山道で、おじいさんに叱られた
今日は散歩をした。
よく歩く自分の散歩コースを、
綺麗な空を眺めながら歩いた。
しばらくすると、
山の中に続く道の近くにたどり着いた。
この山道もよく目にしている光景である。
山道と聞くと、足場が悪いとか雑草が生い茂っているとか、
そんなイメージを抱くだろう。
しかし、この山道はよくハイキングなどにも使っている人が多いため、
土で舗装されたような、比較的整備された道で、大人2人は横に並んで歩く事が出来るくらいである。
とりあえず立ち止まりその光景の写真を撮った後、
その場を立ち去る。
その瞬間、ふとある思い出が蘇った。
大学受験を終えた頃、友達と散歩がてらこの山道に入っていった事がある。
当時、お互い無事に志望校に合格し、暇な時間が増えた事で、散歩好きな私が友達を誘い、地域を練り歩いていた。
私たちはそんな山道に入り、
少し肌寒い空気と花粉の影響を受け、鼻をすすりながら、
2人で横に並んで山道を歩いた。
しばらくすると、山道の向こう側から1人のおじいさんが歩いてきた。
私達は、おじいさんとすれ違う事に備え、
私が前、友達が後ろの縦一列に並び変えた。
そして、おじいさんとすれ違った瞬間、
急におじいさんに『そっち歩いたら危ないやろ!』と叱られた。
急に怒られた事にびっくりしていると、
おじいさんは『女の子なんやから、そっちやなくてこっち側歩き』
と言った。
おじいさんは怒っているのではなく、
私達が山道の崖側(すぐ横は崖が広がっていて、落ちる可能性がある)に寄って歩いていた事を心配してくれたようだった。
おじいさんの親切にはありがたいが、
私達はあくまでおじいさんのためを思って、
あえて崖側を歩いたんだけどなと思った。
しかし、怒られているわけではなかったため、
私達は『ありがとうございます。気を付けます。』と笑顔で答え、そのまま山道を進もうとした。
するとその瞬間、おじいさんから
『鼻水すすってたあかんで。女の子なんやからティッシュでちゃんと鼻かまな』と言われた。
おじいさんにこう言われた瞬間、
私達は「ああ、きっとこのおじいさんは喋りたいんだな」と思い、
喋ってみる事にした。
そして友達と私は、おじいさんに
『ティッシュ今持ってなくて、頑張って耐えてます』と笑顔で答えた。
するとおじいさんは、なぜか私だけを見つめて、
『女の子はティッシュかハンカチ持ってなあかんで』と言って、
『はしたないで』と言ってきた。
(おじいさんは悪い人でも変な人でもない。平常運転の感じだ。)
私は「私だけに言われてる?いや、自意識過剰かも」と思って、
とりあえず『すいません』と笑顔で答えた。
すると、次は私だけに指さしながら、
『あんたずっと鼻すすってるやん』
とおじいさんは言った。
これは完全に私だけが言われた。
正直、私は花粉症ではなく、そこまで鼻をすすっているわけではなかった一方、隣にいる友達はまあまあの花粉症だったため、ひどかった。
中高時代、彼女といると同じ事をやっていても、
私の方が先生から注意を受けやすかった。
特に中学時代をこの友達とよく一緒に過ごしていたが、
彼女は長年のバレエで培ってきた姿勢の良さと清楚感、
そして学年でも常に上位をキープしている子で、
しまいには旧帝大に属する日本トップクラスの大学に入学した、
才色兼備のような女の子だった。
そのため先生からも良く好かれていて、
先生なんて嫌いだと思って、にらみつけていた当時の自分からすると、
いつもすごいなと思っていた。
そんなことを思いながら、
すぐにおじいさんも先生たちと同じパターンだと判断した。
そう思っていると、おじいさんは、
『学校はどこなんや』と言った。
おじいさんは特定するためとか、怒るために言っているのではなく、
ただの世間話をしたいようである事は分かった。
そこで私は、本当は中堅くらいの私立大学に合格したわけだが、
おじいさん世代でも、「その学校すごい!」と思ってもらいやすいような学校名を述べようと思い、
『東京大学です。』
と、私は答えた。
すると、友達も便乗して、
『京都大学です。』
と答えた。
するとおじいさんは、私の方を指さして、『嘘やろ』と言った。
だけど私は、『いや、おじいさん本当です!』と笑いながら答えた。
すると、おじいさんは急におとなしくなって、
『そうかいな、気を付けて歩きや』とだけ言って、
そのまま帰っていったのである。
なんだかよく分からない出来事だった。
おじいさんはきっと誰かと話したかっただけで、
本当は学校とかどうでもよかったんだろうな。
それとも、学歴の話をしたかったのだろうか。
だけど、おじいさんと別れてから、
友達とやりとりの再現を何度もしたくらい、当時は面白かった。
そんな4年前くらいのことを思い出しながら、
今日の私は帰路に着いた。
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