銭が、
洗濯機の中で、大きな音で、
ガチャガチャと存在を、嫌でも教えてくれた。
水が抜かれた洗濯槽。
のぞくと、小銭は、
キレイに輝いて洗濯機の底に張り付いている。
私は、バカ真面目だ。
そんな、小銭を沢山、手に入れてるのに、
しめしめ、これで何か買えるぜ!
なんて、思わないのだ。
律儀に、小銭を分けて、銀行に行って、
札に両替に行くのだ。
それを、かあちゃんに正直に渡すのだ。
かあちゃんは、
臨時ボーナスな気持ちなんだろう。
とても、嬉しそうに、受け取ってくれる。
その、かあちゃんの姿が見たくて、
ひたすら、小銭集めをして、両替に行く。
決して、得はしていないのだが、
不思議と、私も掘り出し物の様な、
そんな気分に、なっているのである。
やったー!今日はこんなにあった!
きっと、かあちゃん喜ぶぞー!
と、ウキウキで両替に行くのだ。
そのうち、私も年頃になったら、
両替はしなくなった。
そのかわり、私が一人、
日用品から食材まで、買い物に行く様になる。
それでも、
かあちゃんの私物から、小銭が出てくる。
そんな、かあちゃんの身の回りから、
かき集めた小銭で、買い物に行くのだ。
レジに並んでいたら、前の人が、ちまちま、
小銭で支払いをしている人いて、なんだよ!
って思う時ありますよね…。
すみません…それ、私です。
ぜーんぶ、
小銭で支払いしようと、レジの支払いで、
もたついて時間をかけて、しまうのである。
沢山あった、小銭が、少なくなるのが、
すごく嬉しくなって、楽しくなるのだ。
スッキリして、ストレス発散みたいな。
社会人になって、反射的に、
財布に小銭があるのが嫌で、
買い物する時、電卓を持参していた。
買いたいモノの金額を電卓で計算して、
うまく、小銭が出ないで、ちょっきりに、
なる様に、買い物するのだ。
時々、その為にさほど必要のないモノを、
買ってまで、小銭をださない様にしていた。
ある時、買い物していたら、
知り合いに、会ってしまった。
電卓を持って、うむ…と手話まじりに、
独り言を言っている姿を目撃されたのだ。
その、知り合いが、
すごく顔をひきつって、逃げていったのだ。
これは…私はヤバいやつ認定された!
あー、もうあの人とは関わりは無いだろう。
また、変な噂流されて、変人扱いされるんだ。
もう、慣れてしまったけどね。
それから、買い物に行く時に、電卓を、
持つのをやめた。
頭で一生懸命、計算する様になったのだ。
だが、私はおバカさん。
絶対に、会計で大量の小銭をもらうのだ。
すぐにレシートを見て、答え合わせをする。
だいたい消費税の計算が間違っている。
うわー!なんだよ!
なんでこんな数字に、なるんだよ!
はぁ…オレの頭は煙を出して壊れそう…。
もう…嫌だ…。
小銭のせいで、重たく膨らんだ、財布。
うむむ…やれやれ…おや?
そうだ!毎日、神社に行こう!
そんで、小銭を賽銭箱に入れればいいんだ!
いい事しかないではないか!
それから、毎日、早朝散歩がてら、
近くの神社に通う様になったのだ、
私は欲と言うものがないのだ。
だから、お願いする事が…ない。
まずは…世界平和!
そして…差別のない世界!
それを、毎回、
お願いするのが習慣になった。
小銭は、ある法則で財布にいれている。
一円玉4枚、5円玉1枚、10円玉4まい、
50円玉1枚100円玉4枚、500円玉1枚。
この15枚を常に入れている。
そうすれば、
お会計で小銭が増える事が、なくなった。
多少のずれしかならない。
そして、次の日の神社で、ずれだ小銭を、
賽銭箱に入れ、同じ願い事を頼むのだ。
今は、病院に入院している。
テレビも見ないし、冷蔵庫も使わない。
たまに、売店に行って、
使い切った、洗剤や石けん等を買うぐらい。
後は、毎月の病院の支払いぐらいだ。
今は、病院にもATMがあって便利だね。
小銭が増えていくと、
なんだか、ストレスになるのだ。
だから、小銭をATMにすぐ入金する。
便利な世の中になって、
今は財布にお金が、なくても、
携帯であるアプリで支払いができるらしい。
そのアプリに、お金を入金しておけば、
その、アプリの提携しているお店で、
携帯を、さっ!と華麗にかざせば、
勝手に支払いができると言うではないか!
うむ…大丈夫なのか?
そんな所にお金を預けてしまって…。
心配なのだが…でも…。
小銭がたまらないのは、いいのかもしれない。
えーどーしょーかなー。
退院したら、体力作りの為に、
朝の散歩と神社に参りに行くのはやりたい。
やはり、私は現金主義者!
そんな、あやしいアプリとやらは、
私には必要ないのだ!
だから、レジでもたついても、
小銭を、使ってやるんだ!
いいんだ!それで!
あの…感染リスクは大きいかもだが…。
実際に、見えない、重さもわからない、
そんなお金なんて…すごく怖いもん。
クレジットカードもそうだ。
見えない金が動いているのが怖くて、
生きてて、一枚も、作った事がない。
だって…怖いんだもん…。
こんな、変なこだわりを持った、私。
小心者の時代錯誤な、みみっちい、
頑固者の厄介な人間なんですよね…。
不便な事がとても、好きなんです。
なので、こんな私は幸せ者なのです。
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