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カツアゲ遭遇ニューヨーク編 #1

時は2018年、地元の先輩がニューヨークで演奏することになったというのでこの機会を逃したらもう一生行けないなとピンと来た俺は、迷わず現地に見に行く事にしてセルフNYツアーを画策した。演奏自体は9月の半ばだそうで、ちょっといいホールで主催は日本人の資産家?らしい。

海外航空券予約サイトでアメリカ行き飛行機チケットを予約する、デルタ航空で往復12万円。空港はJFKでなくニュージャージー州にあるニューアーク・リバティー空港にしてしまった。
ボンジョビ好きな俺だったのでニュージャージーという言葉に反応してしまったのと、NY行きと銘打った中でアメリカの航空会社では多分一番安かった。
それにJFK空港はなんだか言葉が物騒じゃないか。絡まれたらどうする。
東京暮らしで大都会に慣れているとはいえ、アメリカの不良を相手に出来るほど色々強靭ではない。

7泊8日の結構なロングツアーと決めた俺はセントラルパークの北すぐの所に位置するユースホステルを予約した。お金に困っていたわけではないが現地の若者のリアルを感じたかった。

成田からNYまでのフライトは長時間だったのにも関わらず全然覚えていないが、空港に到着してからのパニクり様は覚えている。何しろ英語が全然しゃべれないし、現地での移動方法もそこそこ適当な把握であったから当然だ。
空港に着いたはいいがNY市内への電車に乗る乗り場がもうよくわからんし券売機でクレカは弾かれるし泣きそうになりながらなんとか途中の乗り換え駅についたところでホームが40レーンくらいあって(イメージ上)凹む。

googleやら南部弁やら少しの英単語を駆使してなんとかNY市内に着いたものの、地上に出たところで宿まで徒歩90分くらいの所で再度凹む。
また怖い電車にのるのか、歩くのか、いや歩きはきついだろう、なんか突然携帯のgoogle mapがマイル表示になってるし距離がわからん。いつも喜びいさんでマイル貯め溜めボーイになっているのに俺は1マイル何メートルか知らんのだ。俺はなんという馬鹿者なんだろう、これまでの人生が走馬灯のようになって消えていく。

そうだタクシーだ、NYの黄色いタクシーは沢山いるし大丈夫と聞いたような気がするから乗るのだ。
と思ってはみたが手を上げる勇気がない。
止まってくれたとて何と言えばいいのだ。
万が一JAPが嫌いな運転手に運悪く当たってしまい撃たれでもしたら死んでも死にきれない、まだハードディスクのエロ動動画も消してないのに。

しばらく呆然とマンハッタンに立ち尽くしてイエローキャブやニューヨーカーの行き交う「ザ・グレート・アメリカ」(俺の中のね)を眺めていたが、いよいよ日も暮れようとしていたので気力を振り絞ってUBERでタクシーを手配する。これなら行き先はgoogle mapで指定するだけだから安心だ、高いけど。

以下にも旅慣れたjapanese geekといった感じで無事UBERのアンちゃんに宿へと送ってもらう。ああ、何でおれはリモワの80リットルもあるスーツケースを持ってきてしまったのだろう。ほんとうにバカだな俺は。
スーツケースの中身は半分も入っていない。帰りに何か入れて帰る気だったのだろう、昔の俺は。
ガコガコと空虚な音を立てながらホステルへチェックインし、フロントのセクシーガールの胸元に釘付けになりながらYESYESと言っていたらなんだか知らないが8人部屋に通される。
あれ、おれ4人部屋予約しなかったっけ?

英語で文句を言えるはずもなく大人しく8人部屋の指定のベッドに荷物を置き、その日は近所のちょっとシャレた小さいジャズ箱で現地のジャズミュージシャンのライブを見る。

やっべ演奏めっちゃレベルたけえし、料理も酒も高え。これぞアメリカだ!ジャズ発祥の地だ!俺はアメリカまで来たんだぞと高揚しながらグビグビとビールを飲むが完全に1人なので喜びはイマジナリーの俺としか分かち合いようがない。

その日は疲れたので早々に宿に戻り、共有スペースで寝酒にギネスを2本ほど煽りながら日本のニュースをチェックし就寝。俺がいなくても日本は完全に平和だったし、仕事のメールもそんなに切羽詰まってない。
住んじゃう?これ、なんかうまいことやれば住めるんじゃない?
すっかりニューヨーカー気取りの俺だったが水を買いにいった近所のコンビニの治安が悪く「やっぱ無理かも」とグラグラする。

次の日、とりあえずニューヨークきたら美術館だろと思い早起きして向かう。まだ土地勘もないしCITIのレンタルバイクを使うという頭がなかったのでとりあえず地下鉄で近代美術館方面へ。
中々順調じゃないか、やはりITを駆使すれば世界はそこそこ歩けるのだワハハみたかこの侍魂とふんぞり帰って地下鉄の駅から地上にあがり200mほど歩いたところ。

前の方から、明らかにヒップホップなお兄ちゃんが2人で俺の方へ歩いてくる。服はカニエスタイルだ。とてもニコニコしているが、やばいクスリきめてたらやだな。
大丈夫音楽に国境はないよ、俺ならきっと仲良くやれるしハーイとか言ってすれ違うだけでいけるはずだぞ。ビビるな。鼓舞鼓舞鼓舞であっというまに距離がつまりやっぱり話しかけてきてしまった。
まじか。何言ってるかさっぱりわからん。けどホワッチューネームぐらいは解った。

「マイネームイズ シリウス」
「Oh! ジャパニーズ? Good Good! okay-, 」
そう言いながら先輩っぽい方のbigブラザーがCD-Rを2枚取り出す。
CD-R? を? どうすんの?
盤面に何も書いてないのでCD-Rだろう。

おもむろにbigブラザーがマジックで盤面に「to Sirius」とサインする。

ヘイヘイヘイ、ちょっとまてよ俺はCDくれなんて言った覚えはないぞまさかそれ
「okay, your name here!」
いやわかるよ、お前が書いてるとこ見てるんだから。



「Please donate!」(的なことを言ったのだと思う)


金かい!カツアゲかい!
俺はアメリカに来てまでカツアゲにあっとるぞ故郷のみんなよ!
やっぱり海外は怖いところだったわ!

とりあえず1枚1$でいいだろと思い2$出す、
「Ooooohh , no no no no no MAN!! Please!!!」

死ねない、まだ死ねないぞ、こいつら絶対2人で俺をボコる気だと直感で悟ったおれは10$紙幣を3枚渡し、「ちょっと急いでるから、ごめんよろしく!」と日本語ではっきり目に言い渡し急いでその場を離れ人が沢山いる方へダッシュした。

「Heeeeyyy,,,」
ブラザー達は両手を広げヤレヤレという顔でこちらを一瞥するとブラブラと向こうへと歩いて言った。


そのCD-Rは帰国後聞いてみたところすごくヤッツケで下らない音楽がしっかり詰まっていたんだが、録音されてるだけエラい、と思ってここで晒そうとしたが部屋を探してみてもどうにも見つからない。
見つかったら晒してみます。

みんなも海外行く時は気をつけてね。

無事到着したMoMAの中庭
この絵よかった、どなたの作品なんでしょうか


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